電子帳簿保存法改正で請求書の電子保存が容易に!要件や保存方法を解説

「電子帳簿保存法が改正されたけど、請求書の保存要件はどうなるのかな」
「請求書を電子化するにあたって対応すべきことはなんだろう」

上記のような疑問を抱いている担当者の方もいるハズ。

詳しいことは本文で解説しますが、電子帳簿保存法が改正されたことにより、請求書の電子保存要件は変化しました。変化と言いましても、特段厳しくなったわけではありません。検索要件の緩和など、どちらかというとハードルが下がっています。これを機に、請求書は電子保存に切り替えるのが良いでしょう

しかしそうなりますと、請求書を電子化・保管するにあたって対応すべき要件が気になりますよね。そこでこの記事では電子帳簿保存法や請求書の基本情報だけでなく、保存要件・電子化させるメリットやデメリット・保管方法を解説します。

この記事を読めば、請求書に関連した電子帳簿保存法の情報を深く理解できます。「発行した請求書の原本の写しや、受領したPDFに対する具体的な対応方法を把握しておきたい」と考えている方は、ぜひ読んでみてください。

電子帳簿保存法が改正!請求書の保存が容易化

まずは電子帳簿保存法の改正内容を、施行された年度毎に解説します。

  • 2022年に施行!電子帳簿保存法の改正点
  • 令和5年度税制改正に伴う電子帳簿保存法の改正点

2022年に施行!電子帳簿保存法の改正点

まず電子帳簿保存法の改正は2022年に行われています。2023年12月31日までは猶予期間であり、2024年1月1日から正式に義務化。猶予期間が終わりに近づいていることもあり、改正内容に注目が集まっているわけですね。

そして2022年における電子帳簿保存法の改正内容は以下のとおり。

2022年改正対象 改正の方向性 対象となる保存区分
税務署長の事前承認制度 廃止 電子帳簿等保存※1
スキャナ保存※2
適正事務処理要件 廃止 スキャナ保存※2
最低限の要件を満たす電子帳簿についても電磁的記録による保存が可能 緩和 電子帳簿等保存※1
タイムスタンプの要件 緩和 スキャナ保存※2
電子取引保存データ※3
検索要件が緩和 緩和 スキャナ保存※2
電子取引保存データ※3
過少申告加算税の軽減措置 整備 電子帳簿等保存※1
不正があった場合の重加算税の加重措置 整備 スキャナ保存※2
申告漏れ等に課される重加算税が10%加重される措置 整備 電子取引データ保存※3
電子取引を実施した場合は電子データでの保存が義務化 厳格 電子取引データ保存※3

参考:国税庁|電子帳簿保存法が改正されました(2023年6月6日時点)
※1:電子帳簿等保存とは、会計ソフトなどで作成した帳簿・書類を電子データのまま保存することを指します。
※2:スキャナ保存とは、紙で作成した請求書の写し、紙で受領した請求書を電子的に保存することを指します。
※3:電子取引データ保存とは、電子的に発行および送信した請求書の写し、電子的に受領した請求書をそのまま電子保存することを指します。

上表は国税庁の資料を参考に作成したもの。確認するとわかりますが、規制緩和が主となっていますよね。

税務署長の事前承認制度・適正事務処理要件※が廃止されたことにより、電子保存導入における負担が明らかに減りました。

※1つの業務に対して複数の担当者を用意し、不正を防止するための相互けんせい・定期検査・問題発生の防止など、内部統制を構築・確立させるためのルールのこと。リソースが限られている企業には実現がなかなか難しかったのですが、電子帳簿保存法の改正に伴い廃止となりました。

請求書を電子保存するにあたっての手続きが不要になったからです。通常業務と同時並行させながら、電子保存の導入に必要な環境の整備を無理なく進められることでしょう。

もちろん今回の改正内容では、その他にも重加算税の措置や電子取引データの電子保存義務化などもあるため、全面的な規制緩和とはいえません。しかし廃止・緩和内容を鑑みますと、それらを差し引いても大幅な規制緩和と言えるでしょう。

