「インボイス制度や電子帳簿保存法によって、今使っているシステムに影響はある?」
「適格請求書の発行・保存システムを導入するメリットはなに」
「インボイス制度が始まるけど、そもそもシステムって本当に必要なのかな」
インボイス制度が始まることにより、担当者の方はシステム関連でこのような悩みを持っているかもしれません。
詳しくは本文で解説しますが、インボイス制度が始まることにより現システムへの影響は確実にあります。適格請求書発行事業者の登録番号など、記載要件が追加されたからです。
その他にも適格請求書の保存が義務化され、電子帳簿保存法によって保存要件も明確に定められています。2024年1月1日以降に電子取引を行った場合は、受領した適格請求書などといった取引情報は、電子データとして保存しなければなりません。
これらのことを考えますと、現システムへの影響は必至。現システムを修繕するなどといった対応が必要です。その一方で適格請求書の発行・保存システムを未だに所持していない場合は、導入した方が良いでしょう。インボイス制度を機に、業務の効率化を図れます。
しかしそうなると「どういった方向で修繕すれば良いのか」「どのようなシステムを新たに導入すれば良いのか」と悩みがちですよね。そこでこの記事ではインボイス制度の基本情報やシステムのメリットだけでなく、導入すべきシステム例と選び方・修繕費の要件などよくある質問を解説します。
この記事を読めば、インボイス関連のシステム情報を網羅できます。「インボイス制度や電子帳簿保存法の要件に対応したシステムが必要だけど、どうしようかな」と悩んでいる方は、ぜひ読んでみてください。
目次
インボイス制度とは?記載要件や登録方法も解説
まずはインボイス制度の基本情報を解説します。
- インボイス制度とは?
- 保存義務は7年間
- 適格請求書発行事業者になる方法
インボイス制度とは?
インボイス制度(適格請求書等保存様式)とは、消費税の仕入税額控除を受けるためのルールを指します。インボイス制度は2023年10月1日に導入されるのですが、仕入税額控除を受けるには、以下のように適格請求書(インボイス)の保存が必要であると定められています。
インボイス制度とは、
<売手側>
売手である登録事業者は、買手である取引相手(課税事業者)から求められたときは、インボイスを交付しなければなりません(また、交付したインボイスの写しを保存しておく必要があります)。
<買手側>
買手は仕入税額控除の適用を受けるために、原則として、取引相手(売手)である登録事業者から交付を受けたインボイス(※)の保存等が必要となります。
(※)買手は、自らが作成した仕入明細書等のうち、一定の事項(インボイスに記載が必要な事項)が記載され取引相手の確認を受けたものを保存することで、仕入税額控除の適用を受けることもできます。
引用元:国税庁|適格請求書等保存方式の概要 |1ページ(2023年5月13日時点)
仕入税額控除は企業のコストに直結するため、インボイス制度が如何に重要なルールなのかがよくわかりますよね。
本題はここからで、仕入税額控除を受けるために必須である適格請求書は、適格請求書発行事業者のみ交付できます。
適格請求書(インボイス)を発行できるのは、「適格請求書発行事業者」に限られ、この「適格請求書発行事業者」になるためには、登録申請書を提出し、登録を受ける必要があります。
引用元:国税庁|特集インボイス制度(2023年5月13日時点)
つまりインボイス制度が始まる2023年10月1日以降、消費税の仕入税額控除を受けられるのは、適格請求書発行事業者に登録している企業・個人事業主から商品を購入した場合に限られるということ。
それ以外の事業者から商品を購入すると仕入税額控除を受けられなくなり、買い手はコストが増大するわけですね。実質的な値上げといえます。
「それなら取引先の迷惑にならないように、事業者はインボイスに登録した方がいいね!」と思うところですが、それほど単純な話ではありません。適格請求書発行事業者に登録をすると、以下のように『売上高が 1,000 万円以下の企業・個人事業主にも納税義務が発生する』からです。
インボイス発行事業者は、基準期間の課税売上高が 1,000 万円以下となった場合であっても免税事業者にはならず、消費税及び地方消費税の申告義務が生じますのでご注意ください。
引用元:国税庁|消費税の仕入れ税額控除としてインボイス制度が開始されます|1ページ目(2023年5月13日時点)
つまりインボイス制度の登場により、これまでは免税事業者だった企業・個人事業主は『取引先のコストを増大させるか、自らの納税額を増やすか』の、究極の2択を突き付けられているということ。
