インボイス制度を機に紙保存から脱却!電子帳簿保存法や適格請求書に対応しよう

インボイス制度を機に紙保存から脱却!電子帳簿保存法や適格請求書に対応しよう

「インボイス制度を機に紙保存から電子保存に切り替えたいけど、どうしようかな」
「電子保存に切り替えた場合、電子帳簿保存法も関わってくる?」
「紙保存から電子保存に切り替えたとき、電子データ化した適格請求書はどうやって保存すればいいの?」

2023年10月1日(日)にインボイス制度が導入されますが、これを機に紙保存からの脱却を考えている経理の方は多くいるハズ。その中には、上記のような悩みを抱いている方もいるのではないでしょうか。

詳しくは本文で解説しますが、インボイス制度を機に紙保存から電子保存に切り替えるのは良い考えです。以下のようなメリットがあるからです。

  • いつでも・どこでも各書類を閲覧できる
  • 必要書類を探す手間が省ける
  • 保管スペースを削減できる
  • 管理コストを低減できる

それに付け加えて2024年1月1日から、電子取引で受け取った適格請求書は電子保存が義務化されます。このことを考えますと、やはり今のうちに紙保存から電子保存に切り替えるのが良いでしょう

しかしそうなりますと「紙保存から電子保存に切り替える際、具体的に何をどうすればいいのかな。事前に把握しておくべきことはあるの?」と気になりますよね。

そこでこの記事ではインボイス制度の基本情報だけでなく、紙保存からの脱却に役立つ知識『電子帳簿保存法のこと・電子保存のメリット・切り替えるためにすべきこと』も解説します。

この記事を読めば、紙保存から電子保存に切り替える際に必要な情報を一通り把握できます。「業務を効率化させるために紙保存をそろそろ終了させたいけど、どうしようかな?」と悩んでいる経理の方は、ぜひ読んでみてください。

インボイス制度とは?適格請求書や導入時期を解説

まずはインボイス制度の基本情報を解説します。

  • インボイス制度とは
  • 適格請求書とは
  • 仕入税額控除とは

インボイス制度とは

インボイス制度とは簡単に言いますと、仕入税額控除を受けるためのルールを指します。インボイス制度は2023年10月1日に導入されるのですが、それ以降に仕入税額控除を受けるには以下のルールを守らなければなりません。

インボイス制度とは、
<売手側>
 売手である登録事業者は、買手である取引相手(課税事業者)から求められたときは、インボイスを交付しなければなりません(また、交付したインボイスの写しを保存しておく必要があります)。
<買手側>
 買手は仕入税額控除の適用を受けるために、原則として、取引相手(売手)である登録事業者から交付を受けたインボイス(※)の保存等が必要となります。
(※)買手は、自らが作成した仕入明細書等のうち、一定の事項(インボイスに記載が必要な事項)が記載され取引相手の確認を受けたものを保存することで、仕入税額控除の適用を受けることもできます。

引用元:国税庁|インボイス制度の概要(2023年5月12日時点)

要するに仕入税額控除には適格請求書が必要であり、送る側・受け取る側関係なく保存が義務化されるということ。仕入税額控除が絡んでくるため、インボイス制度は重要視されているわけですね。

また、このとき単に保存をすれば良いというわけではありません。電子取引で手にした適格請求書は電子帳簿保存法に則って保存・管理をしなければなりません。

そのこともあり紙保存からの脱却を目指している企業は、インボイス制度だけでなく電子帳簿保存のことも把握する必要があります。

そうなりますと「仕入税額控除・適格請求書・電子帳簿保存ってなに?」と気になるでしょう。順番に解説しますね。

適格請求書とは

適格請求書とは仕入税額控除を受けるために必要な書類を指します。厳密には以下のとおり。

適格請求書(インボイス)とは、
売手が買手に対して、正確な適用税率や消費税額等を伝えるものです。
具体的には、現行の「区分記載請求書」に「登録番号」、「適用税率」及び「消費税額等」の記載が追加された書類やデータをいいます。