令和5年度税制改正に伴う電子帳簿保存法の改正点

実は令和5年度税制改正に伴い、電子帳簿保存法はもう一度改正されています。詳細は以下のとおり。

電子帳簿保存法保存区分 令和5年度税制改正大綱の内容
電子帳簿等保存 1.「優良な電子帳簿に係る過少申告加算税の軽減措置」となる書類の見直し。※1
スキャナ保存 1.解像度・階調・大きさに関する情報の保存が不要。※2
2.入力者等情報の確認要件が不要。
3.帳簿との相互関連性の確保が必要な書類が重要書類※3に限定。
電子取引データ保存 1.検索機能が不要とされる対象者の範囲が、準期間(2課税年度前)の売上高が「1,000 万円以下」の保存義務者から「5,000 万円以下」の保存義務者に拡大。
2.入力者等情報の確認要件が不要。
3.対象者に「電子取引データをプリントアウトした書面を、取引年月日その他の日付及び取引先ごとに整理された状態で提示・提出することができるようにしている保存義務者」が追加。
4.令和4年度税制改正で措置された「宥恕措置」は、適用期限(令和5年 12 月 31 日)をもって廃止。
5.改ざん防⽌や検索機能など保存時に満たすべき要件に沿った対応は不要となり、電子取引データを単に保存しておくことができる。

引用元:国税庁|電子帳簿保存法の内容が改正されました〜令和5年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しの概要〜(2023年6月14日時点)
※1:具体例として、仕訳帳・総勘定元帳・売上帳・仕入帳・売掛帳・買掛帳・貸付帳・固定資産台帳などが軽減措置の対象に挙げられます。
※2:スキャナで読み取る際に守らなければならない解像度(200dpi 以上)や階調(原則としてカラー画像)などの要件自体に変更はありません。
※3:契約書・納品書・請求書・領収書など、資金やモノの流れに直結・連動する書類のこと。対する見積書や注文書などは、一般書類に分類されます。

様々な改正点がありますが、最大のポイントは『電子取引データを単に保存しておくことができる』ようになったこと。先ほど記述しましたが、そもそも2022年に施行された改正電子帳簿保存法だと電子取引で得た取引データは、以下のように電子保存が義務付けされていました。

申告所得税及び法人税における電子取引の取引情報に係る電磁的記録について、その電磁的記録の出力書面等の保存をもってその電磁的記録の保存に代えることができる措置は、廃止されました。
令和4年1月1日以後行う電子取引について適用
※ 消費税における電子取引の取引情報等に係る電磁的記録については、引き続き出力書面による保存が可能です。

引用元:国税庁|電子帳簿保存法が改正されました|4ページ目(2023年6月10日時点)

『電磁的記録の出力書面等の保存をもってその電磁的記録の保存に代えることができる措置は、廃止』と書かれていますよね。つまり紙に出力することが禁止されたため、電子保存が義務になったということ。この決定に従い、請求書を電子保存するため、様々な準備を進めてきた企業もいるハズ。

しかし令和5年度税制改正に伴い、紙に出力して保存することが突如として認められました。これまでは宥恕措置(簡単に言うと経過措置)扱いだった『紙に出力して保存してもOK』という決まりが、以下のように電子帳簿保存法の本則に盛り込まれることになったからです。

電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存要件に従って保存をすることができなかったことについて相当の理由がある保存義務者に対する猶予措置として、申告所得税及び法人税に係る保存義務者が行う電子取引につき、納税地等の所轄税務署長が当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存要件に従って保存をすることができなかったことについて相当の理由があると認め、かつ、当該保存義務者が質問検査権に基づく当該電磁的記録のダウンロードの求め及び当該電磁的記録の出力書面(整然とした形式及び明瞭な状態で出力されたものに限る。)の提示又は提出の求めに応じることができるようにしている場合には、その保存要件にかかわらず、その電磁的記録の保存をすることができることとする。

引用元:財務省|令和5年度税制改正の大綱(6/10)(2023年6月17日時点)

国税庁の公式資料によりますと、これは『新たな猶予措置』とのこと。そのため今後数年の内に、2022年度の改正電子帳簿保存法のように電子保存が再び義務化されるかもしれません。紙保存が主流となっている企業は、今のうちに電子保存の準備を進めておくべきでしょう。

なお上記資料にも記載されていますように、紙に出力して保存する際は以下2つの条件を満たさなければなりません。

イ:保存時に満たすべき要件に従って電子取引データを保存することができなかったことについて、所轄税務署⻑が相当の理由があると認める場合(事前申請等は不要)
ロ:税務調査等の際に、電子取引データの「ダウンロードの求め」及びその電子取引データをプリントアウトした書面の提示・提出の求めにそれぞれ応じることができるようにしている場合

