インボイス制度で保存期間は7年間に!適格請求書発行事業者は対応に注意

インボイス制度で保存期間は7年間に!適格請求書発行事業者は対応に注意

「インボイス制度(適格請求書方式)の導入によって、保存面で注意すべき点はあるのかな」
「電子データの保存方法って、変わるの?」

2023年10月1日にインボイス制度が導入されることもあり、このような疑問を抱く担当者の方もいるハズ。詳細は本文で解説しますが、インボイス制度の導入に伴い、保存面で変わることは多々あります。

その最たる例として、仕入税額控除を受けるには適格請求書の保存が義務化されたことが挙げられます。これは記載金額が3万円未満の適格請求書であっても、例外ではありません。

ただし対象企業などの制限もありますが、税込1万円未満の適格請求書は必要事項を記入した帳簿の保存のみでOKです。これを少額特例と言います。インボイス制度では、このような例外も存在するため注意が必要です。

それに付け加えて電子帳簿保存法によって、2024年1月1日から電子的に受領した適格請求書のデータ保存が義務化されます。もちろん保存する際は、真実性の確保・可視性の確保などといった保存要件にも対応しなければなりません。単に保存をすれば良いというわけではないため、担当者の方は気を付けてください。

しかしそうなりますと「適格請求書の保存期間や対応方法を具体的に知りたいな」と思うハズ。そこでこの記事ではインボイス制度や保存面における基本情報だけでなく、具体的な対応方法・電子保存のメリット・保管業務を効率化させる方法・その他よくある質問を、国税庁の公的資料に基づき解説します。

この記事を読めば、インボイス制度に伴い保存面で知っておかなければならない情報を一通り網羅できます。「仕入税額控除を適切に受けるためにも、インボイス制度や電子帳簿保存法の保存関連情報を広く詳しく把握しておきたい」と考えている方は、ぜひ読んでみてください。

インボイス制度(適格請求書等保存方式)とは?

まずはインボイス制度のことを、保存情報を中心に解説します。

  • インボイス制度とは?
  • 保存期間は7年間
  • インボイスの記載要件

インボイス制度とは?

インボイス制度とは、消費税の仕入税額控除を受ける方法を制定したもの。インボイス制度は2023年10月1日(日)に導入されるのですが、この方式(ルールのこと)により、適格請求書※は以下のように保存が必須となりました。

※適格請求書とは、適用税率・消費税額などが記載された税務関連の書類のこと。適格請求書がなければ仕入税額控除を受けられません。そんな適格請求書はインボイス制度によって記載要件が増加しました。詳細は後述します。

インボイス制度とは、
<売手側>
 売手である登録事業者は、買手である取引相手(課税事業者)から求められたときは、インボイスを交付しなければなりません(また、交付したインボイスの写しを保存しておく必要があります)。
<買手側>
 買手は仕入税額控除の適用を受けるために、原則として、取引相手(売手)である登録事業者から交付を受けたインボイス(※)の保存等が必要となります。
(※)買手は、自らが作成した仕入明細書等のうち、一定の事項(インボイスに記載が必要な事項)が記載され取引相手の確認を受けたものを保存することで、仕入税額控除の適用を受けることもできます。

引用元:国税庁|インボイス制度の概要(2023年5月16日時点)

商品およびサービスの提供者は適格請求書の写しが、購入者は受領した適格請求書の保存が義務付けられたということ。仕入税額控除は、仕入れコストに直結する重要事項です。必ず保存をしてください。

それに付け加えて、インボイス制度の導入により『3万円未満の課税仕入れ』も保存対象になりました。

現行においては、「3万円未満の課税仕入れ」及び「請求書等の交付を受けなかったことにつきやむを得ない理由があるとき」は、一定の事項を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除が認められる旨が規定されていますが、適格請求書等保存方式の開始後は、これらの規定は廃止されます。

引用元:国税庁|適格請求書等保存方式の概要|15ページ目(2023年5月16日時点)

例えば一般企業などであれば、筆記用具やUSBメモリなどを急遽購入することがあるハズ。そのときに購入した金額が15,000円などの金額であったとしても、レシートもしくは領収書の保存が必須となるわけです。