引用元:国税庁|インボイス制度の概要(2023年5月12日時点)

適格請求書が普及することで、買い手だけでなく国も適用税率や消費税額を詳しく把握できるようになります。ひょっとすると国はそれを狙って、インボイス制度を立ち上げたのかもしれませんね。

適格請求書のポイントとしましては、以下の記載要件を満たしていなければ適格請求書と認められない、つまりは仕入税額控除を受けられないことにあります。

① 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
② 課税資産の譲渡等を行った年月日
③ 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(課税資産の譲渡等が軽減対象資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象資産の譲渡等である旨)
④ 課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額及び適用税率
⑤ 税率ごとに区分した消費税額等
⑥ 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
引用元:国税庁|適格請求書の記載事項|63ページ目(2023年5月12日時点)

紙保存から脱却する際、適格請求書などのフォーマットをインボイス制度に対応させますよね。そのときは、この記載要件をすべて満たすように作成してください。

万が一記載要件を満たしていないフォーマットを使ってしまうと、後日に多くの取引先から高確率で再発行を求められます。そうなってしまうと大変ですので、ご注意ください。

仕入税額控除とは

仕入税額控除とは読んで字のごとく、売上に対する消費税額から、仕入れ時に支払った消費税額を差し引く仕組みを指します。具体例を挙げますと以下のとおり。

仕入税額控除における重要項目 金額
売上に対する消費税額 5,000,000円
仕入れ時に支払った消費税額 1,500,000円
納税する消費税額 3,500,000円

仕入税額控除を利用することで、納税する消費税額が低くなるということですね。

ココでの一番のポイントは、インボイス非登録事業者から仕入れを行った場合、そのときの消費税額は『仕入れ時に支払った消費税額』にカウントされないことにあります。インボイス制度の登場により、仕入税額控除を受けるには適格請求書が必要になり、適格請求書は登録事業者にしか発行できないからです。

そのため自社が登録事業者にならない場合は、取引先はコストが増えることを意味します。このような背景から、非登録事業者は「消費税分、値下げをしてくれないか?」と取引先から打診されるおそれが出てくるわけです。

この打診を拒否しますと、ビジネスに悪影響があるかもしれません。このような事態を避けるためにも、基本的には適格請求書発行事業者に登録するのが良いでしょう。

なお、適格請求書発行事業者の申請用紙は『国税庁|[手続名]適格請求書発行事業者の登録申請手続(国内事業者用)』からダウンロードできます。

また、このページでは記入例や注意事項もダウンロードすることも可能。これからインボイス登録をする際は、必ずチェックしましょう。

電子帳簿保存法が改正!業務への影響あり

次に電子取引保存法の解説をします。紙保存から電子保存に切り替える予定の方は、ぜひ読んでみてください。

  • そもそも電子帳簿保存法とは?
  • 電子取引で受領した各書類は紙ではなく電子保存が義務

そもそも電子帳簿保存法とは?

電子帳簿保存法とは以下のように、請求書など税務関連の書類をデータ保存してもよいと定めたルールのことです。

電子帳簿保存法は、税務関係帳簿書類のデータ保存を可能とする法律で、同法に基づく各種制度を利用することで、経理のデジタル化が図れます。

引用元:国税庁|電子帳簿等保存制度特設サイト(2023年5月12日時点)

電子帳簿保存ができたことにより、書面ではなくPDFなどの電子データで保存できるようになりました。そして電子帳簿保存法は、主に以下3つの保存区分があります。

主な区分 概要
電子帳簿等保存 電子的に作成した帳簿などをデータ保存
スキャナ保存 紙で作成・受領した書類を画像データで保存
電子取引データ保存 電子的に授受した取引情報をデータ保存

紙保存から脱却するとなりますと上記3つの保存は必須です。

帳簿や書類の作成はパソコン上で完結させるハズですし、取引先から受け取った紙の請求書などはスキャナ保存するでしょう。電子的に受け取った取引データは、紙に出力せずにパソコンに保存しますよね。