引用元:国税庁|電子帳簿保存法の内容が改正されました〜令和5年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しの概要〜(2023年6月14日時点)

『電子取引時における請求書の電子保存は一時的に義務ではなくなったものの、誰でも・どのような環境でも紙保存をしても良いわけではない』ということ。ケースによっては税務調査時に「貴社の場合だと紙保存は認められません」と、言われてしまうリスクがあります。

このようなリスクがあることを考えますと、基本的には電子保存できる環境を構築しておいた方が良いでしょう。電子保存をすることで得られるメリットは、後述しますね。

  • そもそも請求書とは?
  • 請求書の記載項目
  • 請求書の保存期間
  • そもそも請求書とは?

    請求書とは『商品やサービスの料金を指定期日までに支払ってもらう書類』のことです。「先日にご利用いただいたサービスの料金支払いをお願い致します」という連絡を、文章で済ませられるのが請求書です。

    請求書は商品やサービスの買い手側が検収を済ませた後に、売り手側が請求書を発行および送付するのが一般的になっています。

    そんな請求書には発行義務がありませんが、商品名や金額などを文書化することで以下のメリットを得られます。

    立場 メリット
    請求書の発行側 支払いにおけるトラブル予防につながる
    請求書の受領側 税務調査時の支出の証明につながる

    発行側からしますと、請求書を発行することで支払い時におけるトラブル予防を期待できます。請求書には取引年月や内容などが詳細に記載されており、記述内容が正当であれば相手は支払いに納得できるからです。「あのときに利用したサービスの請求書か」というイメージですね。その結果、支払い時におけるトラブル防止を期待できます。

    その一方で請求書の受領側からしますと、『本当に商品やサービスを購入した』ことを証明できます。つまり取引の存在、支出の証明につながるということ。税務調査などのときに請求書があればが「本当に取引をしたんだな」と、基本的には信用してもらえますよね。これも請求書が果たす役割と言えます。

    請求書の記載項目

    先ほど簡単に触れましたが、請求書には以下の項目を記載しなければなりません。

    書類作成者の氏名または名称
    取引年月日
    取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
    税率ごとに区分して合計した税込対価の額
    書類の交付を受ける事業者の氏名または名称

    引用元:国税庁|No.6625請求書等の記載事項や発行のしかた(2023年6月10日時点)

    要するに「どこの誰が、誰に対して、いつ利用した、何の商品やサービスの利用料金を、いくら請求しているのか」が、正確にわかる内容であれば良いということ。

    万が一上記において不明な点だらけの請求書を送ってしまうと、架空請求扱いをされてしまい料金を支払ってもらえないかもしれません。このような事態を避けるためにも請求書を発行するときは、先ほどの項目を必ず記載しましょう。

    請求書の保存期間

    請求書の保存期間は、請求書および事業者の種類・各自の状況によって『確定申告の提出期限から5年・7年・9年・10年』に変化します。詳しくは以下のとおり。

    請求書の種類 法人 個人事業主
    従来の請求書 7年※1 5年※2
    適格請求書 7年 7年

    参考:国税庁|No.5930帳簿書類等の保存期間(2023年6月10日時点)
    参考:国税庁|記帳や帳簿等保存・青色申告(2023年6月10日時点)
    参考:国税庁|No.6621帳簿の記載事項と保存(2023年6月11日時点)
    参考:国税庁|適格請求書等の写しの保存|96ページ目(2023年6月10日時点)
    ※1:欠損金の繰越控除を適用する場合は10年。ただし2018年4月1日前に開始した事業年度に対して適用する場合は9年間保存しなければならない。
    ※2:消費税課税事業者である個人事業主は7年間保存しなければならない

    法人の場合は従来の請求書・適格請求書※に関係なく、原則7年間の保存期間が義務付けられています。

    ※消費税の仕入税額控除の適用を受けるために必要な請求書のこと。別名インボイス。2023年10月1日から導入されます。

    ただし赤字になった年度の請求書に関しては、9~10年間保存することが義務付けられています。本当に赤字か否かで納税額が変化するため、ギリギリまで確認できるように保存期間が延びているのかもしれません。