これまでのように『一時的な取引だし、帳簿への記入で済ませてレシートを捨てる』という行為は、基本的にNGになります。

しかしその一方で例外もあり、以下に該当するものは保存の必要がなく、帳簿への記載のみで仕入税額控除を受けられます。

① 適格請求書の交付義務が免除されるP13「交付義務の免除」①④⑤に掲げる取引
② 適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除きます。)を満たす入場券等が、使用の際に回収される取引
③ 古物営業、質屋又は宅地建物取引業を営む事業者が適格請求書発行事業者でない者から、質物又は建物を当該事業者の棚卸資産として取得する取引
④ 適格請求書発行事業者でない者から再生資源又は再生部品を棚卸資産として購入する取引
⑤ 従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当等に係る課税仕入れ

引用元:国税庁|適格請求書等保存方式の概要|15ページ目(2023年5月16日時点)

適格請求書発行事業者とは、適格請求書の発行が国から正式に認められている事業者のこと。要はインボイスに登録している事業者を指します。

上記資料にて特筆すべき点は、出張費や宿泊費は帳簿への記載でOKというところですね。新幹線の代金・ホテル代などは、今のところ帳簿への記載のみでよいということになります。担当者は覚えておくとよいでしょう。

なお①の『適格請求書の交付義務が免除されるP13「交付義務の免除」①④⑤に掲げる取引』に関しましては、以下のとおり。

① 公共交通機関である船、バス又は鉄道による旅客の運送
(3万円未満のものに限ります。)
② 出荷者等が卸売市場において行う生鮮食料品等の譲渡
(出荷者から委託を受けた受託者が卸売の業務として行うものに限ります。)
③ 生産者が農業協同組合、漁業協同組合又は森林組合等に委託して行う農林水産物の譲渡
(無条件委託方式かつ共同計算方式により生産者を特定せずに行うものに限ります。)
④ 自動販売機・自動サービス機により行われる課税資産の譲渡等
(3万円未満のものに限ります)
⑤ 郵便切手を対価とする郵便サービス
(郵便ポストに差し出されたものに限ります。)

引用元:国税庁|適格請求書等保存方式の概要|13ページ目(2023年5月16日時点)

先ほどのような交通費だけでなく、自動販売機での購入なども適格請求書の保存対象にならないということ。そう言いますのも適格請求書を受け取るのが困難だからです。

例えば、自動販売機には領収書やレシートの発行機能がありませんよね。つまり『適格請求書を受け取れない→保存のしようがない』ということ。そのような事情があり、保存の対象外となっているのでしょう。インボイス制度により適格請求書の保存義務が厳格化されていますが、このような例外もありますので覚えておいてください。

保存期間は7年間

保存した適格請求書の保存期間は『7年間』と定められています。

適格請求書発行事業者には、交付した適格請求書の写し及び提供した適格請求書に係る電磁的記録の保存義務があります(新消法57の4⑥)。
この適格請求書の写しや電磁的記録については、交付した日又は提供した日の属する課税期間の末日の翌日から2月を経過した日から7年間、納税地又はその取引に係る事務所、事業所その他これらに準ずるものの所在地に保存しなければなりません(新消令70の13①)。

引用元:国税庁|5 適格請求書等の写しの保存|96ページ目(2023年5月16日時点)

非常に長い期間、保存をすることになりますね。規模の大きい企業であれば、1年間だけで相当な取引をするハズ。そのため7年にもなれば、相当な数の適格請求書を保存することになるでしょう。書面のまま保存をしていては、管理コストが膨大になるかもしれません。

もしも保管コストの増大を抑えたいのであれば、弊社のAI電子帳簿保存サービスであるDenHoをご利用ください。適格請求書を電子データ化し保存すれば、管理コストを抑えられます。書面の再発行や廃棄などといった手間がないからです。取り扱う適格請求書が多いほど、相当なコスト削減につながるでしょう。