本題はここからで、電子データとして保存をするのであれば、電子帳簿保存法にてそれぞれ定められている保存要件を守らなければなりません。そのため経理の方は、インボイス制度だけでなく電子帳簿保存法のことも把握しなければなりません。

スキャナ保存と電子取引データ保存の要件は記事の後半で解説していますので、ぜひチェックしてみてください。

電子取引で受領した各書類は紙ではなく電子保存が義務

実は電子帳簿保存法が改正されたことにより、電子取引で手にした適格請求書などの書類は、電子データとして保存することが義務化されます。

令和5年 12 月 31 日までに⾏う電子取引については、保存すべき電子データをプリントアウトして保存し、税務調査等の際に提示・提出できるようにしていれば差し⽀えありません(事前申請等は不要)。
令和6年1月からは保存要件に従った電子データの保存が必要ですので、そのために必要な準備をお願いします。
引用元:国税庁|電子取引データの保存方法をご確認ください(2023年5月12日時点)

2023年12月31日までは経過措置期間のため、書面での保存も可能になっています。しかし2024年1月1日以降は、電子データでの保存が必須です。

したがって紙保存からの脱却を目指している企業は、2024年1月1日までに電子データでのやり取り・確認・管理体制を構築するのが1つの目標となります。

その際は、ぜひ弊社のAI電子帳簿サービスであるDenHoをご利用ください。DenHoは電子取引保存・スキャナ保存に対応していますので、紙保存からのスムーズな脱却が可能です。ご検討ください。

紙による保管から電子保存へ切り替えるメリット

ここからは紙保存から脱却するメリットを解説します。

  • いつでも・どこでも各書類を閲覧できる
  • 必要書類を探す手間が省ける
  • 保管スペースを削減できる
  • 管理コストを低減できる

いつでも・どこでも各書類を閲覧できる

紙保存から電子保存に切り替えることで、いつでも・どこでも各書類を閲覧できます。電子保存をすれば、インターネットを通じて共有できるからです。

そもそも適格請求書を紙保存するとなりますと、基本的には該当書類の社外持ち出しが禁止になるハズですよね。そのため書類を確認するには、出社をしなければなりません。

万が一、リモートワーク中に「○○の記載金額を間違えたかもしれない。確認してほしい」との連絡があれば、その確認のためだけに出社をしなければならないということ。これでは不便ですよね。

しかし電子保存であれば、このようなことにはなりません。社内にて保存した電子データを、ネットを通じて別のパソコンからでも確認できます。

例えば弊社のDenHoであれば電子データはもちろん、スキャナ保存した紙帳票も社外から確認できます。リモートワーク中でもあっても迅速に確認することが可能。このことによる業務の効率化は計り知れません。

DenHoはスキャナ保存・電子取引保存の要件にも対応していますので、ぜひご利用ください。

必要書類を探す手間が省ける

紙保管ではなく電子保存を行うことで、必要書類を探す手間が省けます。電子データであれば検索機能を利用して探せるからです。

例えば想像してみてほしいのですが、紙保存の場合ですと「○○の請求書を見せてほしい」と言われた場合、探すのに時間がかかりますよね。書類の山から該当書類を手動で探し出すのは、誰だって骨が折れます。

もしも探すように言われた書類が数年以上も前のものであれば、下手をしますと『書類保管室まで移動し、膨大な資料の中から探し出す』というケースすらあるかもしれません。これでは1つの資料を探し出すのに、数十分はかかってしまうでしょう。まさに人件費の無駄遣いといえます。

しかし電子保存であれば、このようなことはありません。パソコンの検索機能を使えば、該当書類を瞬時に表示してもらえるからです。

パソコンフォルダの検索欄に『○月〇日 株式会社△△』と入力するだけで、該当する年月・企業の電子データがズラッと自動表示されます。その中から探すだけですので、数秒で探し出せます。

数十分かかる作業を数十秒に効率化できれば、人件費の削減につながるのは想像に難くありませんよね。必要書類を探すのに時間がかかっている企業ほど、紙保存から電子保存に切り替えるべきです。

