インボイス制度と電子帳簿保存法改正の関係は?適格請求書や対応方法を解説

インボイス制度と電子帳簿保存法改正の関係は?適格請求書や対応方法を解説

「インボイス制度のことを調べたら、電子帳簿保存法がよく出てくるな。なにか関係があるのかな」
「そもそも電子帳簿保存法ってなに?」
「電子取引時に受け取ったデータや適格請求書を保存する際、保存要件はあるのかな?」

インボイス制度の導入、および電子帳簿保存法の経過措置期間の終了が近づくにつれ、このような疑問を抱く方もいるハズ。

詳しくは本文で解説しますが、インボイス制度と電子帳簿保存法は深く関係しています。『電子取引時に受け取った適格請求書は保存が必須』の部分で重なっているからです。

そのため経理の方はインボイス制度だけでなく、電子帳簿保存法のことも把握することを強くおすすめします。肝心の保存方法は電子帳簿保存法に則る必要があるため、その必要性は俄然増します。

しかしそうなりますと、「具体的にどうやって保存すればいいの?」と悩みますよね。そこでこの記事ではインボイス制度と電子帳簿保存法の基本情報だけでなく、関係性・具体的な保存方法・経過措置期間・適格請求書のことも解説します。

この記事を読めば、インボイス制度と電子帳簿保存法の関係性・保存要件を深く理解できます。「インボイス制度だけでなく、そろそろ電子帳簿保存法に対する準備も進めなければいけないな」と考えている経理の方は、ぜひ読んでみてください。

インボイス制度と電子帳簿保存法改正の関係性

まずはインボイス制度と電子帳簿保存法の関係性を解説していきます。

  • インボイス制度と電子帳簿保存法改正の関係性は?
  • 電子帳簿保存法とは?
  • インボイス制度とは?

インボイス制度と電子帳簿保存法改正の関係性は?

インボイス制度と電子帳簿保存法改正の関係性は深いです。上述しましたように『電子取引時に受け取った適格請求書、もしくは送信した適格請求書の写しは保存が必須』の点で重なるからです。

インボイス制度 重なる部分 電子帳簿保存法
書面での適格請求書
電子データでの適格請求書
電子取引により生じた、
電子データでの適格請求書
電子取引・電子帳簿・スキャナ保存により生じた各書類(適格請求書以外も含む)

2023年5月12日時点

詳しくは後述しますが、インボイス制度は『書面・電子データ問わず、記載要件を満たせば請求書や納品書でも適格請求書にできる。その際は保存が必須』というルールになっています。書面・電子データ・種類に関係なく、とにかく適格請求書に特化したルールがインボイス制度になります。

その一方で電子帳簿保存法は電子保存する際の決まりごとに特化させた法律です。電子帳簿保存法は主に電子取引データ保存・電子帳簿等保存・スキャナ保存の3つで構成されており、それぞれ保存要件が定められています。電子帳簿保存法においては、適格請求書以外の書類も対象になっています。

つまり、電子帳簿保存法における『PDFファイルなど電子取引データの保存』の部分が、インボイス制度の『電子データでの適格請求書の保存』と被るということ。そのこともあり、インボイス制度と電子帳簿保存法は関係が深いといえるのです。

これを機に経理の方は、電子帳簿保存法のことも覚えておくのが良いでしょう。

電子帳簿保存法とは?

電子帳簿保存法とは簡単に言いますと、適格請求書などといった税務関連の書類の電子データ保存を認めた法律のことです。詳しくは以下のとおりです。

電子帳簿保存法は、税務関係帳簿書類のデータ保存を可能とする法律で、同法に基づく各種制度を利用することで、経理のデジタル化が図れます。
また、取引に関する書類に通常記載される情報(取引情報)を含む電子データをやり取りした場合の、当該データに関する保存義務やその保存方法等についても同法により定められていますので、 所得税法・法人税法上の保存義務者となる方は、特に「電子取引」についてご確認ください。

引用元:国税庁|電子帳簿等保存制度特設サイト(2023年5月12日時点)

電子帳簿保存法自体は1998年から施行されているのですが、現在に至るまでに何度も改正されています。約25年もの間に、ビジネスのやり取り方法に大きな変化があったからです。その代表例が電子取引の活発化です。

