支払通知書とは?請求書との違い・発行(作成)するメリット・記載項目を解説

「支払い通知書って何だろう?」
「支払い通知書には何を書けばいいのだろうか」

支払い通知書を取り扱う際、このような疑問を思い浮かべることがあるかもしれません。支払い通知書とは簡単に言いますと、発注者が受注者に対して、支払い意思があることを通達する文書を指します。そのため支払通知書には金額や取引日などを記載するのが一般的です。

支払い通知書には発行義務がありませんが、取引先に要求をされることも考えられます。これを機に、記載事項や保存期間を覚えておくのが良いでしょう。

そこでこの記事では、支払い通知書の基本情報だけでなく、請求書との違い・メリット・株や投資における支払通知書のことを解説します。この記事を読むことで、支払通知書における要点を理解できます。ぜひご参考ください。

支払通知書とは?必要性や保存期間を解説

ここでは支払通知書について、以下を解説します。

  • 支払通知書とは
  • 支払通知書の必要性
  • 支払通知書の保存期間

支払通知書とは

支払通知書とは代金を支払う側(発注者)が代金を受け取る側(受注者)に対して、支払うことが確定している取引において、支払い意思があることを通達する書類のことです。取引で交付される支払通知書には、契約内容や支払額などの詳細がまとめられています。

支払通知書は企業同士の取引だけでなく、企業と個人・個人と個人で取引が行われる際にも発行されることがあります。副業などにて発注先から支払通知書が届いた際は、契約内容や金額に齟齬がないか、請求書を作成する前に明細をよく確認しておくようにしましょう。

なお、ビジネスシーンにおける支払通知書は、商品やサービスの納品が完了した時点で交付するのが基本です。契約内容によっては1ヵ月ごとに交付される場合もあるので、明細はその都度確認する必要があります。

支払通知書の必要性

支払通知書の必要性はそれほど高くありません。なぜそのようなことが言えるのかと言いますと、支払通知書には発行義務がないからです。

そもそも、支払通知書は支払いを行う前に発行するものです。つまり、実際にはまだ支払っていないということ。そのため支払通知書には、領収書やレシートのような『支払いを証明する』という役割がありません。そのこともあり、必然的に支払通知書の必要性は低くなっています。

しかしそんな支払通知書にも発行するメリットはあります。メリットに関しましては後述しますね。

支払通知書の保存期間

支払通知書は、法人か個人かで保存期間が異なります。
法人の場合、支払通知書の保存期間は確定申告の提出期限翌日からの7年間です。記帳・帳簿などの保存について国税庁は以下のように明記しています。

法人は、帳簿(注1)を備え付けてその取引を記録するとともに、その帳簿と取引等に関して作成または受領した書類(注2)を、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間(注3)保存しなければなりません。

(注1)「帳簿」には、例えば総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳、売掛金元帳、買掛金元帳、固定資産台帳、売上帳、仕入帳などがあります。
(注2)「書類」には、例えば棚卸表、貸借対照表、損益計算書、注文書、契約書、領収書などがあります。
(注3)青色申告書を提出した事業年度で欠損金額(青色繰越欠損金)が生じた事業年度または青色申告書を提出しなかった事業年度で災害損失金額が生じた事業年度においては、10年間(平成30年4月1日前に開始した事業年度は9年間)となります。

引用元:国税庁|No.5930 帳簿書類等の保存期間(2023年9月5日時点)

ケースによって9~10年にもなりますが、基本的には7年間と覚えておくのが良いでしょう。

その一方で個人事業主の場合の保存期間は、5年間です。個人で事業を行っている人の書類の取り扱いについて、国税庁では以下のように解説しています。

種類 保存期間5年 保存期間7年
青色申告 取引に関して作成し、又は受領した上記以外の書類(請求書、見積書、契約書、納品書、送り状など) 仕訳帳
総勘定元帳
現金出納帳
売掛帳
買掛帳
経費帳
固定資産台帳
損益計算書
貸借対照表
棚卸表
領収証※1
小切手控※1
預金通帳※1
借用証※1
など
白色申告 業務に関して作成した右記以外の帳簿(任意帳簿)
決算に関して作成した棚卸表その他の書類
業務に関して作成し、又は受領した請求書、納品書、送り状、領収書などの書類
収入金額や必要経費を記載した帳簿(法定帳簿)

引用元:国税庁|記帳や帳簿等保存・青色申告(2023年9月12日時点)