ぜひご検討ください。

インボイスの記載要件

インボイス(適格請求書)の記載要件は以下のとおりです。

適格請求書
①適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
②取引年月日
③取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
④税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)及び適用税率
⑤税率ごとに区分した消費税額等
⑥書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

適格簡易請求書
①適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
②取引年月日
③取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
④税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)
⑤税率ごとに区分した消費税額等又は適用税率

引用元:国税庁|適格請求書等保存方式の概要|6ページ目(2023年5月16日時点)

記載要件を満たしていない領収書や納品書は、適格請求書としてみなされません。つまり、それらでは仕入税額控除を受けられないということ。これでは保存をしてもまったく意味がありません。

したがって作成および受領した適格請求書は、記載要件を満たしているかを必ず確認してください。写しおよび受け取った適格請求書の保存作業は、その後に行いましょう。

要対応!発行されたインボイスの保存方法

2023年5月時点ですと、発行した適格請求書の写しおよび受領したモノには以下3つの保存方法があります。

適格請求書の保存方法 保存対象となる適格請求書の例
電子データのまま保存 パソコン上で作成した適格請求書の写し
電子データとして受領した適格請求書
書面をスキャンして電子データ保存 書面で受領した適格請求書をスキャン機器で画像データ化したモノ
書面のまま保存 手書きで作成した適格請求書の写し
書面で受領した適格請求書

2023年5月16日時点

電子データとして保存

一番ポピュラーな保存方法が『電子データとして保存する』でしょう。電子帳簿保存法※により、適格請求書を電子データとして保存することが可能になったからです。

※電子帳簿保存法とは、適格性請求書などの税務関連書類を電子保存することを認める法律のこと。数十年前までは書面でのみ保存が許されていましたが、電子取引の活発化により、電子データとして保存することが認められました。

電子データとして保存をする場合、書面に出力する必要がありません。そのため業務の効率化を期待できます。

そんな電子データ保存は確かに便利なのですが、注意点もあります。適格請求書を電子データとして保存する場合、電子帳簿保存法にて制定されている保存要件を遵守しなければなりません。

例えば電子取引時に受領した、電子データ化された適格請求書であれば以下のような保存要件が定められています。

真実性の確保
以下の措置のいずれかを行うこと。
① タイムスタンプが付された後、取引情報の授受を行う
② 取引情報の授受後、速やかに(又はその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに)タイムスタンプを付すとともに、保存を行う者又は監督者に関する情報を確認できるようにしておく
③ 記録事項の訂正・削除を行った場合に、これらの事実及び内容を確認できるシステム又は記録事項の訂正・削除を行うことができないシステムで取引情報の授受および保存を行う
④正当な理由がない訂正・削除の防止に関する事務処理規定を定め、その規定に沿った運用を行う

可視性の確保
保存場所に、電子計算機(パソコン等)、プログラム、ディスプレイ、プリンタ及びこれらの操作マニュアルを備え付け、画面・書面に整然とした形式及び明瞭な状態で速やかに出力できるようにしておくこと

電子計算機処理システムの概要書を備え付けること

検索機能※を確保すること
※帳簿の検索要件①~③に相当する要件(ダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には、②③不要)
 保存義務者が小規模な事業者でダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には、検索機能不要

引用元:国税庁|電子帳簿保存法が改正されました|4ページ目(2023年5月16日時点)

要は適格請求書請求書を保存する際は、記載された金額などを簡単には改ざんできない、かつ迅速に確認できる環境を構築しなければならないということ。担当者の方は覚えておきましょう。

書面をスキャンして電子データ保存

電子ではなく書面で適格請求書を受け取った場合、スキャンをして電子データ化および保存することも可能です。適格請求書のスキャナ保存も、国が認めているれっきとした保存方法だからです。

スキャナ保存制度は、取引の相手先から受け取った請求書等及び自己が作成したこれらの写し等の国税関係書類(決算関係書類を除きます。(注))について、税務署長等の承認を受けた場合には、書面による保存に代えて、一定の要件の下で、スキャン文書による保存が認められる制度です(法43)。

引用元:国税庁|Ⅰ通則【制度の概要等】(2023年5月16日時点)