Amazonや楽天の台頭、個人が運営するネットショップの普及などにより、電子取引件数は2013年~2021年間だけでも以下のように激増しました。

年度 電子取引件数
2013年 111,660件
2014年 127,970件
2015年 137,746件
2016年 151,358件
2017年 165,054件
2018年 179,845件
2019年 193,609件
2020年 192,779件
2021年 206,950件

引用元:経済産業省|電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました(2023年5月12日時点)

2013年と2021年の電子取引件数を比較しますと、なんと約2倍になっています。そのため「受け取った請求書などを毎回書面に出力し、保存するのは面倒だ」という意見が出てきても不思議ではありませんよね。このような時代の流れに対応するために、電子帳簿保存法はたびたび改正されているのでしょう。

そんな電子帳簿保存法は2021年に改正、2022年1月に施行され、2024年1月からは義務化されます。内容を調べてみますと、電子帳簿保存法には主に以下3つの区分があることがわかりました。

電子帳簿保存法の区分 内容
電子帳簿等保存 電子的に作成した帳簿・書類をデータのまま保存
スキャナ保存 紙で受領・作成した書類を画像データで保存
電子取引データ保存 電子的に授受した取引情報をデータで保存

引用元:国税庁|電子帳簿保存法が改正されました|1ページ目(2023年5月12日時点)

今回の電子帳簿保存法改正で注意すべき点は、電子データで受け取った書類・送信物の写しは、電子による保存が義務化されたことにあります。

そもそも従来の電子帳簿保存法だと、電子的に受領した各書類は書面形式・電子データのどちらでも保存がOKでした。しかし2024年1月になると、以下のように『電子取引の場合だと電子データでの保存が義務』に変更されます。

令和5年 12 月 31 日までに⾏う電子取引については、保存すべき電子データをプリントアウトして保存し、税務調査等の際に提示・提出できるようにしていれば差し⽀えありません(事前申請等は不要)。
令和6年1月からは保存要件に従った電子データの保存が必要ですので、そのために必要な準備をお願いします。
引用元:国税庁|電子取引データの保存方法をご確認ください(2023年5月12日時点)

したがってPDFなどで受領した請求書や納品書は、電子データとして保存しなければなりません。書面保存が主体となっている企業は、今のうちに電子データ保存に慣れておいた方が良いでしょう。

それに付け加えて上記資料を見るに、単に保存をすれば良いわけではありません。『保存要件に従った電子データの保存が必要』と明記されていますよね。今回の電子帳簿保存改正では、ココが要点となります。

電子データの保存要件に関しては後述しますね。

インボイス制度とは?

インボイス制度(正式名称は適格請求書等保存方式)とは、消費税の仕入税額控除を受けるためのルールを指します。詳しくは以下のとおり。

インボイス制度とは、
<売手側>
 売手である登録事業者は、買手である取引相手(課税事業者)から求められたときは、インボイスを交付しなければなりません(また、交付したインボイスの写しを保存しておく必要があります)。
<買手側>
 買手は仕入税額控除の適用を受けるために、原則として、取引相手(売手)である登録事業者から交付を受けたインボイス(※)の保存等が必要となります。
(※)買手は、自らが作成した仕入明細書等のうち、一定の事項(インボイスに記載が必要な事項)が記載され取引相手の確認を受けたものを保存することで、仕入税額控除の適用を受けることもできます。

引用元:国税庁|インボイス制度の概要(2023年5月12日時点)

上記のように、インボイス制度によって『発行した適格請求書の写し・受け取った適格請求書の保存』が義務化されます。

万が一保存をしなかった場合は、適切な控除を受けられないおそれがあります。これではコストが増加してしまいますよね。自社だけにとどまらず、もしも取引先のコストも増加させてしまえばビジネスに悪影響があるかもしれません。したがって適格請求書は保存しましょう。