    その一方で個人事業主は『消費税課税事業者※に該当するか否か』で、請求書の保存期間が5年間もしくは7年間に変化します。

    ※消費税課税事業者とは、消費税を納付する義務がある法人もしくは個人事業主のこと。対象期間における課税売上高が1,000万円超の法人および個人事業主は、消費税課税事業者に該当します。

    消費税課税事業者ではない個人事業主なのであれば、請求書の保存期間は5年間。消費税課税事業者に該当する個人事業主なのであれば、7年間になります。

    ただし適格請求書を取り扱う個人事業主は、対象期間における課税売上高に関係なく保存期間が7年間です。

    インボイス制度が始まる2023年10月1日以降は、適格請求書のやり取りが増えることが予想されます。そのため個人事業主も法人同様に『請求書の保存期間は基本的に7年間』と覚えておくと良いかもしれません。

    電子帳簿保存法で請求書の電子保存が可能に!

    ここからは電子帳簿保存法を請求書の観点から解説していきます。

    • 電子帳簿保存法とは?
    • 請求書だけじゃない!対象文書の種類
    • 電子帳簿等保存における保存要件
    • 電子取引データ保存における保存要件
    • スキャナ保存における保存要件

    電子帳簿保存法とは?

    電子帳簿保存法とは、請求書などの書類や帳簿を電子保存することを認める法律のことです。

    会計ソフトを使って作成した帳簿をそのままデータ保存しておく方法や、紙で受け取った 請求書をスマホで読み取って保存しておく⽅法などを定めた法律(通称「電⼦帳簿保存法」、略して 「電帳法(でんちょうほう)」)に基づく制度です。 取引先とデータで請求書・領収書などをやりとりした場合の保存⽅法も対象です。

    引用元:国税庁|【国税庁の取組紹介】電子帳簿保存(2023年6月6日時点)

    電子帳簿保存法が施行される前までは、紙による保存が原則でした。しかし紙による保存だと、保管室などといった一定のスペースが必要になります。規模の大きい企業ほど請求書などの書類の数は多くなり、それに比例して必要な保管スペースも大きくなりがちになりますよね。企業によっては、1つの悩みのタネになるかもしれません

    そして何より、仮に保管スペースを確保できたとしても売り上げや利益の向上には結び付きにくいもの。コレではスペースを無駄遣いしているのと変わりません。高い費用を支払って、オフィスを借りている企業ほど損していると言えます。

    そういった問題を解決するために、電子帳簿保存法が施行されたのかもしれません。

    請求書だけじゃない!対象文書の種類

    実は電子帳簿保存法の対象書類は、大きく分けると以下のようになります。

    対象書類 具体例 保存区分
    国税関係帳簿 仕訳帳
    総勘定元帳
    経費帳
    売掛帳
    買掛帳
    仕入元帳
    売上元帳
    など
    電子帳簿等保存
    国税関係書類 決算関係書類
    紙で授受した取引関係書類
    電子的に授受した取引関係書類
    電子帳簿等保存
    スキャナ保存
    電子取引データ保存

    2023年6月9日時点

    国税関係帳簿とは、その企業が行っている取引や資金の流れを記録した帳簿を指します。まさに仕訳帳はその代表例。現金や仕入れ高などの項目を把握することで、資金の流入を一目で把握できます。

    もしも仕訳帳などを会計ソフトで電子的に作成し、そのままデータ保存するのであれば、電子帳簿等保存の保存要件に従う必要があります。保存要件の詳細は後述しますね。

    その一方で国税関係書類とは、決算関連の情報を記載する書類と、そのような書類を作成するにあたって必要となる書類を指します。国税関係書類には主に決算関係書類と取引関係書類の2つがあります。具体的には以下のとおり。

    項目 決算関係書類 紙もしくは電子的に授受した取引関係書類
    具体例 貸借対照表
    損益計算書
    棚卸表
    財産目録
    事業報告書
    など
    請求書または控え
    契約書または控え
    領収書または控え
    注文書または控え
    見積書または控え
    など
    保存区分 電子帳簿等保存 スキャナ保存
    電子取引データ保存

    2023年6月9日時点

    国税関係書類において、請求書に関係があるのは『紙もしくは電子的に授受した取引関係書類』です。

    紙で授受した取引関係書類とはその名のとおり、請求書を紙で送受したときに該当する項目です。例えば請求書を紙で作成し、封筒に入れ、取引先に郵送したとします。これが『紙で授受した取引関係書類』に該当します。紙で作成および授受した請求書を電子保存するのであれば、スキャナ保存の要件を守らなければなりません。