どうすべきなのか判断が難しいところですが、取引先のコストを増大させてしまうとビジネスに悪影響(契約打切りなど)が発生するおそれがあります。契約を切られてしまうと、自社の売り上げ・利益が大幅に減りますよね。これでは納税どころの騒ぎではありません。
そのことを考えますと、基本的にはインボイスに登録をした方がおすすめです。よく考えて決断しましょう。適格請求書発行事業者に登録する方法は後述します。
保存義務は7年間
適格請求書の保存期間は、以下のように7年間と定められています。
適格請求書発行事業者には、交付した適格請求書の写し及び提供した適格請求書に係る電磁的記録の保存義務があります(新消法57の4⑥)。
この適格請求書の写しや電磁的記録については、交付した日又は提供した日の属する課税期間の末日の翌日から2月を経過した日から7年間、納税地又はその取引に係る事務所、事業所その他これらに準ずるものの所在地に保存しなければなりません(新消令70の13①)。引用元:国税庁|5 適格請求書等の写しの保存|96ページ(2023年5月13日時点)
発行した適格請求書の写しを作成したのであれば、その写しに保存義務が発生。受領したのであれば、受け取った適格請求書の保存が7年間義務付けされます。非常に長い期間、保管することになりますので注意しましょう。
適格請求書発行事業者になる方法
適格請求書発行事業者に登録するには、まず『適格請求書発行事業者の登録申請書』をダウンロードしてください。そして必要事項を記入しましょう。
次に、記入した申請書は納税地を管轄しているインボイス登録センターへ郵送します。自社の郵送先となるインボイスセンターを以下の中から探してください。
各局(所) | 管轄地域 |
札幌国税局インボイス登録センター | 北海道 |
仙台国税局インボイス登録センター | 青森県 岩手県 宮城県 秋田県 山形県 福島県 |
関東信越国税局インボイス登録センター | 茨城県 栃木県 群馬県 埼玉県 新潟県 長野県 |
東京国税局インボイス登録センター | 千葉県 東京都 神奈川県 山梨県 |
金沢国税局インボイス登録センター | 富山県 石川県 福井県 |
名古屋国税局インボイス登録センター | 岐阜県 静岡県 愛知県 三重県 |
大阪国税局インボイス登録センター | 滋賀県 京都府 大阪府 兵庫県 奈良県 和歌山県 |
広島国税局インボイス登録センター | 鳥取県 島根県 岡山県 広島県 山口県 |
高松国税局インボイス登録センター | 徳島県 香川県 愛媛県 高知県 |
福岡国税局インボイス登録センター | 福岡県 佐賀県 長崎県 |
熊本国税局インボイス登録センター | 熊本県 大分県 宮崎県 鹿児島県 |
沖縄国税事務所インボイス登録センター | 沖縄県 |
引用元:国税庁|郵送による提出先のご案内(2023年5月13日時点)
例えば自社が北海道にあるのであれば、納税地を管轄しているのは札幌国税局インボイス登録センターになります。そのため、この場合は札幌国税局インボイス登録センターに郵送することになります。郵送を済ませれば、申請作業は完了です。あとは審査結果を待ちましょう。
ちなみに適格請求書発行事業者への登録は、e-Tax※からでも可能です。
e-Taxであれば郵送する手間が省けますので、便利です。「パソコンを使ってパパッと登録を済ませたい」と考えている方は、e-Taxを利用するのが良いでしょう。
なおe-Taxを通じて適格請求書発行事業者の登録を申請する場合は、使用するデバイスによってアクセス先・マニュアルが以下のように変化します。
項目 | パソコンから申請 | スマホ・タブレットから申請 |
アクセス先 | e-Taxソフト(WEB版) | e-Taxソフト(SP版) |
申請マニュアル | 作成マニュアル(WEB版) | 作成マニュアル(SP版) |
2023年5月13日時点
間違えないように、気を付けてくださいね。
インボイス制度対応にシステムの導入が必要な理由
ここからはシステムを導入すべき理由を解説します
- 電子帳簿保存法に基づいた保存要件に対応できるから
- 電子帳票保存業務を効率化できるから
- 金額の記載ミスなどといったヒューマンエラーを防げるから
- 社外でも電子帳票の確認などができるようになるから
- 取引先の登録番号を自動でチェックできるようになるから
電子帳簿保存法に基づいた保存要件に対応できるから
システムを導入もしくは修繕するのが必要な理由の1つに、電子帳簿保存法※に基づいた保存が可能になる点が挙げられます。
システムを導入してしまえば、以下のような保存要件を簡単に満たせるからです。
真実性の確保
以下の措置のいずれかを行うこと。
① タイムスタンプが付された後、取引情報の授受を行う