そもそも適格請求書のやり取りにおいて『電子データで必ずやり取りをしなければならない』というルールは、現在ありません。業界や企業によっては、書面でやり取りをするのが一般的なケースも考えられるからでしょう。

そのような業界や企業を大混乱させないようにするためなのか、この辺りは規制が緩いといえます。

しかしながら書面ですべての適格請求書を保存するとなりますと、業務の効率性や管理コストなどといった面で問題が発生します(詳しくは後述)。

そういった事態を嫌うのであれば、受け取った書面をスキャナ保存するのがおすすめです。書面で受け取ったとしても、適格請求書を画像データとして電子保存できます。

ただし、スキャナ保存にも以下のように保存要件が定められています。

  • 入力期間の制限(書類の受領等後又は業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに入力)
  • 一定水準以上の解像度(200dpi以上)による読み取り
  • カラー画像による読み取り(赤・緑・青それぞれ256階調(約1677万色)以上)
  • タイムスタンプの付与
  • 解像度及び階調情報の保存
  • 大きさ情報の保存
  • ヴァージョン管理(訂正又は削除の事実及び内容の確認)
  • 入力者等情報の確認
  • 適正事務処理要件
  • スキャン文書と帳簿との相互関連性の保持
  • 見読可能装置(14インチ以上のカラーディスプレイ、4ポイント文字の認識等)の備付け
  • 整然・明瞭出力
  • 電子計算機処理システムの開発関係書類等の備付け
  • 検索機能の確保
  • 税務署長の承認

参考:国税庁|Ⅱ 適用要件【基本的事項】(2023年5月16日時点)

自由気ままにスキャンおよび保存してよいわけではないということですね。スキャナ保存においても可視性の確保はマストです。

例えばスキャナ保存をしたとしても、画像がぼやけていたり真っ暗になっていたりすれば、金額などの確認ができませんよね。これでは適切な仕入税額控除を受けられないでしょう。

このよう事態を避けるためにも、スキャナ保存をする際は保存要件を必ず遵守してください。

書面のまま保存

書面で受け取った適格請求書は、そのまま紙保存してもOKです。理由は上述しました通り、書面でやり取りした適格請求書を電子データとして保存する義務は、今のところ法律で定められていないからです。

もしもあなたの企業が以下のようなシステムを導入していないのであれば、書面のまま保存をした方が良いかもしれません。

  • 手書きでも読み取り精度が高いスキャン機器
  • 電子帳簿保存法に対応した保存管理システム

上記のようなシステムを導入する予算・時間的余裕が無いのであれば、書面のまま保存をするのが現実です。「わざわざスキャン機器や管理ステムを導入するのは面倒だな」と考えている方は、書面のまま保存すると良いでしょう。

しかしながら、どうせ保存をするのであればやはり電子データ保存の方がおすすめです。コスト・業務の効率性において、書面保存よりも電子保存の方がはるかに優れているからです。詳細は次で解説しますね。

インボイスを電子データとして保存するメリット

先ほどチラッと解説しましたが、適格請求書を電子保存するメリットは4つあります。

  • 保存スペースが不要になる
  • コストを削減できる
  • ファイリングの手間がなくなる
  • 検索機能で探しやすくなる

保存スペースが不要になる

受け取った適格請求書は電子保存すれば、保管スペースがなくなります。パソコン上もしくはクラウド上にすべて保存するからです。

そもそも作成した適格請求書の写し、および受け取った適格請求書を書面で保存するとなりますと、一定の保管スペースが必要です。仮に適格請求書を縦向きに保管したとしても、数に比例したスペースが必ず必要になります。数百枚・数千枚にもなれば辞書並みに分厚くなり、置く場所を要します。

そして何より、適格請求書は7年間保存しなければなりません。辞書並みに分厚い、ひと塊の適格請求書をいくつも置かなければならないことでしょう。このことを考えますと、書面保存においては一定以上の広さを有する保管スペースが必須と言えます。

しかし電子保存をすれば、そのような保管スペースは一切不要。1つのパソコンで数百枚・数千枚もの適格請求書を保存できます。その結果、オフィスの空間を有効活用できます。仕切りを付けた1人専用デスクなどを複数置けば、社員の業務効率が向上するかもしれません。

