棚卸表が在庫管理に必要な理由|表の記載項目や無料で作成する方法を解説

「棚卸表って、そもそも何?」
「どうやって作成すればいいの?」

仕事にて棚卸を任された方の中には、このような疑問を抱くことがあるかもしれません。詳しくは本文で解説しますが、棚卸表とは在庫を確認する際に用いるチェックシートのようなもののことです。

棚卸表を用いることで、作成しなかった場合に比べて高精度で在庫をチェックしていくことが可能。その結果、過剰在庫や品薄状態の製品を正確に把握できるようになり、経営や販売戦略に役立てることができます。そのため棚卸を実施するのであれば、棚卸表は是が非でも作っておきたいところです。

そこでこの記事では、棚卸表の基本情報だけでなく必要な理由・種類・メリット・作成方法を解説していきます。この記事を読めば棚卸業務にて役立ち、かつ本当に作るべき棚卸表を把握できます。

「棚卸表を作りたいけど通常業務で忙しいし、時間は取られたくないな。無料で手軽にパパっと棚卸表を作る方法はないのかな」と考えている方は、ぜひ読んでみてください。

棚卸表とは?在庫管理に必要と言われる理由

在庫管理をスムーズに進めたい企業にとって欠かせないのが棚卸表です。ここでは棚卸表の概要や保存期間について解説いたします。

  • 棚卸表とは?
  • 棚卸表の保存期間
  • そもそも棚卸とは?

棚卸表とは?

棚卸を行う際、チェックした在庫の数量や総額について一覧にしたものが棚卸表です。棚卸表には、以下の項目が記載されています。

  • 商品コード
  • 商品名
  • 実際の在庫数
  • 帳簿上の在庫数
  • 在庫の状態

在庫は企業にとっての資産です。棚卸によって把握した在庫金額は棚卸資産として決算書に記載されます。そのため、棚卸の明細書ともいえる棚卸表は、決算や確定申告時に必要となる重要書類です。

つまり、棚卸表は少なくとも年に一度は作成が必要な書類ということ。ところが半期に一度、あるいは飲食店のように毎月棚卸表を作成する企業もあります。企業にとっては義務である一方、棚卸表を活用することによって得られるメリットも多いからです。

メリットに関しましては後述します。

棚卸表の保存期間

作成した棚卸表には保存義務があり、その期間については以下のように定められています。

法人は、帳簿(注1)を備え付けてその取引を記録するとともに、その帳簿と取引等に関して作成または受領した書類(注2)を、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間(注3)保存しなければなりません。

(注1)「帳簿」には、例えば総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳、売掛金元帳、買掛金元帳、固定資産台帳、売上帳、仕入帳などがあります。

(注2)「書類」には、例えば棚卸表、貸借対照表、損益計算書、注文書、契約書、領収書などがあります。

(注3)青色申告書を提出した事業年度で欠損金額(青色繰越欠損金)が生じた事業年度または青色申告書を提出しなかった事業年度で災害損失金額が生じた事業年度においては、10年間(平成30年4月1日前に開始した事業年度は9年間)となります。

引用元:国税庁| 帳簿書類等の保存期間(2023年9月3日時点)

確定申告の内容に不審な点があった場合、税務署から税務調査が入ることがあります。そのため7年間は保存しておく必要があるというわけです。

個人事業主の場合は、青色申告・白色申告によって棚卸表の保存期間が違います。国税庁ホームページの表には次のような記載があります。

青色申告の場合:損益計算書、貸借対照表、棚卸表など
保存期間7年
白色申告の場合:決算に関して作成した棚卸表その他の書類
保存期間5年

引用元:国税庁|記帳や帳簿等保存・青色申告(2023年9月3日時点)

青色申告法人に欠損金が生じた場合には、繰越期間に応じて棚卸表の保存期間が最大10年間に延長されましたが、これは法人税の措置です。

個人事業主の帳簿書類は、保存期間が最長で7年です。棚卸表は青色申告が7年、白色申告が5年となっていますが、白色申告者にも7年保存のものがあります。そのため、帳簿書類はすべて7年間保存しておくのが良いでしょう。

なお、もしも棚卸表を電子保存するのであればDenHoをお使いください。DenHoとは電子帳簿保存法に対応した保存クラウドサービスのことです。単に電子保存するだけではなく、保存業務を効率化させたいときにぜひご利用ください。

そもそも棚卸とは?