    次に電子的に授受した取引関係書類とは、電子メールやEDIなどで授受した請求書が該当します。例えばメールにてPDF化した請求書を受け取ったとしますよね。これが『電子的に授受した取引関係書類』に該当します。電子的に請求書を作成およびメールで送信・受領した場合は、電子取引データ保存の保存要件を守らなければなりません。これらの保存要件は後述します。

    電子帳簿等保存における保存要件

    会計ソフトなどで作成した帳簿や書類を電子保存する場合は、電子帳簿等保存の保存要件を守らなければなりません。

    改正後の電子帳簿の保存要件概要 優良 その他
    記録事項の訂正・削除を行った場合には、これらの事実及び内容を確認できる電子計算機処理システムを使用すること
    通常の業務処理時間を経過した音に入力を行った場合には、その事実を確認できる電子計算機処理システムを使用すること
    電子化した帳簿の記載事項とその帳簿に関連する他の帳簿の記録事項との間において、相互にその関連性を確認できること
    システム関係書類等(システム概要書、システム仕様書、操作説明書、事務処理マニュアル等)を備え付けること
    保存場所に、電子計算機(パソコン等)、プログラム、ディスプレイ、プリンタ及びこれらの操作マニュアルを備え付け、画面・書面に整然とした形式及び明瞭な状態で速やかに出力できるようにしておくこと
    1.記録項目は取引年月日、取引金額、取引先の3つのみ
    2.日付又は金額の範囲指定により検索出来ること 〇※1
    3.二つ以上の任意の記録項目を組み合わせた条件により検索できること 〇※1
    税務職員による質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードの求めに応じることができるようにしていること ―※1 〇 ※2

    引用元:国税庁|電子帳簿保存法が改正されました|2ページ目(2023年6月7日時点)
    ※1 保存義務者が、税務職員による質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には、検索要件のうち2・3の要件が不要となります(後述のスキャナ保存及び電子取引についても同様です。)。
    ※2 “優良”の要件を全て満たしているときは不要となります。
    (参考) 優良な電子帳簿の要件を満たして対象帳簿の備付け及び保存を⾏い、前頁2の届出書の提出がある場合には、所得税の⻘⾊申告特別控除(65 万円)が適用できます。

    まず大前提として、電子帳簿保存法は基本的に『真実性と可視性の確保』がマストになっています。要するに『簡単には改ざんできない環境・体制の構築』と『税務職員などから要求されたときに、いつでも請求書を提示・提出できる状態』が課せられているわけです。

    3つの保存区分によって真実性と可視性の確保の詳細要件が若干異なるのですが、電子帳簿等保存においては上記が保存要件になっています。

    電子帳簿等保存における特有のルールとして、提示した帳簿が優良認定されれば所得税の⻘⾊申告特別控除が認められます。少しでも節税をしたい方は、よく確認しておくと良いでしょう。

    なお優良帳簿においては、必要に応じて必要帳簿や書類をダウンロードできる状態なのであれば、範囲指定や組み合わせ条件による検索ができてなくてもOKです。検索・ダウンロードできる状態は、管理システムなどを導入すれば問題なく構築できることでしょう。

    スキャナ保存における保存要件

    紙で授受した請求書およびその写しを電子保存する場合は、以下のスキャナ保存の要件を満たしてください。

    • 入力期間の制限
    • 解像度200dpi以上で読み取る
    • カラー画像(赤・緑・青それぞれ256階調【約1677万色】以上)※1
    • タイムスタンプの付与※2
    • ヴァージョン管理
    • スキャン文書と帳簿との相互関連性の保持※3
    • 見読可能装置(14インチ以上のカラーディスプレイなど)の備付け
    • 電子計算機処理システムの開発関係書類などの備付け
    • 検索機能の確保

    参考:国税庁|はじめませんか、書類のスキャナ保存!(2023年6月14日時点)
    参考:国税庁|電子帳簿保存法の内容が改正されました〜令和5年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しの概要〜(2023年6月14日時点)
    ※1:一般書類(見積書・注文書などのように、資金や物の流れに直結・連動しない書類)は、グレースケール(白黒)で保存可能。
    ※2:入力期間内にその国税関係書類に係る記録事項を入力したことを確認できる場合は、このタイムスタンプの付与要件に代えることが可能です。ただし、認定タイムサーバーから時刻を取得する第三者の運営するクラウドサービスのみ、タイムスタンプがなくてもOKになります。
    ※3:一般書類をスキャナ保存する場合については、相互関連性の確保が不要