ちなみに弊社のAI電子帳簿保存サービスDenHoであれば、各電子データにタグを付与できます。タグを利用した検索機能を使えば、さらに簡単に書類を探せるようになります。ぜひご利用ください。

保管スペースを削減できる

紙保存から電子保存に切り替えることで、保管スペースを削減できます。電子データは紙とは異なり、パソコン上に保存できるからです。

本や教科書をイメージするとわかりやすいのですが、紙は枚数が多くなるほど、どんどんぶ厚くなります。つまり保管する書類が多くなれば、必要なスペースもそれに比例して広くなるということ。企業が管理する書類ともなれば膨大な量になるため、それ相応の保管スペースが必要になりますよね。

しかし仮に保管スペースを増やしたとしても、企業の売り上げ・利益にプラスの影響はほぼありません。保管スペースの広さが、企業の生産性向上に貢献することは考えにくいからです。そのため書類の保管スペースを広く確保することは、経営上あまり好ましくありません。

しかし電子データであれば、このような保管スペースは必要ありません。パソコン上に保管できるからです。パソコン1つあれば、膨大な書類を保管できます。その分パソコンには保存容量が必要になるのですが、現実世界で保管スペースを確保するよりも低コストで済みます。

「書類の保管スペースを定期的に確保しなければならないのが面倒だな」と悩んでいる経理の方は、ぜひ電子保存に切り替えてください。

管理コストを低減できる

紙保存から電子保存にすることで、管理コストを低減できます。電子保存にはファイリングがないからです。

そもそも紙保存をするとなりますと、以下のような管理が必要になります。

  • 分類
  • 整理
  • 保管
  • 破棄

上記作業を行う際、多くの企業は手動で行っているハズ。つまり、そのたびに人件費が発生しているということ。書類の数が多くなればなるほど、このときの人件費は大きくなることでしょう。

しかし電子データで保存をすれば、上記作業は多くの場合数クリックで事足ります。紙保存のように、人手や時間を多く必要とはしません。その結果、管理コストを低減できるというわけです。

それだけでなく電子保存であれば、紙保存のように汚れる・破れるなどといったトラブルがありません。つまり修復や再発行などといったコストが一切かからないということ。最終的には、なかなかの金額を節約できる可能性があります。

以上のことから書類の管理コストが増えてきている企業ほど、電子保存に切り替えるべきです。ご検討ください。

要対応!紙保存から脱却するためにすべきこと

ここでは肝心の、紙保存から脱却する手順を解説します。

  • インボイスに対応したフォーマットに切り替える
  • 請求書の確認体制を構築
  • AI-OCRを導入する
  • 管理システムを導入
  • 紙ではなくPDFで請求書を送信する

インボイスに対応したフォーマットに切り替える

まずは請求書などといった各書類のフォーマットを、インボイスの記載要件を満たすように切り替えましょう。送る側にせよ受け取る側にせよ、紙保存から脱却するということは電子データでのやり取りがメインになるからです。

例えばフォーマットがインボイス未対応の状態で書類を発行しても、適格請求書とみなされません。適格請求書発行事業者に登録をしている場合でも、これは例外ではありません。これでは取引先が控除を受けられないため、紙保存の脱却どころの話ではありません。したがってインボイスに対応したフォーマットに切り替えることはマストです。

ちなみに適格請求書の記載要件は、本記事の序盤に記載しています。ぜひチェックしてみてくださいね。

また、フォーマットを切り替える際に「すべてのフォーマットを切り替える必要があるのかな?」と気になるかもしれませんが、その心配はご無用。国税庁が以下のように明記しているからです。

現在売上先に交付している全ての書類をインボイスに対応する必要はありません
どの書類をインボイスとするか、売上先とも相談しながら準備を進めましょう

引用元:国税庁|インボイス制度が始まります!|4ページ目(2023年5月15日時点)