※1:前々年分の事業所得及び不動産所得の金額が300万円以下の方は、5年

青色申告・白色申告にせよ、支払通知書が該当するのは5年間になります。該当する保存期間まで、大切に保管してください。

なお支払通知書を電子保存するのであれば、DenHoをお使いください。DenHoであれば電子帳簿保存法に対応した電子保存を簡単に実現できます。ご検討ください。

支払通知書・請求書・明細書の違いを解説

ここからは支払通知書と請求書・明細書の違いについて解説いたします。

  • 支払通知書と請求書の違い
  • 支払通知書と明細書の違い

請求書と明細書の違いが気になっている方は、参考にしてみてください。

支払通知書と請求書の違い

支払通知書と請求書の違いは、以下の2つです。

支払通知書 請求書
発行者 発注者 受注者
目的 支払い内容を受注者に通知 商品やサービスの代金を発注者に請求

支払通知書は発行者が発注者で、商品製造やサービス提供の受注者に対して支払いの意思や内容を通知する書類になります。請求書は発行者が受注者で、作業や商品を製造した後に発注者に対して請求する書類です。

支払通知書と請求書はお互いの金額のズレをなくすときに役立つため、発行者や目的を理解して取引相手に提出しましょう。

支払通知書と明細書の違い

支払通知書と明細書の違いは、以下の2つです。

支払通知書 明細書
発行者 発注者 受注者
目的 支払い内容を受注者に通知 作業や商品に対する詳細

支払通知書は受注者に対して取引による代金が確定した内容を記載し、支払う意思を通知する書類になります。明細書は発注者に対して作業や商品に対する詳細を記載し、提供した内容を理解してもらうための書類です。

記載内容が支払通知書と明細書では異なるため、理解したうえで取引相手に書類の提出をしてください。

支払通知書を発行(作成)するメリットを解説

支払通知書を発行・作成するメリットは、以下の2つです。

  • 支払いにおけるトラブルを防止できる
  • 業務効率化を期待できる

それぞれのメリットについて解説いたしますので、支払通知書の発行を検討している人は確認してみてください。

支払いにおけるトラブルを防止できる

支払通知書を発行するメリットでまず挙げられるのは、支払いにおけるトラブルを防止できる点です。

支払通知書は取引が発生する前に、具体的な取引内容や代金を相手に知らせる(確認する)書類になるため、間違っていた場合は指摘を受けられます。

例えば発注側は税込価格だと考えていたとしても、受注側は税別だと思っていると支払いにおけるトラブルに発展する可能性があります。しかし支払通知書を提示するとお互いの納得した条件のもとで取引が可能であり、間違いや思い違いを回避できるでしょう。

支払通知書の発行は、取引相手との良好な関係を築く際に役立つでしょう。

業務効率化を期待できる

メリットとして、業務効率化を期待できる点も挙げられます。

支払通知書を作成して提出すると、双方の思い違い・間違いを未然に防げるため、経理業務の負担を減らすことが可能です。

例えば支払い金額を振込した後に間違いが発覚した場合は、確認・再振込の手間がかかります。経理業務の負担になってしまうので、最終的な業務効率が低下するでしょう。

支払通知書はトラブルを防げるだけでなく、経理業務の負担を減らして効率化を図れる書類になるため、メリットが大きいです。請求時にトラブルが多い場合は、請求書を発行する前に支払通知書を発行・送付してもらうと良いでしょう。

支払い前ということもあり、齟齬があったとしても円滑に対応できるハズです。

発行日など!支払通知書の書き方(記載項目)は?

ビジネス版の支払通知書の記載項目は、下記の10点を忘れずに記載しましょう。

  • タイトル
  • 受注者情報
  • 発注者情報
  • 発行日
  • 取引日
  • 支払通知額
  • 取引内容
  • 小計
  • 合計金額
  • 備考欄

各記載項目について解説いたしますので、支払通知書の作成を考えている人はチェックしてみてください。

タイトル

支払通知書に記載する項目でかかせないのが、タイトルです。

タイトルが記載されていない場合は、発注者がわかったとしても受注者はどのような書類なのかわかりません。

書類を作成する際には、書類上の一番上の部分に中央に寄せて、支払通知書と記載します。他にも受注者・発行者ともに管理がスムーズに行えるように、取引した年月を記載するのもおすすめです。

どのような書類なのか把握してもらうためにも、忘れずにタイトルは記載しましょう。

受注者情報

受注者情報も、支払通知書に記載するべき項目の1つです。

受注者情報は取引相手の内容について記載し、支払通知書を出している相手が間違っていないか確認してもらう部分になります。

受注者情報を記載する場合は、略称などは使わずに企業名や個人事業主名を記載しましょう。さらに敬称として御中を記載してください。個人事業主に送る場合は、相手を様付けにして、屋号がある場合は一緒に記載しましょう。

