検収書 電子帳簿保存法

検収書は電子帳簿保存法の対象書類!納品書との違い・電子化の方法・要件を解説

「検収書を電子保存する際、電子帳簿保存法は関係してくるのかな」
「そもそも検収書って、納品書や請求書と何が違うの?」

検収書を電子化したり、取引に用いたりする場合、このような疑問が思い浮かぶかもしれません。詳しくは本文で解説しますが、まず検収書は電子帳簿保存法の対象書類です。そのため検収書を電子化するのであれば、電子帳簿保存に対応しなければなりません。

また検収書は、請求書や納品書とは異なる書類です。発行者・役割・渡すタイミングが異なるからです。検収書を取り扱うのであれば、これを機に記載項目などの基本的なことも覚えておくと良いでしょう。

そこでこの記事では検収書の基本事項はもちろん、納品書などとの違い・電子保存するメリット・電子帳簿保存法のこと・保存要件を解説します。この記事を読めば、受領した検収書を電子化させるための具体的な方法がわかります。

「検収書を電子データ化させて、業務を効率化させたい! そのために必要なことって何だろう?」と考えている方は、ぜひ読んでみてください。

検収書は電子帳簿保存法の対象書類です

まずは検収書の基本情報を解説します。

  • 検収書は電子帳簿保存法の対象書類
  • そもそも検収書とは?
  • 検収書の記載項目
  • 検収書の保管期間

検収書は電子帳簿保存法の対象書類

検収書は以下のように電子帳簿保存法の対象書類です。そもそもの話になりますが、まず検収書は以下のようにスキャナ保存※の対象になっています。

※紙の検収書を電子保存する際、機器でスキャンし検収書を電磁的記録(画像データ)として保存すること。

対象となる書類は?
取引相手から受け取った書類
自己が作成して取引相手に交付する書類の写し
(例)契約書、見積書、注文書、納品書、検収書、請求書、領収書 など

引用元:国税庁|はじめませんか、書類のスキャナ保存!(2023年7月15日時点)

上記はスキャナ保存の対象書類です。スキャナ保存は電子帳簿保存法で定められている保存区分の1つ。検収書は、そのスキャナ保存の対象になっているため、それと同時に電子帳簿保存法の対象になるというわけです。

電子帳簿保存法の対象になるということで、検収書を電子保存する際は要件を守らなければなりません。スキャナ保存の要件は後述します。

なお電子保存するのであれば、DenHoがおすすめです。DenHoであれば電子帳簿保存に対応した電子保存が可能です。タイムスタンプ機能が標準搭載されているため、ローコストで保存管理できます。ご検討ください。

そもそも検収書とは?

検収書とは受け取った商品に数量などの不備がなく、契約通りだったことを証明する書類のことです。検収書発行フローから考えると検収書がヒューマンエラーやトラブル防止につながることを理解しやすいので、1つの例を挙げて解説しますね。

まず業者はAという製品を50個発注したとしましょう。50個のA製品が納品されると、受け取り業者は検収しますよね。検収時に製品の種類・色・数量に間違いや、キズ・へこみがある場合は納品業者、または運送業者に連絡します。そして再納品を依頼するのが一般的です。

その一方で納品物に問題がなければ、検収書を発行します。検収書を発行したということは、納品業者に『発注した製品の種類・色・数が間違いないものを受領しました』ことを意味します。

ここからが本題で、万が一検収書を送付したのちに製品が壊れている・数量が不足していることが発覚した場合は、受け取り業者側で発生した事故と考えられます。なぜなら検収書が発行されていることにより、検収時点では問題がなかったことが明らかだからです。

仮に検収時点で商品に瑕疵があったのであれば、通常はその時点で指摘をするハズ。それがなかったわけですから、このように考えるのは筋が通っていますよね。このように同様の問題が発生したとしても、検収書を発行したか否かで話が変わってくるわけです。したがって検収書は、企業間のトラブルを防止する際に役立つと考えられます。

もちろん検収書を発行した後に、クレームを入れることも可能です。しかし一般的に考えますと、これは取引上におけるマナー違反とも言えるでしょう。

検収書の記載項目

検収書の項目の数や種類は法律上義務付けられていませんが、商取引上必要な項目について紹介します。

以下は検収書作成の際に、取引上必須の項目です。

  • 企業名(納品した業者、受け取り業者)
  • 受け取り業者の住所、電話番号
  • 納品日
  • 検収日
  • 検収者の氏名と押印
  • 検収した商品名
  • 受領した数量
  • 金額

これら必須項目は人為的ミスやトラブル防止に加え、トラブル発生時の迅速な対応に役立てるために必須です。以下に各項目を解説します。

企業名は納品業者と受け取り業者それぞれ必要です。加えて、納品業者が請求書を作成するときに参照できるように受け取り業者の住所、電話番号も記します。納品日は製品を受け取った日、検収日は製品の受け取りを検収した日です。