したがって請求書や納品書など、自社にとって都合の良い書類を変更するのがおすすめです。もちろん、取引先と相談して決めるのもアリです。ご参考ください。

請求書の確認体制を構築

請求書などといった書類の確認体制を構築しましょう。インボイス制度が導入されますと、適格請求書とそれ以外の2つに分ける必要が出てきたり、登録番号が間違っていたりするなどの問題が出てくるかもしれないからです。

どういうことかといいますと、まずインボイス制度の登録は強制ではなく、以下のように任意になっています。

適格請求書を交付できるのは、登録を受けた適格請求書発行事業者に限られますが、
適格請求書発行事業者の登録を受けるかどうかは事業者の任意です。

引用元:国税庁|お問合せの多いご質問(令和5年4月14日掲載)|6ページ目(2023年5月12日時点)

そうなりますと登録事業者と非登録事業者が出てきますよね。適格請求書と、記載要件が満たされていない(登録番号が記されていない)書類の2つが出てくるわけです。

この2種類がゴチャ混ぜになってしまうと、受け取った書類の量によっては確認作業の負担が大きくなるおそれがあります。現場の負担を軽くするためにも、各書類の確認体制は構築しておくべきでしょう。

それに付け加えて、適格請求書に記載されている登録番号が絶対に正しいとは限りません。間違っている・嘘であるおそれもあります。そのことに気づかず保存をしてしまえば、適切な控除を受けられなくなり、会社の損失につながります。

経理の方は、このような事態を絶対に回避すべきです。それらを事前に気づけるようにするため、確認体制を構築することはやはり望ましいです。

もしも予算に余裕があるのであれば、適格請求書に記載された登録番号を自動判別できるツールを導入するのがおすすめです。非常に効率的に適格請求書をチェックできます。

その一方で予算に余裕がないのであれば、パソコン内に2つのフォルダを用意しておき、『適格請求書はAフォルダ、それ以外の書類はBフォルダに入れておく』のような簡単な仕組みでもOK。

そして適格請求書側に入れられた各書類の記載要件を確認してください。シンプルな確認体制ではありますが、何もしないよりは一定の効果を期待できます。

AI-OCRを導入する

AI-OCR※を導入しましょう。

※AI-OCRとは、OCR(光学文字認識技術のこと。わかりやすく言うと、画像や書類に記載されている文字を読み取る技術)にAI技術を持たせたツールのこと。OCRにAI、つまり機械学習機能を持たせたことで文字認識率の向上を実現できました。

紙の適格請求書を電子データ化できることはもちろん、管理システムなどへの入力作業を大幅に効率化できるからです。

そもそも想像してみてほしいのですが、受け取った適格請求書を管理システムなどに入力するとき、1枚当たりどれほどの時間がかかっているでしょうか? おそらく多くの方は、数分ほどかかっているハズです。

つまり1,000枚もの書類があれば、入力作業だけで数千分はかかるということ。記入ミスがあれば、さらに時間がかかるでしょう。企業の売り上げ・利益にプラスの影響がない入力作業に、これだけの人件費をかけるのは好ましくありませんよね。

そんなときこそAI-OCRの出番です。AI-OCRであれば、適格請求書に記載された情報を数秒で読み取れます。1枚当たりの入力時間を数分から数秒に短縮させることで、作業効率を大幅にアップできます。その結果、人件費も大きく削減できることでしょう。

パソコンへの入力時間や記入ミスの多さに悩まされている経理の方は、AI-OCRを導入すべきです。紙保存の脱却を機に、業務の効率化も推し進めるのがおすすめです。

管理システムを導入

管理システムは必ず導入してください。記事の冒頭でも触れましたが、電子データの保存にはそれぞれ保存要件があるからです。

そもそもインボイス制度の導入により、発行した場合は適格請求書の写しが、受け取った場合はその適格請求書の保存が義務化されますよね。

本題はここからで、実は電子データ化させた適格請求書は単に保存をすれば良いというわけではありません。例えば電子取引時に受け取った適格請求書であれば、保存をする際は『真実性の確保・可視性の確保』を満たさなければならないのです。詳しくは以下のとおり。