受注者情報はタイトルや取引日の下に位置し、左詰めで記載しましょう。インボイス制度を利用する際には受注者にTから始まる登録番号の記載が必要になるため、忘れないようにしてください。

発注者情報

支払通知書を発行する発注者情報も、記載項目に入ります。発注者情報を記載すると受注者は、どの企業に対する支払通知書なのか把握できるでしょう。

発注者情報は下記の4つを記載してください。

  • 企業名もしくは屋号
  • 住所
  • 電話番号
  • メールアドレス

連絡先を入れると、不備があった際に受注者は発注者に連絡を取りやすくなるでしょう。

発行日

支払通知書には、発行日が必要です。発行日を記載しておくことで、後日取引内容を見返す際に役立ちます。

発行日は年月日まで記載しておくと管理しやすく、振り返る際に時系列で追いやすいでしょう。支払通知書を発行する際には、発行日も忘れずに記載してください。

取引日

支払通知書の記載項目では、取引日の記載も必要です。

いつ取引した内容に対する支払通知書なのか双方が把握しやすく、思い違いなどのトラブルを防げます。取引日を記載する際には取引内容ごとに分けて、細かく書きましょう。各取引内容が決まった後に支払通知書を作るため、発行日より前の月日になります。

双方の取引内容に対する支払いの理解一致を図るためにも、取引日は細かく明記しておきましょう。

支払通知額

支払通知額は事前合意した金額を支払通知書に記載します。

支払通知書を発行するうえで重要な部分で、消費税を合わせた取引に対する総額を明記してください。記載する位置は発注者情報の下、取引内容の上の部分に記載するとわかりやすいでしょう。相手にわかりやすくするためにも、フォントを他の記載項目と比べて少し大きくするのもおすすめです。

お互いがスムーズに支払通知書の内容を理解するために、支払通知額はわかりやすく記載しましょう。

取引内容

支払通知書を発行する際には、取引内容も詳しく記載してください。取引内容は内容ごとに1つ1つ詳しく書くことを意識しましょう。

例えば商品の取引に関する支払通知書の場合は、取引内容も◯月分取引と書くのではなく、商品A・商品Bなど詳しく書くことで各項目に対する金額がわかりやすくなります。

支払いに関するトラブルを未然に防ぐためにも、支払い通知書には取引ごとに分けた取引内容の記載が必要です。

小計

支払通知書は、小計欄も設けて発行しましょう。

小計欄を設けることで、商品に対する合計と消費税額の合計を把握できます。小計欄を設けるのに併せて、取引内容ごとの金額は税別表記にする点も忘れないようにしてください。

消費税額と商品やサービスに対する金額がわかりやすいため、小計は支払通知書に入れて発行しましょう。

合計金額

支払通知書の記載項目は、合計額を記載するようにしましょう。

合計金額は支払通知額と合うかの確認が必要です。消費税の小計と商品・サービスの小計を足した際に合計額が支払通知額とあっていると間違いないでしょう。合計金額が間違っていると、再度発行の手間などが必要になるため注意してください。

備考欄

備考欄の記載も支払通知書には欠かせません。支払通知書に備考欄を入れると、連絡事項など伝えたい内容がある場合に活躍します。相手にわかりやすい支払通知書を作成して提出するためにも、備考欄は設けるようにしてください。

株や投資にも支払通知書がある!

実は支払通知書はビジネスだけでなく、株や投資でも扱われます。そこでここでは、株や投資における支払通知書の解説をします。

  • 株式や投信信託における支払通知書とは
  • 上場株式配当等の支払通知書とは
  • オープン型証券投資信託収益の分配の支払通知書とは
  • 配当等とみなす金額に関する支払通知書とは

株式や投信信託における支払通知書とは

株式や投資信託では信託銀行や証券会社が顧客に対して、支払った1年分の配当金などの明細や支払日などを記載した支払通知書を交付しています。大手証券会社のSMBC日興証券では、支払通知書について以下のように記載していました。

支払通知書とは、上場株式等の配当等や公社債等の利子等について記載して、顧客(投資家)に交付される書類です。 ただし、「源泉徴収ありの特定口座」に受け入れた配当等や利子等については、別途、それらの明細を記載した特定口座年間取引報告書が交付されるので、支払通知書は交付されません。なお、「株式数比例配分方式(配当金受取サービス)」を利用していない国内上場株式等の配当等については、信託銀行などから支払通知書が交付されます。

引用元:SMBC証券|支払通知書(2023年9月5日時点)