店舗や倉庫などにおいて、企業が持っている在庫について確認する作業、それが棚卸です。数量に加え在庫の状態もチェックすることで、帳簿だけではわからない正確な資産価値を算出することができます。

棚卸によってはじき出された在庫の総額が棚卸残高です。期初めの棚卸残高から期末の棚卸残高を引けば、その期における在庫金額の増減がわかります。これに当期仕入高を加えたものが、当期売上原価となります。

売上高から売上原価を引いたものが粗利(売上総利益)です。つまり、利益確定のためには期末の棚卸残高を把握することが必須で、そのために行われるのが棚卸ということになります。経営を行う上で、棚卸は欠かせない業務と言えるでしょう。

在庫だけじゃない?棚卸表の種類を解説

棚卸は企業の資産価値を算出するために必要な作業です。しかし、企業の資産価値に含まれるのは在庫だけではありません。企業が保有する固定資産についても棚卸表が作成されます。備品について棚卸表を作るケースもあるため、それぞれの表を作成する際のポイントについても解説します。

  • 在庫用の棚卸表
  • 固定資産用の棚卸表
  • 備品用の棚卸表

在庫用の棚卸表

会計上の在庫という言葉は棚卸資産のことを指します。店舗・倉庫にある販売前の在庫以外に、以下のものも含まれます。

  • 半製品(工程は終了しているが出荷前の段階)
  • 仕掛品(製造途中のもの)
  • 副産物(生産過程で付随して得られるもの)
  • 作業屑(製造中に発生する屑のうち価値があるもの)

製造業の場合は棚卸資産に含まれる項目が増えます。また、原材料から製品を出荷するまで、在庫を持つ期間が長くなるのも特徴です。小売業や流通業を含め、これらの業界は一定の在庫を抱えることは避けられないため、より適切な在庫管理が求められていると言えるでしょう。

在庫管理の精度を高めていくためには、棚卸表に入力する際のヒューマンエラーを減らすことが求められます。単純なカウント漏れのほか、数量や商品名の記入ミスも考えられるでしょう。事前のルール確認を徹底して、二重三重のチェック体制を設けておくことも必要です。

このようなミス防止策を日々の在庫チェックにもフィードバックさせることで、帳簿在庫と実在庫数のズレが小さくなり、期末の棚卸もスムーズに進むでしょう。

固定資産用の棚卸表

固定資産用の棚卸表を作成するうえで重要なポイントは、資産の所在と状態をきっちり把握することです。

企業が1年以上使用する目的で保有するものが固定資産で、品目も多岐にわたります。

  • 土地建物
  • 社有車
  • 機械設備
  • パソコン
  • 事務機器
  • デスク・椅子

こうした資産物品は、他部署に移動したり故障によって廃棄されたりと、気付かないうちに状態が変わってしまうことも少なくありません。しかし、管理担当者がすべてをリアルタイムで把握するのは難しいでしょう。

そこで、固定資産管理台帳に登録された資産物品の使用状況について確認するのが固定資産の棚卸です。

具体的には、管理番号や取得年月日が記載されたラベルを資産物品に貼り付け、現物と照合します。棚卸表には資産物品が設置されているフロアや場所、管理している部署について、棚卸の前後に分けて記載されています。これによって、物品の移動状況が一目でわかるのが特徴です。

また、棚卸の際には資産物品のコンディションを確認しておくことも欠かせません。これ以上使えないと判断した場合は、適正に除却処理を行うことで節税にもつながります。

備品用の棚卸表

在庫や固定資産ではありませんが、備品用の棚卸表が作成されるケースもあります。企業の信頼確保のため、以下のような備品を管理する際には、棚卸表を活用するケースもみられます。

  • 鍵(賃貸物件・車両・重機など)
  • 工具類
  • 薬品・廃棄物

これらの備品に共通するのは、持ち出しについて厳重なチェックが求められることです。

例えば、賃貸物件の仲介を手掛ける不動産業では、数多くの鍵を管理しています。棚卸表を作る際のポイントは、今どこに鍵があるのかを明確にすることです。

持ち出した人物だけでなく、目的や戻る時間も正確に把握することで、鍵のセキュリティは強化されるでしょう。

危険を伴う工具や薬品などを取り扱う現場でも、備品の紛失リスクを回避するため棚卸表を活用してみると良いでしょう。

在庫用などの棚卸表を作成するメリット

在庫用などの棚卸表を作成するメリットは、2つあります。

  • 在庫数を的確に把握できる
  • 利益計算を正確にできる

在庫数を的確に把握できる

棚卸表を作成すると、在庫数を的確に把握できます。各商品の在庫数が現時点でどのくらいあるのか、はっきりとデータで確認できるのは大きなメリットです。

商品別の在庫数や入出庫件数を、棚卸表なしで随時確認するのは難しいでしょう。ある商品の在庫数を知りたいときに棚卸表があれば、棚卸を実施した時点の在庫状況をすぐに確認できます。