② 取引情報の授受後、速やかに(又はその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに)タイムスタンプを付すとともに、保存を行う者又は監督者に関する情報を確認できるようにしておく
③ 記録事項の訂正・削除を行った場合に、これらの事実及び内容を確認できるシステム又は記録事項の訂正・削除を行うことができないシステムで取引情報の授受および保存を行う
④正当な理由がない訂正・削除の防止に関する事務処理規定を定め、その規定に沿った運用を行う可視性の確保
保存場所に、電子計算機(パソコン等)、プログラム、ディスプレイ、プリンタ及びこれらの操作マニュアルを備え付け、画面・書面に整然とした形式及び明瞭な状態で速やかに出力できるようにしておくこと電子計算機処理システムの概要書を備え付けること
検索機能※を確保すること
※帳簿の検索要件①~③に相当する要件(ダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には、②③不要)
保存義務者が小規模な事業者でダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には、検索機能不要引用元:国税庁|電子帳簿保存法が改正されました|4ページ目(2023年5月12日時点)
上記は電子帳簿保存法に明記されている『電子取引時における保存要件』です。要は、電子データを保存する際は真実性の確保(改ざんしにくい環境の構築)、可視性の確保(必要時に表示させられる状態)が義務付けられているということ。
このルールは2024年1月に正式に義務化され、必ず守らなければなりません。
しかし上記のような環境・状態をイチから構築するのはなかなか難しいもの。自社でシステム開発・導入もしくは修繕する場合は、一定の時間とコストがかかるでしょう。場合によっては、まったくうまくいかないかもしれません。
そんなときは弊社のDenHoがおすすめです。弊社のDenHoであれば、タイムスタンプ機能が標準機能として搭載されているため、真実性の確保を迅速に実現できます。
それだけでなくDenHoにはタグ付け機能も備わっており、取引先・取引日付・取引金額に応じて検索することが可能。可視性の確保における最大のポイント『検索機能を確保すること』も、容易にクリアできます。
もしも「システムを導入したいのだが、どれを選べばわからない」のであれば、高機能が揃っているDenHoがおすすめです。ぜひご検討ください。
電子帳票の保存業務を効率化できるから
システムを導入すべき理由に、電子帳票の保存業務を効率化できる点があります。システムを導入すれば、パソコンへの手動入力がほぼなくなるからです。
例えば弊社のDenHoであれば書類をスマホ・タブレットで撮影をし、アップロードすることが可能。
従来であれば数分はかかるであろうパソコンへの入力作業を、数秒で終わらせられます。コレが何千枚にもなれば、業務を大きく効率化できることは間違いありません。
作業時間を短縮できれば、それに比例して人件費も削減できます。企業の利益アップにも大きく貢献できるようになります。
「電子帳票の保存業務を効率化させたいんだけど、何から始めようか?」とお悩みの方は、DenHoをぜひお使いください。
社外でも電子帳票の確認などができるようになるから
システムを導入することにより、社外でも電子帳票の確認や保存などの業務をできるようになります。クラウド保存が可能になるからです。
そもそもシステムを導入せずに電子保存をするとなると、多くの場合で自分のパソコンに保存をするようになるハズ。そうなりますと、そのパソコンでしか該当書類を確認できなくなりますよね。つまり出社をしなければいけなくなるということ。これでは不便です。業務の効率化はなかなか実現できないでしょう。
しかしシステムを導入すれば、そのようなことはありません。クラウド上に保存をすることにより、いつでも・どこでもログインできるようになるからです。早朝・深夜・年末年始・自宅・取引先・出張先のホテルなど、時間帯や状況を問わず業務を行えます。移動時間や出社の際の手続きがなくなる分、担当者は電子帳票の確認や保存などの業務に集中できます。
もしもリモートワークを継続させるのであれば、担当者の負担が少なくなるようにシステムの導入をすべきでしょう。
取引先の登録番号を自動でチェックできるようになるから
システムを導入すべき理由の1つに、取引先の登録番号を自動でチェックできるようになることが挙げられます。なぜそのような機能が必要なのかと言いますと、適格請求書に記載された番号が100%正しいものであるとは限らないからです。
そもそもの話になりますが、まず登録番号とは以下のものを指します。