もちろん適格請求書を電子保存する際は、電子帳簿保存法の要件を守ってくださいね。電子帳簿保存法における電子取引の保存要件に関しては、次で解説します。

適格請求書などを電子データで保存する際の要件

電子取引時に送信した適格請求書の写し・受け取った書類を保存する際は、以下2つの要件を満たさなければなりません。

  • 真実性の確保
  • 可視性の確保

真実性の確保

電子データを保存する際は、真実性を確保しなければなりません。真実性の確保とは要するに、税務職員などの第三者が書類を見たときに「この電子データは改ざんされていない」と判断できる状態・環境にしておくことを、真実性の確保といいます。

そのため国税庁は、電子取引におけるデータ保存は以下のように実施するよう明記しています。

以下の措置のいずれかを行うこと。
① タイムスタンプが付された後、取引情報の授受を行う
② 取引情報の授受後、速やかに(又はその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに)タイムスタンプを付すとともに、保存を行う者又は監督者に関する情報を確認できるようにしておく
③ 記録事項の訂正・削除を行った場合に、これらの事実及び内容を確認できるシステム又は記録事項の訂正・削除を行うことができないシステムで取引情報の授受および保存を行う
④正当な理由がない訂正・削除の防止に関する事務処理規定を定め、その規定に沿った運用を行う

引用元:国税庁|電子帳簿保存法が改正されました(2023年5月12日時点)

タイムスタンプにより、取引およびその文書が本当に存在したことを証明すること。該当取引の関係者をいつでも調べられるようにしておくこと。訂正・削除の履歴を残すことで、簡単に改ざんできないようにすること。事務処理におけるルールを言語化・組織内に浸透させることで、改ざんを未然に防ぐ企業文化や体制を構築すること。これら4つを実施することで、電子取引における真実性の確保が実現できます。

なお真実性の確保においては、上記のどれか1つでも満たせばOKです。すべてを満たす必要はありません。使用するシステムにもよるのですが、現状ではタイムスタンプを押しておけばOKという認識で良いでしょう。

ちなみに、弊社のAI電子帳簿保存サービスDenHoであれば、タイムスタンプ機能が標準搭載されています。追加料金一切なしで電子帳簿保存法に対応できますので、ぜひご利用ください。

可視性の確保

電子データを保存する際は、可視性の確保も必須です。ここでいう可視性の確保とは簡単にいうと、税務職員などの第三者に適格請求書などの提示を要求されたとき、該当書類のデータを迅速に見せられる状態・環境を指します。

国税庁の資料では、以下のように記載されています。

保存場所に、電子計算機(パソコン等)、プログラム、ディスプレイ、プリンタ及びこれらの操作マニュアルを備え付け、画面・書面に整然とした形式及び明瞭な状態で速やかに出力できるようにしておくこと

電子計算機処理システムの概要書を備え付けること

検索機能※を確保すること
※帳簿の検索要件①~③に相当する要件(ダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には、②③不要)
 保存義務者が小規模な事業者でダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には、検索機能不要

引用元:国税庁|電子帳簿保存法が改正されました(2023年5月12日時点)

要は「ダウンロード・検索の仕方がわからないのでお見せできません」や「検索したのですが、適格請求書が見当たりません」といった事態を防ぐためのルールといえますね。「○○年〇月〇日に××から受領した△△円の適格請求書を見せてください」と税務職員などに要求されたとき、「どうぞ」とすぐに手渡せる状態・環境を必ず構築してください。

このときの最重要課題といえるのが『検索機能』なのですが、実は検索に関しても要件があります。

検索要件
①改正後、記録項目は取引年月、取引金額、取引先に限定
②日付又は金額の範囲指定により検索出来ること
③二つ以上の任意の記録項目を組み合わせた条件により検索出来ること

※1 保存義務者が、税務職員による質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には、検索要件のうち②③の要件が不要となります(後述のスキャナ保存及び電子取引についても同様です。)。

引用元:国税庁|電子帳簿保存時の要件|2ページ目(2023年5月12日時点)

そのため『取引年月・取引先名・取引金額』の3つで、該当書類を検索できるようにしておくことがマストになります。一見すると面倒に見えますが、実はそんなことはありません。ファイル名を以下のように記載しておくだけで、検索要件を簡単に満たせます。