コストを削減できる

電子データとして保存すれば、コストを削減できます。紙でやり取りをする際の手間暇がなくなるからです。

どういうことかと言いますと、例えば電子データで作成した適格請求書は基本的にメールで送信します。わざわざ紙に出力しません。メールで送信した方が確実に早い、かつ便利だからです。

そうなりますと『封筒に取引先の所在を記入・紙に出力した適格請求書を封筒に入れる』などの作業が一切なくなりますよね。つまり1つの適格請求書を送信するにあたって必要になる時間や人手を、大きく削減できるということ。送信数が多いほど、この恩恵は大きいでしょう。最終的には人件費や切手代の削減につながります。

もしも「適格請求書を送信するにあたってのコストが高すぎる」と悩んでいるのであれば、間違いなく電子データでのやり取り、つまりは電子保存がおすすめです。

その際は弊社のDenHoをぜひご利用ください。DenHoはクラウド型サービスのため、どんな場所・時間帯でも適格請求書の閲覧が可能です。テレワーク中であっても、適格請求書の保存や発行を効率的に実行できます。

ファイリングの手間がなくなる

電子データで保存をすれば、ファイリングの手間がなくなります。紙に出力すること自体が、ほぼなくなるからです。

そもそもファイリングとは『書類の分類・整理・保管・処分』を指します。つまり紙がなければ、ファイリングする必要すらないということ。

そして何より、電子保存ですと電子データでやり取りすることがメインです。ファイリングするほどの書類を抱えること自体が激減するでしょう。書類を分類・整理・保管・処分する際に必要な道具・人手・コストが一切必要なくなります。

「適格請求書の数が多すぎて、ファイリング業務が重すぎる……」と悩んでいる方は、電子保存に切り替えることを強くおすすめします。ファイリング業務がなくなる分、本当にすべき仕事に集中できるようになります。

検索機能で探しやすくなる

電子保存を導入すれば、検索機能を用いて適格請求書をスムーズに探せるようになります。パソコンやシステムの検索欄に『月日・金額・取引先名』などを記入するだけで、該当する適格請求書のみが自動表示されるからです。

例えば『2023年10月1日にA社と取引した際の、70,000円分の適格請求書を探す』とします。書面で保存している場合は、書類の山から自力で探さなければなりません。

仮に丁寧なファイリングを行っていたとしても、探し出すのに数分はかかることでしょう。下手をしますと、書類保管室に移動するだけで5分はかかるかもしれません。これでは時間がもったいないですよね。

しかし電子保存であればこのようなことにはなりません。パソコンもしくは保管システムの検索欄に『2023年 10月1日』と記入するだけで、該当する適格請求書のみが自動表示されるからです。探し物をするのが得意ではない方でも、数秒で探し出せるでしょう。

『誰が実行しても、迅速かつ正確な結果を得られる仕組み』を構築できるのは、企業にとって大きな恩恵です。

もちろん取引先名や金額も記入すれば、表示される件数はさらに絞り込まれます。保管している適格請求書の数が仮に50,000枚であったとしても、数秒で探し出せます。コレは書面保存では考えられなかったことです。

「保管している適格請求書の数が多すぎて、必要なときにパッと探し出せないのがつらい」と悩んでいる方は、今すぐ電子保存に切り替えるべきです。業務時間を無駄に浪費することがなくなります。その結果、残業時間を減らせるかもしれません。

なおその際は、弊社のDenHoをぜひご利用ください。DenHoにはタグ付け・全文検索・範囲検索機能も備えているため、単にパソコンに保管するよりもはるかに探しやすいです。高機能な検索システムを有する保管システムをお探しの方は、ぜひ一度ご相談ください。