登録番号の構成は、次のとおりです
法人番号を有する課税事業者
「T」(ローマ字) + 法人番号(数字13桁)
上記以外の課税事業者(個人事業者、人格のない社団等)
「T」(ローマ字) + 数字13桁(注)
(注)13桁の数字には、マイナンバー(個人番号)は用いず、法人番号とも重複しない事業者ごとの番号になります。引用元:国税庁インボイス制度適格請求書発行事業者公表サイト|登録番号とは(5月12日時点)
このように言ってしまっては何ですが『T+13ケタの数字』が記載さえされていれば、人の目ではなかなか見抜けないことを意味します。このことを悪用し、登録番号の虚偽記載があるかもしれないのです。
そのため受け取った適格請求書は、保存する前に正確なチェックを必ずしなければいけません。万が一受け取った適格請求書の登録番号が虚偽・誤記入・無記載であれば、取引先に再発行を依頼して適切な適格請求書を入手しないと、仕入税額控除を否認されるリスクがあります。担当者の方は、十分に気を付けてください。
もちろん、受け取った適格請求書を手動で調べることは可能です。『国税庁インボイス制度適格請求書発行事業者公表サイト|登録番号を検索する』で、その登録番号が正しいのかを調べられます。
しかし受け取った適格請求書を、自分で1枚1枚調べるのはかなり面倒ですよね。数百枚にもなれば、すべてを調べるのに相当な時間がかかります。このような作業に、人件費はかけるべきではないでしょう。
そんなときこそシステムの出番です。導入するシステムにもよるのですが、受け取った適格請求書の登録番号を国税庁のデータと自動照合してくれます。その結果、数秒で確認作業が終わることでしょう。
受け取る適格請求書の数が膨大な企業ほど、システムはやはり導入すべきです。
【請求書の発行や受領など】必要なシステム例
システムを導入すべき理由がわかったところで、インボイス制度の対応に必要なシステム例を解説します。
- 文字読み取りシステム
- 請求書発行システム
- 会計システム
- POSシステム
文字読み取りシステム
文字読み取りシステムを導入しましょう。何度も言いますが、業務を効率化できるからです。それだけでなく誤記入なども防げますので、修正に人手と時間を取られません。
そうなりますと「どのような文字読み取りステムを導入すれば良いのか?」と悩むかもしれません。そんなときは『AI-OCR※を搭載しているか否か』を判断基準に選んでみてください。
従来のOCRよりもAI-OCRの方が、読み取り精度が高い傾向にあるからです。例えば弊社のスマートOCRであれば以下の機能が備わっており、非常に高い読み取り精度を誇ります。
- ⾃動⽂字列認識機能
- 歪み・たわみ補正機能
- 高度な表認識機能
- 様々な書式にも対応できる柔軟な機能
上記のような機能が備わっているか否かで、文字の読み取り作業の効率性が大きく変わります。
仮に読み込む書類を10,000枚でAI-OCRシステムAの文字読み取り率が99%、OCRシステムBが80%としますと、読み取れる数に大きな差が出てきます。
項目 | AI-OCRシステムA | OCRシステムB |
読み取り率 | 99% | 80% |
読み取れた数 | 9,900枚 | 8,000枚 |
やり直しの数 | 100枚 | 2,000枚 |
やり直す書類の数は、なんと1,900枚も違います。読み取り率99%と80%と聞くと大差はないように感じますが、これだけの違いがあれば効率性に大きな差があるといえます。
したがって文字読み取りシステムを選ぶ際は認識精度が高いもの、つまりAI-OCRが搭載されている製品を選んでくださいね。
電子帳簿保存でAI-OCRを利用する
もしもAI-OCRを導入するのであれば、弊社のAI電子帳簿保存サービスDenHoがおすすめです。弊社のDenHoにはAI-OCRが搭載されており、取引先名・取引金額・取引日付の3項目を自動でデータ化が可能。保存業務を最大限効率化できます。
DenHoはそれだけでなく、帳票内の文字すべてをOCRでテキストデータ化および全文検索できます。ここが弊社のDenHo最大の強みであり、他社製品と大きく異なるポイントです。
そう言いますのも、実は他社は3項目だけの検索が多い傾向にあるのです。この場合、原本が間違った記載をしていてそれに気づかずに保存した場合は、検索にヒットしなくなるかもしれません。
しかし全文検索機能があれば、3項目で検索できなかった場合においても探し出せる可能性が高まります。簡単に言いますと適格請求書内に記載された担当者名や登録番号などでも、検索にヒットさせられるイメージです。コレは非常に便利ですよね。
もちろん理想を言えば、検索用データの登録を完璧に実行および運用するのが一番です。しかし、そのような環境・状態は簡単には実現できないもの。