    スキャナ保存における保存要件の特徴としては、真実性の確保に特記事項が追加されていること。具体的に言いますと、紙の請求書をスキャンしたときの画像データに関する条件が指定されている点にあります。

    なぜこのような画像に関する指定条件があるのかと言いますと、画像内に記載されている文章や数字が読み取れないと、その請求書の正当性が認められないおそれがあるからです。

    例えば、上記の保存要件を9割方守ってスキャナ保存をしたとします。しかしスキャナ保存をした画像の解像度が仮に10dpiであった場合、その画像は非常にぼやけてしまいますよね。文字や数字を読み取るのが困難になるかもしれません。

    そうなりますと、その請求書の内容に沿った申告内容が本当に正しいのかを、確認できなくなります。つまり、その請求書における真実性の確保ができないということ。これではスキャナ保存をした意味がありません。

    このような事態を防ぐためにも、解像度・階調などといった画像に関する要件もしっかり守ってくださいね。

    電子取引データ保存における保存要件

    電子的に授受したPDFなどの取引データを電子保存するのであれば、以下の保存要件を守ってください。

    真実性の確保
    以下の措置のいずれかを行うこと。
    ① タイムスタンプが付された後、取引情報の授受を行う
    ② 取引情報の授受後、速やかに(又はその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに)タイムスタンプを付す
    ③ 記録事項の訂正・削除を行った場合に、これらの事実及び内容を確認できるシステム又は記録事項の訂正・削除を行うことができないシステムで取引情報の授受および保存を行う
    ④正当な理由がない訂正・削除の防止に関する事務処理規定を定め、その規定に沿った運用を行う

    可視性の確保
    保存場所に、電子計算機(パソコン等)、プログラム、ディスプレイ、プリンタ及びこれらの操作マニュアルを備え付け、画面・書面に整然とした形式及び明瞭な状態で速やかに出力できるようにしておくこと

    電子計算機処理システムの概要書を備え付けること

    検索機能※を確保すること

    参考:国税庁|電子帳簿保存法が改正されました|4ページ目(2023年6月14日時点)
    参考:国税庁|電子帳簿保存法の内容が改正されました〜令和5年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しの概要〜(2023年6月14日時点)
    ※:電子帳簿等保存の検索要件1~3に相当する要件のこと。ただしダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には、『2.日付又は金額の範囲指定により検索できる』および『3.2つ以上の任意の記録項目を組み合わせた条件により検索できる』は不要。
    なお、この場合において『前々年度の売上高が5,000 万円以下』もしくは『取引年月日その他の日付及び取引先ごとに整理された状態で紙に出力・提示・提出できる』場合には、検索機能のすべてが不要

    真実性を確保したいのであれば、上記1~4の内どれかを守ればOKです。請求書にタイムスタンプを付与できるシステムを導入すれば、基本的に問題ないでしょう。

    また可視性の確保においては、パソコンなどの機器・電子保存した請求書を検索できるようにすることなどが必要になります。

    この中では3つ目の検索要件がポイントになりますが、電子帳簿保存法が改正されたことにより、検索要件は『年月日・金額・取引先名』の3つに限定されています。具体的な記入方法は後述しますね。

    請求書を電子化させ保存するメリットを解説

    請求書を電子化させて保存するメリットは、以下の2点です。

    • 請求書の管理コストを下げられる
    • 請求書を探しやすくなる

    請求書の管理コストを下げられる

    請求書の電子保存は、管理コストを下げられます。紙で保存したときに発生するコストが、ほぼなくなるからです。例えば紙保存から電子保存に切り替えると、以下の利点があります。

    • 紙代やインク代、郵送代を削減
    • 書類の保管スペースが不要

    上記は、請求書を電子化することでなくすことができます。保存をする際に、紙に出力すること自体なくなるからです。つまり紙代やインク代がかからないということ。発行する請求書の数が多くなればなるほど、この恩恵は大きいでしょう。もちろん紙に出力して現物保存する必要がないため、保管スペースも不要になります。

