電子帳簿保存法に対応を目的としてシステムを新たに導入することを検討されているのであれば、どのようなシステムを選べばよいのかに悩んでいる方も多いことでしょう。
電子帳簿保存法は思いのほか複雑でわかりにくい法律といえます。
システム導入予定の事業者が、システム選定時に電子帳簿保存法の要件をクリアしているか、その可否を一つ一つチェックしていては、システム選定も多大な労力がかかることでしょう。
目次
選ぶならJIIMA認証を取得したシステム
事業者が電子帳簿保存法対応システムを選定する際に、電子帳簿保存法の法的要件をクリアしているかどうかを確認する煩雑さを軽減することを目的として、公益社団法人日本文書情報マネジメント協会によりJIIMA認証(ジーマにんしょう)という認証制度があります。
JIIMA認証はシステムが電子帳簿保存法において必須とされる要件を100%クリアしているかどうかを審査します。JIIMA認証の審査は厳しく、一つでも電子帳簿保存法で必須とされる要件を満たしていない場合は、審査を通過することはできません。
JIIMA認証を合格したシステムならば、電子帳簿保存法に適合したシステムであると言っても過言ではなく、JIIMA認証を取得したシステムを選ぶだけで安心して電子帳簿保存法を順守した仕組みを確立することができることでしょう。
今日では電子帳簿保存法対応はクラウドがおすすめ
電子帳簿保存法対応の対象となる書類は、請求書や契約書などの機密文書が含まれることから、社外のサーバーで管理することに抵抗を持たれることがあります。
そのため、電子帳簿保存法に対応したシステムの選定において、オンプレミスを希望される企業は少なくはありません。
こと電子帳簿保存法対応においては、クラウドを選ぶのが良いか、オンプレミスが良いかは、前述の観点だけで判断されるのは早計かもしれません。
①保存対象の書類の受け取り方によってはシステム要件が異なる
実は電子帳簿保存法というのは電子取引、スキャナ保存、帳簿の保存など、対象となる書類の種類や授受の方法によって電子保存の要件が異なります。
電子取引で授受した書類の保存に求められるシステム要件と、紙で受領してスキャナ保存する書類のシステム要件では大きく異なります。
令和4年改正電子帳簿保存法では、電子取引は電子保存を義務化されますが、紙で受領した書類のスキャナ保存は任意です。スキャナ保存まで対象範囲を広げるかでシステム選びも変わってくるということです。
スキャナ保存においては、これまで必須要件とされていたタイムスタンプ機能が、令和4年の改正電子帳簿保存法では緩和されたことで、一見すると導入ハードルが低くなったようにも見えますが、実際は第三者の運営するクラウドサービス(SaaS)に限定して緩和されるというものであり、オンプレミスにおいては従来通りタイムスタンプ機能は必須となります。
オンプレミスでタイムスタンプ機能を利用する場合、多くはタイムスタンプサービスを提供するベンダーと個別に契約が必要になり、クラウドで利用する場合に比べてコストアップや管理の煩雑さが大きな負担になることでしょう。
②長期にわたる法定保存期間のシステム保守
また、電子帳簿保存法では、保存期間を7年(赤字決算で損金繰越がある場合は10年)としており、書類を長期間保存することが義務付けられております。オンプレミスで運用する場合、サーバーやパソコンの一般的耐用年数を大きく超える長期間の保存に対して、どのようなシステム保守計画を想定するのかにも注意が必要です。
もし、ハードウェアのリプレイスが必要になるとすれば、システムの移植などの問題に直面することもあり、予想外のコストや労力が発生することでしょう。
また、突然の法改正により、システムのアップデートや改修が必要になった際にも、クラウドに比べオンプレミスのほうが金銭面でも労力面でも負担が大きいと言えます。
まとめ
電子帳簿保存法は思いのほか複雑であり、システム選定時に電子帳簿保存法の要件をクリアしているのかチェックすることはとても大変です。確実に電子帳簿保存法の要件をクリアしているシステムを選ぶためにJIIMA認証を取得したシステムの中から選ぶことは効率的な方法といえます。
また、今回クラウドをおすすめしてはいるものの、一概にオンプレよりもクラウドのほうが良いという話ではなく、個々の会社の状況によってどちらが向いているのかを判断されるのがよいでしょう。判断するための情報収集はしっかりと行った上で検討されることを推奨いたします。
電子帳簿保存法ソリューションにおいては難しそうな話を避けてメーカー側がアピールすることも多く、いろいろな角度から検討するための情報提供はまだまだ少ないかもしれません。
本記事が電子帳簿保存法対応のシステムの選び方について、少しでもお役に立てれば幸いです。



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