そもそもインボイス制度という新たなルールに対し「今すぐ適応し、100%完璧な運用をこの瞬間から始めよう!」という方が、無理があります。人間である以上、順応するためにはある程度の時間がかかりますし、多少の間違いはどうしても避けられないからです。
そのため全文検索のような『万が一に備えた』かつ『誰でも探しやすい』機能があれば、実務担当者への心理的プレッシャーやストレスを軽減できます。「万が一3項目でヒットしなかったとしても全文検索で探せば良いから、随分と気がラクだ」と安心できることでしょう。
使いやすいだけでなく、担当者が安心して使えるAI-OCRをお探しの方は、ぜひDenHoをお使いください。
請求書発行システム
次に請求書発行システムの導入がおすすめです。インボイス制度が導入されますと適格請求書はなにも受け取るだけではなく、発行することも多々あるからです。
しかしシステムを導入していませんと、適格請求書の発行に関する作業をすべて手動でやらなければなりません。
- 請求書の作成・発行・承認
- 請求書の送付
- 入金確認
- 未払いの催促
コレが数件なのであれば、少しの人手で事足りるでしょう。しかし数十件・数百件にもなれば、相当な人手・時間を要します。お世辞にも効率が良いとはいえませんよね。そのためインボイス制度の導入を機に、請求書発行システムも導入すべきなのです。
なお請求書発行システムを導入する際は、必ず『適格請求の記載要件』を満たしているかを確認してください。記載要件を見たしていなければ、適格請求書としてみなされないからです。
適格請求書には、次の事項が記載されていることが必要です(区分記載請求書等保存方式に
おける請求書等の記載事項に加え、①、④及び⑤の下線部分が追加されます。)(新消法57の4①)。
① 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
② 課税資産の譲渡等を行った年月日
③ 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(課税資産の譲渡等が軽減対象資産の譲
渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象資産の譲渡等である旨)
④ 課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額及び適
用税率
⑤ 税率ごとに区分した消費税額等
⑥ 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
引用元:国税庁|適格請求書の記載事項 |56ページ目(2023年5月12日時点)
適格請求書とみなされない、つまり自社が発行した請求書を手にした取引先は仕入税額控除を受けられないということ。これではビジネスに悪影響を及ぼすのは必至。業務を効率化させる以前の話ですよね。
したがって請求書発行システムを導入する際は、適格請求書の記載要件に対応しているかを必ず確認してください。
会計システム
インボイス制度が始まることで、導入すべきものの1つに会計システムが挙げられます。インボイス制度の導入に伴い、会計処理において変更された点がいくつかあるからです。
例えば伝票を入力するとき、インボイス制度に未対応だと登録番号などの入力項目がシステム上に存在しません。つまりAI-OCRなどで数字を正確に読み取ったとしても、それを記入する場所がないということ。これでは自動入力できませんよね。
そうなりますと担当者が手動入力することになります。これでは非効率ですし、何よりヒューマンエラーも高確率で起こるでしょう。
それに付け加えてインボイス制度では、端数処理が以下のように変更されました。
適格請求書等保存方式においては、適格請求書に記載すべき「消費税額等:の計算方法が定められており、取引に係る税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額に対して、10%又は8%(税込の場合は10/110又は8/108)を乗じて得た金額に対して端数処理を行い「消費税額等」を算出します。
したがって、適格請求書の記載事項である「税率ごとに区分した消費税額等」に1円未満の端数が生じた場合には、一の適格請求書につき、税率ごとに1回の端数処理を行います【例①③】。
引用元:国税庁|適格請求書等保存方式の概要|9ページ目(2023年5月12日時点)
つまり会計システムを非導入もしくはインボイス未対応ということは、そのままだと新たな計算方法に自動対応できない確率が非常に高いことを意味します。最悪の場合だと、人の手によって1枚1枚計算することになるかもしれません。このような事態を回避するためにも、会計システムの導入はマストといえます。