インボイスの保存業務を効率化させる方法

電子保存のメリットがわかったところで、保存業務を効率化させる方法を解説します。

  • AI OCRで書面を読み取る
  • 会計システムを導入する

AI-OCRで書面を読み取る

もしも適格請求書を書面で受け取ったのであれば、AI-OCR※で読み取りましょう。

※AI-OCRとは、OCR(文字読み取り技術)にAI機能を搭載させた機器のこと。スキャナ保存をする際に必須の技術です。

AI-OCRであれば、従来のOCRよりも文字読み取り精度が高いからです。例えば弊社のスマートOCRであれば、以下の機能が備わっています。

スマートOCRに搭載されたAI系エンジン 性能
AI 文字列エリア認識エンジン 文字列のみ探し読み取り精度の向上を実現
AI文字認識エンジン 手書き文字でも高精度で読み取れる
AI歪み補正エンジン 書類の歪み・たわみを補正する機能

2023年5月17日時点

従来のOCRですと、上記のような『AIによる自動学習機能』はまったくありませんでした。イメージを簡単に言いますと提示された画像から、そのまま文字を認識するという方式だったためです。AI-OCRのように、歪みやたわみを自動補正するなどは考えられませんでした。

しかしAI-OCRには、先ほどのような高性能な機能が搭載されています。その結果、AI-OCRと従来のOCRには、性能面において決して埋められない大きな差があるのです。

ひょっとしますと従来のOCR機器では、手書き文字を読み取ることすら困難かもしれません。これでは逆に効率が悪すぎますよね。導入費を無駄にしているようなものです。

インボイス制度に向けて読み取り機器を導入するのであれば、AI-OCRがおすすめです。

会計システムを導入する

適格請求書の保存業務を効率化させたいのであれば、会計システムを導入してください。会計システムを導入すれば、インボイス制度の経過措置に基づいた、段階的な仕入税額控除の計算にも正確に対応できるからです。

そもそもの話になりますが、インボイス制度には経過措置期間があります。以下のように、期間によって仕入税額控除の割合が大きく異なります。

適格請求書等保存方式(以下「インボイス制度」といいます。)開始後、6年間(令和5年10月から令和11年9月までの間)は、免税事業者等からの課税仕入れについて、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除できる経過措置が設けられています。
なお、この経過措置による仕入税額控除の適用に当たっては、免税事業者等から受領する区分記載請求書等と同様の事項が記載された請求書等の保存とこの経過措置の適用を受ける旨(80%控除・50%控除の特例を受ける課税仕入れである旨)を記載した帳簿の保存が必要です。
この経過措置を適用できる期間等は、次のとおりです。
・ 令和5年10月1日から令和8年9月30日までは仕入税額相当額の80%
・ 令和8年10月1日から令和11年9月30日までは仕入税額相当額の50%
引用元:国税庁|お問合せの多いご質問(令和5年4月14日掲載)|1ページ目(2023年5月23日時点)

そのため一言で適格請求書といっても、取引先・期間によって計算が大きく変わってくるということ。対応する適格請求書の数が数百枚になれば、すべてをミスなく正確に対応するのは難しいでしょう。仮にできたとしても、担当者の負担が大きいです。

経営面から言いますと『誰が担当をしても、正確な計算を無理なく継続できる環境』を整えてあげるのが望ましいでしょう。現場責任者の方は、ぜひご検討ください。

インボイス登録事業者になり発行するまでの流れ

もしもインボイスに登録をしていないのであれば、以下の方法を参考にしてください。

  • 申請書を作成
  • 所轄の税務署に提出

申請書を作成

まずはインボイス制度に登録するために必要な申請書を作成しましょう。

登録手続きに必要な書類は『国税庁|[手続名]適格請求書発行事業者の登録申請手続(国内事業者用)』でダウンロードできます。必要事項を記入するときの注意事項なども用意されていますので、ご参考ください。

所轄の税務署に提出

申請書を作成したら、所轄の税務署に提出をしてください。
東京であれば『東京国税局インボイス登録センター』、大阪であれば『大阪国税局インボイス登録センター』に郵送すればOKです。

その他名古屋や福岡などの郵送先は『国税庁|郵送による提出先のご案内』に記載されていますので、ご参考ください。

インボイスの保存にてよくある質問を解説

ここではインボイス制度の保存関連でよくある質問を解説します。

  • 保存していた適格請求書に誤りがあった場合はどうすればいいですか?
  • 保存していた適格請求書の登録番号が虚偽だった場合は?
  • インボイス制度の申請期日はいつまでですか?