【検索条件を満たしたファイル名の例】
2024年1月1日に株式会社国税から受領した『100,000円の請求書』

2024.0101.株式会社国税.100,000円.請求書

上記であれば取引年月・取引先名・取引金額のすべてを記載しています。一般的なフォルダでも簡単に検索できるでしょう。それだけでなく取引月や金額でフォルダを分けておくのもアリです。さらに探しやすくなるでしょう。

ただし正直な話をしますと、上記作業は面倒に感じるかもしれません。徹底して実行できるのは、適格請求書の発行・受領数が少ない小規模事業者に限られるでしょう。1か月に数十枚・数百枚もの適格請求書を取り扱う企業は、システムを導入した方が圧倒的に効率的です。

その際は、ぜひ弊社のDenHoをご検討ください。DenHoであれば全文検索も可能。万が一『取引年月・取引先名・取引金額』の3つが検索に引っかからなかったとしても、探し出せます。柔軟な検索機能を搭載しているシステムがご希望の方は、ぜひご相談ください。

経理は要確認!適格請求書(インボイス)を解説

ここまでインボイス制度と電子帳簿保存法に関する解説をしてきましたが、その間に『適格請求書』という言葉が多く出てきましたよね。読んだ方の中には、適格請求書のことがわからなかった方もいるハズ。

そこでここでは、適格請求書に関する基本情報を解説します。

  • そもそも適格請求書(インボイス)とは?
  • 記載内容に誤りがあると再交付が義務になる
  • 3万円未満も保存が義務化!

そもそも適格請求書(インボイス)とは?

適格請求書(インボイス)とは仕入税額控除を受けるために必要な、一定の記載要件が満たされた書類を指します。詳細は以下のとおり。

適格請求書(インボイス)とは、
売手が買手に対して、正確な適用税率や消費税額等を伝えるものです。
具体的には、現行の「区分記載請求書」に「登録番号」、「適用税率」及び「消費税額等」の記載が追加された書類やデータをいいます。

引用元:国税庁|インボイス制度の概要(2023年5月12日時点)

適格請求書の発行・受領が一般化すれば、国への合計納税額は増えることでしょう。今までは免税事業者だった企業・個人も、登録事業者になることで納税してもらえるようになるからです。

もちろん、適格請求書発行事業者になるかどうかは以下のように任意です。

適格請求書を交付できるのは、登録を受けた適格請求書発行事業者に限られますが、
適格請求書発行事業者の登録を受けるかどうかは事業者の任意です。
引用元:国税庁|お問合せの多いご質問(令和5年4月14日掲載)|6ページ目(2023年5月12日時点)

しかし上記にもありますように、適格請求書を発行できるのは登録事業者のみです。つまり消費税の控除は、登録事業者しか受けられないということ。

控除のことを考えますと、最終的には登録する企業・個人事業主が一定数存在することが予想されます。その結果、納税額のアップが推測されるわけです。適格請求書発行事業者になるべきかは判断が難しいところですが、よく考えて検討してみてください。

ちなみに先ほどの資料に、適格請求書は『現行の「区分記載請求書」に「登録番号」、「適用税率」及び「消費税額等」の記載が追加された書類』と記載されていましたよね。実は、適格請求書には以下のように記載要件が定められているのです。

① 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
② 課税資産の譲渡等を行った年月日
③ 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(課税資産の譲渡等が軽減対象資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象資産の譲渡等である旨)
④ 課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額及び適用税率
⑤ 税率ごとに区分した消費税額等
⑥ 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
引用元:国税庁|適格請求書の記載事項|63ページ目(2023年5月12日時点)

上記を満たしていない書類は、適格請求書として認められないか、適切な仕入税額控除を受けられません。そうなりますと取引先もしくは自社のコストが増加することを意味します。

このような事態を避けるためにも適格請求書発行事業者は、インボイス制度が始まる2023年10月1日までに、適格請求書の記載要件を各書類に必ず反映させておきましょう

記載内容に誤りがあると再交付が義務になる

もしも発行・受領・保存した適格請求書に誤りがあった場合は、以下のように再交付が義務付けられています。

適格簡易請求書は、交付した適格請求書(適格簡易請求書・適格返還請求書適を含みます。)に誤りがあった場合、修正した適格請求書を交付する必要があります。

引用元:国税庁|適格請求書等保存方式の概要|12ページ目(2023年5月12日時点)

万が一金額や端数処理方法に誤りがあった場合は、適切な控除を受けられません。そのため、このような措置が取られているのでしょう。

電子帳簿保存法の要件に則って適格請求書を保存していたとしても、記載内容が間違っていれば元も子もありません。速やかに対処をしましょう。取引先もすぐに応じてくれるハズです。

3万円未満も保存が義務化!