真実性の確保
以下の措置のいずれかを行うこと。
① タイムスタンプが付された後、取引情報の授受を行う
② 取引情報の授受後、速やかに(又はその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに)タイムスタンプを付すとともに、保存を行う者又は監督者に関する情報を確認できるようにしておく
③ 記録事項の訂正・削除を行った場合に、これらの事実及び内容を確認できるシステム又は記録事項の訂正・削除を行うことができないシステムで取引情報の授受および保存を行う
④正当な理由がない訂正・削除の防止に関する事務処理規定を定め、その規定に沿った運用を行う

可視性の確保
保存場所に、電子計算機(パソコン等)、プログラム、ディスプレイ、プリンタ及びこれらの操作マニュアルを備え付け、画面・書面に整然とした形式及び明瞭な状態で速やかに出力できるようにしておくこと

電子計算機処理システムの概要書を備え付けること

検索機能※を確保すること
※帳簿の検索要件①~③に相当する要件(ダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には、②③不要)
 保存義務者が小規模な事業者でダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には、検索機能不要

引用元:国税庁|電子帳簿保存法が改正されました|4ページ目(2023年5月12日時点)

要するに『容易に改ざんできないようにすること・必要なときに迅速に表示・出力させられること』が、保存要件になっているわけです。そのため上記2点を満たす管理システムの導入がマストになります。

そこでおすすめなのが、弊社のAI電子帳簿保存サービスDenHoです。DenHoであればタイムスタンプを標準搭載しており、真実性の確保を追加料金なしで簡単に実現できます。

それだけでなく、取引先・取引日付・取引金額をAI-OCRが自動でデータ化。日付や金額で、必要な適格請求書を迅速に検索することが可能になります。もちろん範囲指定にも対応。
検索作業を最大限効率化させつつ、可視性の確保を確立できます。

保存要件を満たすことはもちろん、使いやすい管理システムをお探しの方はぜひ弊社のDenHoをご利用ください。

紙ではなくPDFで請求書を送信する

当たり前の話なのですが、適格請求書はPDFなどの電子データで送りましょう。フォーマットを整えても、紙を使っては元も子もないからです。

しかし紙保存を完全に脱却することを目指したときに、ひょっとすると現場から以下のような反発を受けることがあるかもしれません。

  • すべての書類を電子データでやり取りするのは不便だ
  • 紙に手書きでパパッと書いた方が早い

そのときは、これまでに記載した数多くの電子保存におけるメリットを伝え、説得を試みてください。そして短期的な視点ではなく、あくまで長期的な視点で考えてもらいましょう。

ペーパーレス化・保管スペース削減の有益性などを徹底的に伝えれば、電子保存の必要性や重要性をわかってくれるハズです。

経理必見!紙保存をやめる際によくある質問

ここではインボイス制度や紙保存時によくある質問にお答えします。

  • 3万円未満の適格請求書も保存するのですか?
  • 適格請求書の写しの保存期間は何年間ですか?
  • 電子帳簿保存法に基づくスキャナ保存制度とはなんですか?
  • 交付した適格請求書の写しとは具体的になんですか?
  • 端数処理はどうすればいいですか?

3万円未満の適格請求書も保存するのですか?

インボイス制度が始まることにより、3万円未満の適格請求書も保存が義務化されます。詳しくは以下のとおり。

現行においては、「3万円未満の課税仕入れ」及び「請求書等の交付を受けなかったことにつきやむを得ない理由があるとき」は、一定の事項を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除が認められる旨が規定されていますが、適格請求書等保存方式の開始後は、これらの規定は廃止されます。

引用元:国税庁|適格請求書等保存方式の概要|15ページ目(2023年5月12日時点)

『適格請求書等保存方式』とはインボイス制度のこと。この決まりは紙保存・電子保存を問いません。3万円未満の適格請求書だからといって、従来のように捨ててしまわないように気を付けてください。

適格請求書の写しの保存期間は何年間ですか?