支払通知書に記載されている内容を見れば、受け取った配当金などをまとめてチェックできます。証券会社や信託銀行から支払通知書が交付された際は、入金額と相違がないか必ず目を通してください。

上場株式配当等の支払通知書とは

上場株式配当等の支払通知書には、1年間で受け取った配当金や利子などの明細が記載されています。SMBC日興証券では以下のように説明しています。

「上場株式配当等の支払通知書」は、当社において交付された上場株式等の配当等に関する明細を記載した通知書で、税法に基づき当社が作成し、お客様に交付させていただくものです。

ただし、「源泉徴収ありの特定口座」に受け入れた配当等につきましては、別途、上場株式等の配当等に関する明細を記載した「特定口座年間取引報告書」がお客様に交付されますので、「支払通知書」は交付されません。
なお、「株式数比例配分方式(配当金受取サービス)」を利用していない国内株式等の配当等につきましては、信託銀行等から「支払通知書」が交付されます。

なお、「上場株式等の配当等」については、源泉徴収による課税が行われており、原則、確定申告は不要です。
また、2016年以後は公社債の利子や公募公社債投資信託の分配金も対象となりました。

引用元:SMBC日興証券|支払通知書について(2023年9月5日時点)

支払通知書は、上場株式で配当金を受け取った際に必ず交付されるものではありません。支払通知書が交付されるのは、『源泉徴収ありの特定口座』に受け入れていない配当に対してです。『源泉徴収ありの特定口座』に受け入れた配当については、特定口座年間取引報告書が交付されます。

特定口座年間取引報告書は、1月~12月までの間に特定口座で行った取引の明細書です。すべての取引を『源泉徴収ありの特定口座』で行っている場合は特定口座年間取引報告書で明細を確認できるため、支払通知書が届かなくても問題ありません。

オープン型証券投資信託収益の分配の支払通知書とは

オープン型証券投資信託で配当の支払いがあった場合に交付される書類です。オープン型証券投資信託とは、いつでも売買できる追加型の投資信託のことです。大手証券会社の大和証券では、以下のように解説しています。

運用開始後いつでも購入可能な投資信託(ファンド)のこと。
略して「オープン型」のほか、「追加型投資信託」「追加型」ともいいます。運用期限が無期限のものと有期限のものがありますが、どちらも基準価額での追加購入や売却が可能です。

引用元:大和証券|オープン型投資信託(オープン投信)(2023年9月5日時点)

決められた募集期間しか購入できない『単位型投資信託』とは仕組みが異なるため、上場株式配当等の支払通知書とは別に支払通知書が交付されます。単位型とオープン型の両方で投資している場合は、それぞれの支払通知書で配当金を確認してください。

配当等とみなす金額に関する支払通知書とは

資本余剰金を原資とした配当金に対して交付される支払通知書です。特別口座を『源泉徴収あり・配当等受け入れなし』や『源泉徴収なし』で開設し、配当金の受取方法を『株式数比例配分方式』に設定している場合に交付されます。

上場株式等の配当金やオープン型証券投資信託収益と分けて支払通知書が交付される理由は、所得の分類が異なるからです。資本余剰金を原資とした配当金は、譲渡所得に分類されます。マネックス証券では下記のように解説しています。

配当金を受け取った場合、配当原資が「利益剰余金」であるか「資本剰余金」であるかにより、税務上の取扱いが異なります。

「利益剰余金」を原資とする配当の場合には配当所得となりますが、「資本剰余金」を原資とする配当の場合、保有株式の一部を譲渡したものとみなされるため、「みなし譲渡損益」となり、譲渡所得として計算されます。

引用元:マネックス証券|資本剰余金を原資とする配当は、通常の配当金と何が違うのですか?(2023年9月5日時点)

配当等とみなす金額に関する支払通知書は確定申告の際にみなし譲渡損益の計算に使用しますので、大切に保管しておきましょう。

まとめ|支払通知書は発行するのがおすすめ

ここまで支払通知書の解説をしてきました。支払通知書に発行義務はありませんが、メリットがあることがわかりましたね。

もしも支払い時にすれ違いやトラブルが頻繁に発生しているのであれば、支払通知書の導入を検討してみると良いでしょう。最初は面倒に感じるかもしれませんが、最終的には業務の効率化を図れるかもしれません。

なお、作成・発行した支払通知書を電子保存するのであれば、ぜひDenHoをご利用ください。DenHoであれば電子帳簿保存法に対応した電子保存を、誰でも簡単に実現できます。ぜひご検討ください。

電子帳簿保存システムDenHo
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