保存していた適格請求書に誤りがあった場合はどうすればいいですか?

保存していた適格請求書に誤りがあった場合は、取引先に再交付を依頼してください。以下のように『誤記入があった場合は再交付をしなければならない』と国が制定していますので、必ず再発行してもらえますよ。

適格簡易請求書は、交付した適格請求書(適格簡易請求書・適格返還請求書を含みます。)に誤りがあった場合、修正した適格請求書を交付する必要があります。

引用元:国税庁|適格請求書等保存方式の概要|12ページ目(2023年5月16日時点)

そもそも適格請求書に誤りがあった場合、適切な仕入税額控除を受けられないおそれがあります。これでは困りますよね。

したがって適格請求書に誤記入があった場合は、遠慮なく再交付を依頼してください。

保存していた適格請求書の登録番号が虚偽だった場合は?

保存しておいた適格請求書の登録番号が意図的な虚偽であった場合、相手は以下のように1年以下の懲役もしくは50万円の罰金が科せられる可能性があります。

適格請求書発行事業者が作成した「偽りの記載をした適格請求書(新消法57の5二)」などの適格請求書類似書類等の交付が禁止されるとともに(新消法57の5)、交付した場合の罰則(1年以下の懲役又は50万円以下の罰金)が設けられている(新消法65四)。

引用元:国税庁|インボイス制度導入後の是正に関する一考察-適格請求書類似書類等の交付禁止・罰則規定を踏まえて-(2023年5月16日時点)

このような事態に発展することは、誰も望んでいませんよね。虚偽があった場合は潔く適格請求書発行事業者に登録するよう、取引先を諭してみましょう。わかってくれるかもしれません。

それでも頑なに登録を拒否してくる場合は、最終手段として『国税庁|ご質問・ご相談』で国税庁に相談してみてください。具体的な対応策を教えてくれるハズです。

インボイス制度の申請期日

インボイス制度の申請期日は、2023年10月1日(日)から適格請求書発行事業者に登録しておきたいのであれば、同年9月30日(土)までになります。

インボイス制度が開始される令和5年10月1日から登録を受けようとする事業者は、令和5年9月30日までに登録申請を行う必要があります(令和5年9月30日までに提出した場合は、制度開始日である令和5年10月1日までに登録通知が届かなかった場合であっても、同日から登録を受けたものとみなされます。)。

引用元:国税庁|申請手続(2023年5月16日時点)

そもそもの話になりますが、仕入税額控除を受けられるのは『適格請求書発行事業者から受領した適格請求書を保存している』場合にのみ限られます。

つまりあなたの会社が適格請求書発行事業者でない場合、仮に取引先が適格請求書を保存していても、相手は仕入税額控除を受けられないということ。これでは取引先の仕入れコストを増大させることにつながります。逆もまた然りで、適格請求書発行事業者ではない事業者から受領した適格請求書を、自社が保存していても意味がありません。

仕入税額控除のことを考えますと、売り手・買い手にせよインボイスへの登録はマストでしょう。

2023年10月1日(日)に行った取引から仕入税額控除を受けられるよう、2023年9月30日(土)までにインボイス登録の手続きを済ませるのがおすすめです。

まとめ インボイス制度で保存要件が変わる!

ここまでインボイス制度関連の保存情報を解説してきました。インボイス制度によって適格請求書の保存が義務化されました。3万円未満の適格請求書も保存対象であり、気を付けなければなりません。

また保存期間は7年間と長いです。書面保存では、保管スペースやコストの増大が懸念されます。これらのコストが増えますと、利益に対して悪影響があるでしょう。そのため適格請求書を保存するのであれば、基本的には電子保存の方がおすすめです。

もしも適格請求書を電子保存するのであれば、弊社のAI電子帳簿保存サービスDenHoをご利用ください。DenHoはAI-OCRを搭載しており、手書き文字も正確に読み取ることが可能。スキャナ保存をする際に便利です。ぜひご検討ください。

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