なお会計システムを導入する際は、請求書の区分管理機能があるかを確認してください。実はインボイス登録は以下のように任意であり、インボイス制度の実施後、適格請求書とそれ以外の請求書の2種類が出てくるからです。
適格請求書を交付できるのは、登録を受けた適格請求書発行事業者に限られますが、
適格請求書発行事業者の登録を受けるかどうかは事業者の任意です。
引用元:国税庁|お問合せの多いご質問(令和5年4月14日掲載)|6ページ目(2023年5月12日時点)
繰り返しますが、仕入税額控除が適用されるのは適格請求書分のみです。そのため適格請求書と仕入税額控除を受けられないその他請求書は、分けて管理する必要が出てきます。
電子データ化した適格請求書は会計システムに保存することが多いため、適格請求書とそれ以外の請求書の区分機能が求められるわけです。覚えておきましょう。
POSシステム
もしもあなたが小売店や飲食店などを経営しているのであれば、POSシステムを導入してください。上述しましたように適格請求書には記載要件があり、小売店などはその記載要件を満たしたレシート・領収書を発行しなければならないからです。
そもそもの話になりますが、小売店や飲食店は1日の取引回数が非常に多いですよね。インボイス制度に未対応のPOSレジを使うということは、会計の度に渡すレシートや領収書に登録番号などを手書きで何百枚も書かなければならないことを意味します。
これでは非効率すぎます。来店ピークの時間帯では、とてもではありませんが対応しきれないでしょう。POSレジの導入は必須と言えます。
もちろんPOSレジを導入する際は、以下のように『どの商品が軽減税率の対象品なのか?』が一目でわかるように出力できるタイプを選んでください。
消費税率 | 税率ごとに区分した消費税額の合計 |
8%対象 | 533円 |
10%対象 | 197円 |
インボイス制度の実施により『税抜価額または税込価額を税率ごとに区分した合計額および適用税率』の明記が義務化されたからです。POSレジを導入する際は、出力するレシートに上記のような記載項目があるかを必ず確認してくださいね。
インボイス制度のシステム関連でよくある質問
ここではシステムの修繕費など、よくある質問を解説します。
- システム修正費用は修繕費(損金算入)として取り扱えますか?
- デジタルインボイスとは何ですか?
- インボイスの記載事項は複数の書類で分けても大丈夫ですか?
- 電子取引だと電子データでの保存が義務化されるのですか?
システム修正費用は修繕費(損金算入)として取り扱えますか?
ケースによりますが、以下のように『システムの機能を維持させるために不可欠な修理である』と認められた場合に限り、修繕費として扱えます。
各システムのプログラムの修正が、現行の請求書等のフォーマットや、現行の税額計算の方法につき、インボイス制度の実施に伴い、システムに従来備わっていた機能の効用を維持するために必要な修正を行うものであることが作業指図書等から明確である場合には、新たな機能の追加、機能の向上等に該当せず、これらの修正に要する費用は修繕費として取り扱われることとなります。 引用元:国税庁|消費税のインボイス制度の実施に伴うシステム修正費用の取扱いについて(2023年5月14日時点)
例えばソフトウェアの追加・向上を問わず、『必要』と判断されさえすれば、費用は資本支出に分類できるということ。要は必要経費とみなされるということですね。 「どのような機能の追加・向上なら修繕費に該当するのか?」が論点ではなく、あくまで「その修正は本当に必要だったのか?」が判断基準になるため、ご注意ください。 デジタルインボイスとは以下のように、標準化および構造化された電子インボイス(電子データ化されたインボイス)を指します。
デジタルインボイス(標準化され構造化された電子インボイス) 引用元:電子インボイス推進協議会|デジタルインボイスとは(2023年5月14日時点)