適格請求書の写しは、7年間の保存が義務付けられています。

適格請求書発行事業者には、交付した適格請求書の写し及び提供した適格請求書に係る電磁的記録の保存義務があります(新消法57の4⑥)。
この適格請求書の写しや電磁的記録については、交付した日又は提供した日の属する課税期間の末日の翌日から2月を経過した日から7年間、納税地又はその取引に係る事務所、事業所その他これらに準ずるものの所在地に保存しなければなりません(新消令70の13①)。

引用元:国税庁|5 適格請求書等の写しの保存|96ページ目(2023年5月12日)

そのため適格請求書は非常に長い期間、保管をしなければなりません。企業によっては、保管室が必要なぐらいの量の書類を抱えることになるかもしれません。

このことを考えますと、やはり紙保管よりも電子保存の方が好ましいでしょう。

電子帳簿保存法に基づくスキャナ保存制度とはなんですか?

簡単に言いますとスキャナ保存制度とは、取引先から受け取った書面の適格請求書を、一定のルールを守るのであればスキャンおよび電子保存してもよいという制度を指します。国税庁によりますと以下のとおり。

スキャナ保存制度は、取引の相手先から受け取った請求書等及び自己が作成したこれらの写し等の国税関係書類(決算関係書類を除きます。(注))について、税務署長等の承認を受けた場合には、書面による保存に代えて、一定の要件の下で、スキャン文書による保存が認められる制度です(法43)。
(注) 平成27年9月30日前に行われた承認申請については、契約書・領収書の一部も除かれます。

引用元:国税庁|スキャナ保存制度はどのような内容となっていますか (2023年5月12日時点)

そもそも紙保存から脱却を図るのであれば、取引先から受け取った適格請求書をスキャナ保存することが多くなるハズ。そのため、スキャナ保存の保存要件も覚えておくことをおすすめします。

ちなみにスキャナ保存の要件は、以下のように細かく決められています。

スキャナ保存の要件 重要書類※1
入力期間の制限(書類の受領等後又は業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに入力)(規35一イ、ロ)
一定水準以上の解像度(200dpi以上)による読み取り (規35二イ(1))
カラー画像による読み取り(赤・緑・青それぞれ256階調(約1677万色)以上)(規35二イ(2))
タイムスタンプの付与(規35二ロ) ※3
解像度及び階調情報の保存(規35二ハ(1))
大きさ情報の保存(規35二ハ(2)) ※4
ヴァージョン管理(訂正又は削除の事実及び内容の確認)(規35二ニ)
入力者等情報の確認(規35三)
適正事務処理要件(規35四)※2 ※5
スキャン文書と帳簿との相互関連性の保持(規35五)
見読可能装置(14インチ以上のカラーディスプレイ、4ポイント文字の認識等)の備付け(規35六)
整然・明瞭出力(規35六イ~ニ)
電子計算機処理システムの開発関係書類等の備付け(規35七、同31三)
検索機能の確保(規35七、同31五)
税務署長の承認(法43)

※1:決算関係書類以外の国税関係書類(一般書類を除く)をいう。
※2:適正事務処理要件」とは、国税関係書類の受領等から入力までの各事務について、次に掲げる事項に関する規定を定めるとともに、これに基づき当該各事務を処理することをいう。
相互に関連する各事務について、それぞれ別の者が行う体制(相互けんせい)1
当該各事務に係る処理の内容を確認するための定期的な検査を行う体制及び手続(定期的な検査)
当該各事務に係る処理に不備があると認められた場合において、その報告、原因究明及び改善のための方策の検討を行う体制(再発防止)
※3:受領者等が読み取る場合、受領後、受領者等が署名の上、特に速やか(おおむね3営業日以内)に付す必要あり。
※4:受領者等が読み取る場合、A4以下の書類の大きさに関する情報は保存不要
※5:小規模企業者の特例の適用を受ける場合(税務代理人が定期的な検査を行う場合)、相互けんせいの要件は不要
参考:国税庁|Ⅱ 適用要件【基本的事項】(2023年5月12日時点)

要するに電子取引保存の要件と同様に、書類が改ざんされない(真実性の確保)、検索して確認できるようにすること(可視性の確保)が、スキャナ保存においても重要になるということ。

注意事項が多くややこしいのですが、紙保存から合法的に脱却するためにも適格請求書をスキャナ保存する際は上記を必ず守ってくださいね。

交付した適格請求書の写しとは具体的になんですか?