決算時にのみ棚卸を実施して差異が生じていると発覚した場合、急いで原因を探さなければなりません。定期的に棚卸表を作成しておけば在庫数や在庫の増減の記録を確認できるため、差異が生じたタイミングで原因を追求できます。

在庫数を的確に把握できると、従業員による不正の発覚や商品の過剰な発注・欠品による売り逃しの防止にもつながります。想像以上に在庫がない=売れている商品がわかれば、途中で入荷数を調整して売上アップも目指せるでしょう。

利益計算を正確にできる

利益計算を正確にできることも、メリットです。

利益計算が正確にできると、経営政策や在庫の発注数を変更するなど、目標達成のために対策を考案したり実施したりできます。期末にどのくらいの利益で着地できるのか把握することでこれまでを振り返り、反省点や改善点・このまま継続するべき点などがわかる場合もあります。

しかし、棚卸表を作成せずに在庫数と帳簿の在庫数に差異が生じているとわかった場合、利益計算もズレてしまうため修正が必要です。差異の原因を探すために想像以上に時間がかかり、他の作業に影響が出てしまうかもしれません。

利益計算を正確にできると、今やるべきことや改善するべきことが見えてきます。タイムロスが生じることなく、適切に経営管理できるでしょう。

無料で作成可能!棚卸表の作り方を解説

棚卸表は、無料で簡単に作成できます。ここでは、棚卸表の作り方を解説いたします。

  • Excelで作成
  • システムで作成

Excelで作成

Excelで棚卸表を作成する方法は、簡単です。

  • 1.Excelを開く
  • 2.必須項目を記載
  • 3.印刷

必須項目を記載していれば、項目の順序や形式は自由です。そのため、イチから自分で表を作成できる方・Excelの扱いに慣れている方は、自分の使いやすいように作成してみましょう。

表の作成に自信がない方・作成する時間を短縮したい方向けに、棚卸表(在庫リスト)の無料テンプレートもあります。Excelのホーム画面右上に表示されている『その他テンプレート』をクリックし、検索欄に『在庫』と入力すれば多くのテンプレートが出てきます。

無料テンプレートはダウンロード・印刷するだけですぐに利用できるため、効率を重視する方にもおすすめですよ。

システムで作成

棚卸表を手作業で作成・入力したくない場合は、システムで作成もしくは利用するのがおすすめです。

例えば棚卸を効率良く行うためのシステムは、以下のように多数あります。

  • 商品にコードを設置し、専用の機械でコードを読み込んで在庫数を計算する
  • 専用のマットに商品を置き、重量で在庫数を計算する

手作業での棚卸表の作成や作業は、ミスが起こりやすいです。棚卸後にミスが発覚した場合、二重確認・三重確認をしなければならないケースもあります。

もちろん棚卸システムを導入することで、ミスが完全になくなるわけではありません。しかしイチから業務を行うよりは、人的作業量を減らせますよね。よって、ミスが起こる可能性も低くなります。

在庫数が多い場合や棚卸に十分な時間を取れない場合は、棚卸表の作成や棚卸の実施・差異の確認に膨大な時間と労力が必要です。棚卸の効率化を希望しているのであれば、システムの利用を検討してみましょう。

記載項目を要確認!棚卸表の作成手順

棚卸表を作成する際、記載すべき項目があります。ここでは、棚卸表の作成手順や必須事項を紹介いたします。

  • フォーマットを決定する
  • 必須事項を記載する

フォーマットを決定する

まずは、棚卸表のフォーマットを決定しましょう。

Excelで作成する場合は、項目を自由に決められます。そのため、オリジナルの棚卸表を作成できます。

一方、テンプレートで作成する場合は気に入ったフォーマットを選択して印刷するだけです。テンプレートを利用すれば、必要最低限の項目が記載されている棚卸表を短時間で作成できます。