実はインボイス制度が始まることで、以下のように『3万円未満の課税仕入れ』でも保存が義務化されます。

現行においては、「3万円未満の課税仕入れ」及び「請求書等の交付を受けなかったことにつきやむを得ない理由があるとき」は、一定の事項を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除が認められる旨が規定されていますが、適格請求書等保存方式の開始後は、これらの規定は廃止されます。

引用元:国税庁|適格請求書等保存方式の概要|15ページ目(2023年5月12日時点)

直接的に義務とは明記されていないものの、『廃止』という言葉から察するに保存は必須です。その際は適格請求書の記載要件を満たしつつ、電子帳簿保存法における電子取引の保存要件もクリアしてくださいね。

ただし3万円未満であったとしても、以下のように例外もあります。

① 公共交通機関である船、バス又は鉄道による旅客の運送
(3万円未満のものに限ります。)
② 出荷者等が卸売市場において行う生鮮食料品等の譲渡
(出荷者から委託を受けた受託者が卸売の業務として行うものに限ります。)
③ 生産者が農業協同組合、漁業協同組合又は森林組合等に委託して行う農林水産物の譲渡
(無条件委託方式かつ共同計算方式により生産者を特定せずに行うものに限ります。)
④ 自動販売機・自動サービス機により行われる課税資産の譲渡等
(3万円未満のものに限ります)
⑤ 郵便切手を対価とする郵便サービス
(郵便ポストに差し出されたものに限ります。)

引用元:国税庁|適格請求書等保存方式の概要|13ページ目(2023年5月23日時点)

上記のケースでは保存が義務付けられていません。帳簿への記載のみで、仕入税額控除を受けることが可能です。なぜこれらが例外になるのかと言いますと、適格請求書を受け取るのが難しいケースがあるからです。

例えば自動販売機ですと、領収書やレシートの発行機能がありません。そのため商品を購入したとしても、適格請求書を受け取るのは困難ですよね。そして受け取るのが困難なのであれば、保存も難しいということ。

インボイス制度は確かに重要な制度なのですが、しかしだからといって全国各地の自動販売機に適格請求書発行機能をすべて備えるのは、コスト・労力的に現実的ではありませんよね。このような背景があるため、例外が設けられているのでしょう。担当者の方は覚えておいてくださいね。

インボイス制度と電子帳簿保存法でよくある質問

ここではインボイス制度と電子帳簿保存法に関してよくある質問を解説します。

  • 電子帳簿保存法に経過措置はありますか?
  • インボイス制度に経過措置はありますか?
  • e文書法とはなんですか?

電子帳簿保存法に経過措置はありますか?

電子帳簿保存法に経過措置はあります。2022年1月から2023年12月31日までの約2年間が電子帳簿保存法の経過措置となります。

電子取引の取引情報に係る電子データの保存に関する当面の宥恕措置として、令和4年1月1日から令和5年 12 月 31 日までの間に申告所得税及び法人税に係る保存義務者が行う電子取引につき、その電子取引の取引情報に係る電子データを保存要件に従って保存をすることができなかったことについて、納税地等の所轄税務署長がやむを得ない事情があると認め、かつ、その保存義務者が税務調査等の際にその電子データの出力書面(整然とした形式及び明瞭な状態で出力されたものに限る。)の提示又は提出の求めに応じることができるようにしている場合には、その保存要件にかかわらず、その電子データの保存をすることができることとする経過措置が講じられたものです。

引用元:国税庁|電子帳簿保存法一問一答 |35ページ目(2023年5月12日時点)

上記のとおり、期限まで残り約半年です(現在5月12日)。猶予期間はほぼありません。この記事を読んだ方は、今のうちに電子帳簿保存法に対応する準備を進めた方が良いでしょう。

インボイス制度に経過措置はありますか?