    それに付け加えて電子保存であれば、請求書を送付するときはPDF化した請求書をメールで送るだけです。郵送費も抑えられます。郵送費は1通で数百円にもなりますから、これをゼロにできるのは素晴らしい効果ですよね。

    請求書などの管理コストに悩まされている場合は、ぜひ電子保存をご検討ください。

    請求書を探しやすくなる

    請求書を電子化すると探しやすくなります。なぜなら、パソコンやクラウド上に備わっている検索機能を使えるからです。

    例えば、やり取りしている企業の過去の類似する案件を探すとします。紙の場合は、保管庫まで足を運ばなくてはなりません。そして、膨大な資料の中から該当の請求書を探すことになります。

    一方で、請求書を電子化すれば、検索機能を使って簡単に探すことができます。探す時間は1分もかからないことでしょう。

    以上のことから、紙と電子データで比較すると時間と労力のかかり方が明らかに異なります。業務を一気に効率化できることでしょう。

    なお電子保存する際に請求書を探しやすくするには、保存の仕方を工夫しましょう。むやみに保存していてもデータファイルが乱雑になるだけです。しっかりと保存ルールを決めて管理することをおすすめします。

    請求書を電子化させ保存するデメリット

    請求書を電子化させ保存することで、デメリットもあります。以下の2点について解説します。

    • システム導入時にコストがかかる
    • 請求書保管時の業務フローを見直す必要がある

    システム導入時にコストがかかる

    請求書の電子化はシステム導入時にコストがかかります。基本的には以下のように利用料金が発生するからです。

    ツール名 初期費用 月額料金
    DenHo 要問合せ 9,000円~
    A 100,000円~ 25,000円~
    B 100,000円~ 20,000円~

    2023年6月12日時点

    弊社のDenHoであれば、月額料金を抑えられます。もちろん安いだけでなく機能も充実。全文検索や取引先などの項目を自動でデータ化できます。「料金だけでなく、機能にもこだわりたい!」と考えている方は、ぜひDenHoをご利用ください。

    請求書保管時の業務フローを見直す必要がある

    請求書の電子化を導入する場合、請求書保管時の業務フローを見直す必要があります。なぜなら、紙の保管と保管手順が変わるおそれがあるからです。以下で紙の請求書と電子化した請求書の業務フローを比較します。

    【紙の請求書】
    1.紙の請求書を受領する
    2.請求書の内容を確認する
    3.請求書の内容をExcelなどに入力する
    4.上長に請求書原本を提出する
    5.上長が請求書内容を確認し承認する
    6.経理が請求書の内容を確認して承認する

    【電子化請求書】
    1.請求書を電子データで受領
    2.請求書の内容を請求書発行システムで自動チェック
    3.請求書の内容を自動入力
    4.承認ワークフローによる承認

    ケースにもよりますが、請求書の電子化は上記のように業務フローに変化が生じる可能性があります。組織で従来のやり方を変更し、周知するのは大変な業務です。保管の取扱いについて社員が理解している必要があります。導入するシステムによって、社員教育が必要になるかもしれません。

    電子保存を導入すると、このようなデメリットが発生するかもしれないことを事前に理解しておきましょう。

    保存要件は?請求書を授受したときの保管方法

    ここからは授受した請求書の保管方法を解説します。

    • 請求書を紙で授受したときの保存方法
    • 請求書を電子データで授受したときの保存方法

    請求書を紙で授受したときの保存方法

    請求書を紙で授受したときの保存方法は、2つあります。

    • 紙のまま保存
    • スキャナ保存

    紙のまま保存する場合は、ファイリング※や請求書を入れるための専用ボックスを用意する必要があります。

    ※請求書を分類・整理・保存管理・廃棄する業務もしくは仕組みのこと。

    請求書をそのまま保存しては、破れる・汚れる・紛失するなどのトラブルが発生するおそれがあるためです。そういった事態を防ぐためにも紙の請求書は、ファイルもしくは専用ボックスにてキチンと保管することをおすすめします。

    ちなみに請求書の数が膨大なのであれば日付や取引先名に応じて、ファイルやボックスにシール・付箋を貼るなどの作業を行う必要があるかもしれません。その方が管理しやすくなります。しかしそうなると、かなりの手間が掛かります。