複数人と共同で棚卸を行う場合・企業で棚卸を行う場合は、使いやすさや共有のしやすさでフォーマットを選ぶと作業がスムーズに進むでしょう。

必須事項を記載する

棚卸表のフォーマットが決定したら、必須事項を入力します。表に記載するべき項目を、以下にまとめました。

  • 棚卸実施日
  • 実施者記入欄
  • 商品番号・製品コード
  • 品名
  • 数量
  • 単価
  • 物品の状態
  • 在庫残高

この他に必要な項目があれば、随時追加してください。

必須事項を入力する際は、在庫数や物品の状態の項目を記載しないことをおすすめいたします。なぜなら、棚卸で在庫数をチェックする際にミスが起こりやすくなるからです。

棚卸表作成時の情報と、在庫確認時の情報をそれぞれ記入できるよう欄を分けて作成したほうが確認しやすいと考える方もいるでしょう。しかし、棚卸で在庫を確認する担当者が、もともと記載してある情報につられて間違った情報を記載してしまう可能性があります。

以下のように数量や物品の状態の欄を記入した状態で棚卸表を作成し、ズレがあった場合に訂正するようなやり方はおすすめできません。

商品番号 品名 数量 数量
【訂正欄】
単価 物品の状態 物品の状態
【訂正欄】
a0001 商品A 3   1,000円 問題なし  
a0002 商品B 5   1,200円 傷あり  
a0003 商品C 1   500円 汚れあり  
a0004 商品D 9   2,100円 問題なし  

例えば、商品の数量を知ったうえで数えると「おそらく〇つあるだろう」と考えながら作業をするため、数え間違いに気付かない可能性があります。数量がいくつなのかまったくわからない状態のほうが、ミスのないように丁寧に数えられるのではないでしょうか。

在庫数や物品の状態を空欄にしておけば、記入ミスや従業員が確認を怠ることを防げるはずです。ご参考ください。

実地など!棚卸の実施方法を解説

棚卸の方法は、大きく分けて2つあります。ここでは、帳簿棚卸と実地棚卸について、詳しく解説いたします。

  • 帳簿棚卸
  • 実地棚卸

帳簿棚卸

帳簿棚卸とは、帳簿や会計ソフトなどで在庫を記録・管理する棚卸方法です。期首の在庫数や「何月何日に〇〇が△個入荷した」のような細かい在庫数の変動を記録できます。

仕入や売上での在庫数の変動を、パソコンやスマートフォンでいつでもすぐに確認できるのが、帳簿棚卸のメリットです。在庫数が多い場合は、一目で確認できるため作業の効率化を図れます。

一方、帳簿棚卸は商品の的確な在庫数の把握はできますが、実際に目で見て商品を確認しているわけではありません。そのため、傷や汚れなど、目視でしかわからない商品の状態を確認できない点はデメリットでしょう。

また、記録されるのは在庫の変動のみです。通常の入出庫以外での変動(万引き・窃盗など)があった場合、在庫のズレに気付くまでに時間がかかる場合がある点も、注意が必要です。

デメリットもありますが、在庫の変動をチェックする機会が多いなら、効率良く在庫確認できる帳簿棚卸がおすすめです。

実地棚卸

実地棚卸とは、人が目視で商品の在庫数や状態を確認し、在庫を記録・管理する棚卸方法です。膨大な数の商品の棚卸を行うには、従業員数人で1日がかりで行うこともあります。

目視で商品の在庫数や状態を確認できるため、商品の汚れや傷などの不備をすぐに把握できるのは、大きなメリットでしょう。一方、大量の商品すべての在庫数や状態を1つ1つ確認してメモする場合、時間がかかる点はデメリットです。

例えば、サイズの小さな部品や在庫数が1,000単位の商品の確認は、短時間では終わらないでしょう。時間だけでなく人員も必要なため、棚卸のための業務スケジュールを別途作成しなければなりません。

しかし「データで管理している帳簿棚卸のほうが正確な情報を記録できるため安心」ともいえないです。なぜなら、帳簿の在庫数と実際の在庫数が必ず合っているとは限らないからです。

帳簿棚卸で在庫を常に把握しつつ、定期的に実地棚卸をして帳簿と実際の在庫に差異がないかしっかり確認しましょう。

まとめ|棚卸表は在庫管理に役立ちます

この記事では棚卸表の解説をしてきました。棚卸表にはいくつものメリットがあるため、棚卸を実施するのであれば、作成することを強くおすすめいたします。

また棚卸表はExcelなどで簡単に作成することが可能。特別なスキルや知識なしで作成できるため、ハードルはそれほど高くありません。すでにExcelをインストール・使える状態なのであれば、パパっとその場で作成することも可能です。テンプレートが豊富にあるため、自社にとって都合の良いフォーマットを使用するのが良いでしょう。

なお作成した棚卸表を電子保存するのであれば、DenHoをお使いください。DenHoにはユーザー管理機能が備わっておりますので、権限設定やデータ共有を実施しやすくなっております。ぜひご検討ください。

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