電子帳簿保存法と同様に、インボイス制度にも経過措置があります。現時点では2023年10月1日から2029年9月30日までがインボイス制度の経過措置期間に該当します。

詳しくは以下のとおり。

適格請求書等保存方式(以下「インボイス制度」といいます。)開始後、6年間(令和5年10月から令和11年9月までの間)は、免税事業者等からの課税仕入れについて、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除できる経過措置が設けられています。
なお、この経過措置による仕入税額控除の適用に当たっては、免税事業者等から受領する区分記載請求書等と同様の事項が記載された請求書等の保存とこの経過措置の適用を受ける旨(80%控除・50%控除の特例を受ける課税仕入れである旨)を記載した帳簿の保存が必要です。
この経過措置を適用できる期間等は、次のとおりです。
・ 令和5年10月1日から令和8年9月30日までは仕入税額相当額の80%
・ 令和8年10月1日から令和11年9月30日までは仕入税額相当額の50%

引用元:国税庁|お問合せの多いご質問(令和5年4月14日掲載)|1ページ目(2023年5月12日時点)

インボイス制度は2023年10月1日に導入されるのですが、2026年9月30日までは仕入税額相当額の80%、2026年10月1日から2029年9月30日までは50%が控除になります。それ以降は記載がない、つまり2029年10月1日以降は控除なしになることが予想されますね。

そもそもインボイス制度が導入されますと、今までは免税事業者だった企業・個人事業主も、適格請求書発行事業者になることで納税義務が発生します。そうなれば、利益は実質的に数十万円低下することでしょう。このような事態を危惧する事業者にもインボイス登録をしてもらえるよう、上記のような経過措置が取られているのかもしれません。

2023年10月1日に免税事業者から登録事業者になる予定の方は、この経過措置期間中に納税額をカバーするほどの売上を上げられるよう努める必要が出てきます。厳しいかもしれませんが、頑張って乗り越えましょう。

e文書法とはなんですか?

e文書法とは簡単に言いますと紙で保存する必要があった書類を、電子データで保存することを認めた法律のことです。

民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律(以下「e-文書法」という。)は、民間事業者が行う文書の保存、作成、閲覧等について、原則として電磁的記録によることを可能とするもの。

引用元:国税庁|民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う省令の整備について(2023年5月12日時点)

そうなりますと「電子帳簿保存法と同じだ」と思うかもしれませんが、実は少しだけ異なります。対象となる書類が、e文書法の方が幅広いからです。

上記のとおり、e文書法の場合だと『民間事業者が行う文書』と記載されていますよね。そのためe文書法は税務関連の書類だけでなく、その他保存義務のある文書も対象となります。

代表例でいえば、取締役会議事録・医療カルテなどが該当しますね。今でこそこのような書類も電子保存されるのが一般的になりましたが、それはe文書法のおかげであり、電子帳簿保存法は関係ありません。

電子帳簿保存法は『帳簿』の名のとおり、あくまで税務関連の書類保存に特化した法律です。ここに両者の違いがあるといえます。

e文書法と電子帳簿保存法は確かに似た存在なのですが、厳密には別物であることを覚えておきましょう。

まとめ インボイス制度と電子帳簿保存法は関係が深い

ここまでインボイス制度・電子帳簿保存法の解説をしてきました。インボイス制度は2023年10月1日に導入され、電子帳簿保存法は2024年1月に義務化されます。そのため、それぞれへの対応を今のうちに進める必要があります。現場が混乱しないように、保存方法や管理体制を早い内に確立・共有することが重要です。

なお電子データを保存する際は、ぜひ弊社のDenHoをご利用ください。弊社のDenHoであれば、AIが帳票を自動区分けしてくれます。データを手動入力する必要はありません。

それだけでなく、DenHoは各データにタグ付けすることも可能。よりスムーズな検索ができます。検索要件が定められている電子帳簿保存法に対応する際、DenHoはまさにピッタリのシステムとなっております。ぜひご検討ください。

インボイス制度対応電子帳簿保存システムDenHo

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