    その一方でスキャナ保存をするのであれば、このようなファイリング作業は必要ありません。スキャン機器で請求書を「ピッ」と読み取るだけで、パソコンもしくはクラウドに請求書の内容が反映されます。スキャン業務に慣れれば、短時間で数百枚の請求書を読み取ることも可能でしょう。

    もちろんスキャンということで、パソコンに手動入力する必要もなし。最終的には、相当な業務時間を削減、つまりは人件費を抑えられるでしょう。

    ちなみにスキャナ保存をするのであれば、AI-OCRの導入がおすすめです。AI-OCRは従来のOCRよりも文字の認識率が高い傾向にあるためです。

    万が一認識率が低いスキャン機器を導入してしまうと、請求書の保存業務に支障をきたします。下手をしますと「数十分かけたのに1枚しか読み取れなかった……」ということになるかもしれません。これではスキャナ保存をしている意味がありません。

    そのような事態を回避するためにもスキャナ保存をするのであれば、AI-OCRの導入がおすすめです。弊社のDenHoであればAI-OCRを搭載しておりますので、ぜひご利用ください。

    請求書を電子データで授受したときの保存方法

    電子取引にて、請求書を電子データで授受した場合は以下の保存方法があります。

    • パソコンに保存
    • クラウドに保存

    もしも電子データ化された請求書をパソコンに保存するのであれば、ファイル名を以下のように記入しなくてはなりません。

    【記入例】
    2024年1月31日に受領した株式会社○○からの180,000 円の請求書

    20240131_180000_株式会社○○

    上記は国税庁の公的資料『電子取引データの保存方法をご確認ください|検索機能を確保する簡易な⽅法について』で紹介されているオフィシャルな方法です。この方法を実施すれば、電子化した請求書をパソコンに保存することも可能です。

    しかしこの方法を実際にやってみるとわかりますが、1つのファイルを記入するのに1~2分ほどかかります。入力作業に慣れていない方だと、もう少し時間がかかるかもしれません。

    つまり電子保存をする請求書の数が1,000枚あれば、ファイル名の記入だけで少なくとも1,000~2,000分かかるということ。1時間単位にすると約16~32時間。1日の勤務時間を8時間とすると、1人ですべての入力作業をした場合は2~4日かかる計算になります。

    パソコンに電子保存をすれば、システム面でのコストは確かにほぼセロです。しかしその反面、これだけの人件費がかかるわけですね。それだけでなく最悪の場合、記入ミスが起こるかもしれません。これだけの人件費をかけてミスが起こるのは好ましくありません。記入ミスがきっかけで、検索に引っ掛からなくなるリスクも出てきます。

    その一方でクラウド保存であれば、保存業務が一気に楽になります。導入するシステムにもよりますが、クラウドに請求書をアップロードするだけで日付などの項目を自動でデータ化できるからです。

    パソコンに保存したときのように『手動入力でファイル名を取引金額などに変更する』といった面倒な作業がなくなります。その結果、業務を大幅に効率化できます。

    なお、弊社のDenHoであれば帳票の種類ごとに自動振り分けすることも可能。逐一ファイルを振り分ける必要もありません。「請求書の保存業務に人手や時間を取られたくないな……」と考えている責任者の方は、ぜひご利用ください。

    まとめ 発行や受領した請求書は電子保存しよう

    ここまで請求書を中心に電子帳簿保存法の解説をしてきました。電子帳簿保存法のおかげで請求書も電子保存が可能になったわけですが、その際は保存要件を守らなければなりません。真実性を確保しなければ、その請求書が正当なものであると認められないおそれが出てくるからです。可視性がなければ、検索結果にすら出てこないかもしれません。

    そのため電子保存をする際は、タイムスタンプの付与や検索要件を満たしたシステムの導入もしくは仕組みの構築がマスト。担当者の方は必ず覚えておきましょう。

    なお、もし電子保存法に対応したいのであれば弊社のDenHoをお使いください。DenHoであればタイムスタンプ機能を標準搭載。追加料金なしで真実性を迅速に確保できます。

    可視性における検索要件においては、取引先・取引日付・取引金額をAI-OCRが自動でデータ化。自分で入力することなく、アップロードした請求書が検索に引っかかるようになります。保存要件を満たすだけでなく業務を効率化させたい場合は、ぜひDenHoをお使いください。
    電子帳簿保存システムDenHo

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