非常にわかりにくいのですが、具体的に言いますと共通のルールに基づき規格(フォーマットなど)が定められた電子インボイスを扱い、各システムと連動させる仕組みのことです。 例えばAがBに対して電子インボイスを送信したとします。電子インボイスを受け取ったBは、そのデータを会計システムにアップロードしますよね。 本題はここからで、通常の電子インボイスだとBがアップロードをしても、会計システムに金額や登録番号が反映されるだけです。Aの口座への振込などは自動で行えません。実際に多くの企業では、いまだに担当者が手動で対応をしているハズです。 しかしデジタルインボイスを確立させますと、この振込も自動で行えます。これはAとBが、共通のルール・規格に基づいた電子インボイスだけでやり取りをすると決め、各システムが『その電子インボイスに完全連動した仕組み』を構築できているからです。 もしも取引に扱う電子インボイスのルール・規格が完全に自由なのであれば、どの決まりに基づきシステムを連動させればよいのかわかりませんよね。企業やシステムによって、電子インボイスに関するルール・規格がまったく異なる可能性が高いからです。 具体例を挙げますと、例えばAの取引先にCとDがいたとします。もしもCとDがまったく異なる自動化システムを導入しているのであれば、CとDがAに対して要求する電子インボイスのルール・規格は、それぞれ異なります。昨今の自動化システムは非常に多く存在しており、このようなケースは十分に考えられるでしょう。 下手をしますと、システムどころか『Cには電子メールで、Dにはチャットツールで電子インボイスを送信することになっている』のように、送信手段すら異なるかもしれません。これでは完全自動化は難しいですよね。 しかしデジタルインボイスでは、取引間で事前にルールや規格を決めます。送信方法も例外ではありません。共通の電子インボイスを定めることにより、各社のシステムが問題なく作動し、振込までの自動化も可能になるという構図です。これがデジタルインボイスです。 デジタルインボイスと電子インボイスは言葉が似ているのでややこしいところですが、内容がまったく異なることを覚えておきましょう。 インボイスの記載事項は複数の書類で満たしてもOKです。詳しくは以下のとおり。
適格請求書とは、必要な事項が記載された請求書、納品書等の書類をいいますが、一の書類 引用元:国税庁|適格請求書の記載事項|77ページ目(2023年5月14日時点)
そのため登録番号は見積書に記載し、その他の記載事項は請求書に記載してもOKということになります。 ただし交付枚数があまりにも多くなりますと、取引先の保管管理が煩雑になるおそれがあります。したがって基本的には1つの書類に記載事項をまとめてしまい、交付する方が親切といえます。ご参考ください。 電子帳簿保存法により2024年1月1日以降、電子取引の場合は電子データの保存が義務付けられています。
令和5年 12 月 31 日までに⾏う電子取引については、保存すべき電子データをプリントアウトして保存し、税務調査等の際に提示・提出できるようにしていれば差し⽀えありません(事前申請等は不要)。 2023年12月31日までであれば書面での保存も可能なのですが、それ以降は電子データでの保存が義務化されています。今の内から電子データでの保存に慣れた方が良いでしょう。 ただし、ただのお礼メールなど取引情報が記載されていない電子データは保存しなくてもOKです。あくまで領収書や請求書など、取引に関する重要事項が記載された電子データが保存対象になっています。 「これは保存すべきなのか?」と迷ったときの参考にしてください。 ここまでインボイス制度やシステムに関する解説をしてきました。インボイス制度は2023年10月1日に導入されます。インボイス制度により記載要件の追加や保存が義務化され、電子帳簿保存法により保存要件が厳格に定められています。 企業や個人事業主はこの流れに対応するため、システムの導入が必須です。従来のままでは対応しきれない確率が高いからです。もちろん対応するだけでなく、コレを機に業務の効率化を図るのがおすすめです。人件費を大きく削減できることでしょう。 もしシステムの導入を検討しているのであれば、弊社のDenHoをご利用ください。DenHoであればスマホで適格請求書を読み取り、簡単に電子データ化および保存できます。それだけでなく電子帳簿保存法にも対応していますので、安心してご利用頂けます。ぜひご検討ください。デジタルインボイスとは何ですか?
インボイスの記載事項は複数の書類で分けても大丈夫ですか?
のみで全ての記載事項を満たす必要はなく、交付された複数の書類相互の関連が明確であり、適格請求書の交付対象となる取引内容を正確に認識できる方法(例えば、請求書に納品書番号を記載する方法など)で交付されていれば、これら複数の書類に記載された事項により適格請求書の記載事項を満たすことができます(インボイス通達3-1)。 電子取引だと電子データでの保存が義務化されるのですか?
令和6年1月からは保存要件に従った電子データの保存が必要ですので、そのために必要な準備をお願いします。
引用元:国税庁|電子取引データの保存方法をご確認ください(2023年5月12日時点)
まとめ インボイス制度の対応にはシステムが必要!
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