交付した適格請求書の写しとは、基本的には発行した適格請求書のコピーを指します。そもそも紙保存の脱却を目指している企業は、電子データで適格請求書を発行しているハズ。そのため交付した適格請求書の写しは簡単に用意できるでしょう。

ちなみに国税庁によりますと、記載要件が確認できればレジの会計データを印刷したものでもOKとのこと。詳しくは以下のとおり。

「交付した適格請求書の写し」とは、交付した書類そのものを複写したものに限らず、その
適格請求書の記載事項が確認できる程度の記載がされているものもこれに含まれますので、例えば、適格簡易請求書に係るレジのジャーナル、複数の適格請求書の記載事項に係る一覧表や明細表などの保存があれば足りることとなります。

引用元:国税庁|適格請求書等の写しの保存 |96ページ(2023年5月13日時点)

『レジのジャーナル』が、レジの会計データを印刷した書面を意味します。

飲食店などのオフラインビジネスだと、適格請求書の写しをネットショップほど簡単に用意できない場合があります。ネットショップであれば2~3のクリックだけで適格請求書の写しを発行できますが、飲食店や美容室などではそうはいきませんよね。

そのような事業者にもインボイス制度に難なく対応してもらえるように、このようなルールがあるのかもしれません。

端数処理はどうすればいいですか?

インボイス制度の導入後、端数処理は以下のように『税率ごとに1回』になります。

適格請求書等保存方式においては、適格請求書に記載すべき「消費税額等:の計算方法が定められており、取引に係る税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額に対して、10%又は8%(税込の場合は10/110又は8/108)を乗じて得た金額に対して端数処理を行い「消費税額等」を算出します。

したがって、適格請求書の記載事項である「税率ごとに区分した消費税額等」に1円未満の端数が生じた場合には、一の適格請求書につき、税率ごとに1回の端数処理を行います【例①③】。

引用元:国税庁|適格請求書等保存方式の概要|9ページ目(2023年5月13日時点)

要は『商品ごとに何度も端数処理をするのではなく、まずは8%と10%の消費税額をそれぞれまとめ、各合計金額に対して端数処理を行う』ということですね。

実際に計算をしてみるとわかりますが、端数処理の計算方法を間違えると最終金額が1円単位で変化します。それに気づかず納税をしますと、後に税務署から指摘が来るハズ。

そしてすべての書類で計算をやり直す事態に陥るかもしれません。仮に電子保存に切り替えていたとしても、これでは面倒ですよね。

そのため、端数処理の計算方法は必ず覚えておきましょう。

まとめ インボイス制度は紙保存脱却のチャンス!

ここまで紙保存から脱却する際に必要な情報を解説してきました。そもそも紙保存を脱却するということは、電子データのみでやり取りすることを意味します。

そうなりますと適格請求書は電子データで送受し、保存することになりますよね。適格請求書が絡んでいるためインボイス制度を、電子保存が関係するため電子帳簿保存法のことを知らなければならなくなります。そして、それぞれに対応しなければなりません。

このように紙保存から脱却するために知ること・やるべきことは、多くあります。しかしそれらを乗り越えれば、ペーパーレス化・保管スペースの削除・管理コストの低減など、数多くのメリットを得ることが可能。その結果、最終的には利益アップに貢献出来ることでしょう。経理の方は、ぜひトライしてみてください。

なお、その際はAI電子帳簿保存サービスであるDenHoをご利用ください。DenHoはスキャナ保存・電子取引保存に対応していますので、紙保存からの脱却に大きく貢献できます。ご検討ください。


インボイス制度対応電子帳簿保存システムDenHo

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