検収者の氏名と押印、検収を承認した作業者の氏名は、トラブルが発生したときに事情をスムーズにヒアリングする上でも有益です。製品名・数量・金額に基づいて納品業者は請求書を作成します。金額は会計処理にも必要です。

商取引上必要である検収書の項目を正確に記載することにより、納品業者と受け取り業者がスムーズに商取引を行えます。

検収書の保管期間

法人であれば、検収書をはじめとした帳簿書類は以下のように保存7~10年保存をしなければなりません。

法人は、帳簿(注1)を備え付けてその取引を記録するとともに、その帳簿と取引等に関して作成または受領した書類(注2)を、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間(注3)保存しなければなりません。
(注1)「帳簿」には、例えば総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳、売掛金元帳、買掛金元帳、固定資産台帳、売上帳、仕入帳などがあります。
(注2)「書類」には、例えば棚卸表、貸借対照表、損益計算書、注文書、契約書、領収書などがあります。
(注3)青色申告書を提出した事業年度で欠損金額(青色繰越欠損金)が生じた事業年度または青色申告書を提出しなかった事業年度で災害損失金額が生じた事業年度においては、10年間(平成30年4月1日前に開始した事業年度は9年間)となります。

引用元:国税庁|No.5930帳簿書類等の保存期間(2023年7月15日時点)

基本的には7年間が保存期間とされています。しかし欠損金額(簡単に言うと赤字)に該当する事業年度等の場合は9年もしくは10年になります。いすれにせよ、かなり長い期間保存をしなければならないことがわかりますよね。それ相応の数を保管しなければなりません。

ちなみに個人事業主の場合は法人とは異なり、5年間保存をしなければなりません。

青色申告の場合
取引に関して作成し、又は受領した上記以外の書類(請求書、見積書、契約書、納品書、送り状など
5年

白色申告の場合
業務に関して作成し、又は受領した請求書、納品書、送り状、領収書などの書類
5年

引用元:国税庁|記帳や帳簿等保存・青色申告(2023年7月15日時点)

ポイントは、青色申告・白色申告に関係なく保存期間が5年間になるということ。そのため法人ほどではありませんが、コチラに関しても保存期間が長くなります。1~2年で処分をしないよう、気を付けてください。

ちなみに検収書を適格請求書にする場合は、法人・個人事業主を問わず、保存期間は7年間になります。

適格請求書発行事業者には、交付した適格請求書の写し及び提供した適格請求書に係る電磁的記録の保存義務があります。(新消法57の4⑥)
この適格請求書の写しや電磁的記録については、交付した日又は提供した日に属する課税期間の末日の翌日から2月を経過した日から7年間、納税地又はその取引に係る事務所、事業所その他これらに準じるものの所在地に保存しなければなりません。(新消令70の13①)
(参考)仕入額控除の要件として保存すべき請求書についても。同様です(新消令50①)。

引用元:国税庁|5 適格請求書等の写しの保存P96 問77(2023年7月13日時点)

状況によって保存期間が変化しますので、ご注意ください。

検収書・納品書・請求書・受領書の違い

ここでは検収書・納品書・請求書・受領書の違いを解説します。

  • 検収書と納品書の違い
  • 検収書と請求書の違い
  • 検収書と受領書の違い

検収書と納品書の違い

検収書と納品書の違いは、発行する立場・タイミング・役割にあります。具体的には以下のとおり。

異なる点 検収書 納品書
発行者 発注者 受注者
役割 チェックしたことを伝える 納めたことを伝える
発行タイミング 検収後 納品後

上述しましたように、検収書とは読んで字のごとく『納品された商品の確認が完了し、問題がなかったことをサービス提供者に伝える書類』を指します。簡単に言いますと、文書で「先日に納品された商品を弊社でチェックしたところ、注文通りでした!」と伝えるイメージです。検収で問題点が見つからなかった場合、通常はそのまま支払いフェーズに移行します。

その一方で納品書は『先日に注文された商品を納めたことを、発注者に対して正確に伝える書類』を指します。納品書を提示することで『何を・いつ・どれぐらい・いくらで・誰に』納めたのかが明確になります。そのため納品書は、検収書の1つ前に発行される書類というイメージになります。

このように検収書と納品書は、発行者・役割・タイミングが異なります。これが両者の違いです。

検収書と請求書の違い

検収書と請求書の違いも3つあります。詳細は以下のとおりです。

異なる点 検収書 請求書
発行者 発注者 受注者
役割 チェックしたことを伝える 請求内容を伝える
発行タイミング 検収後 納品後

まず検収書は、納品された商品の確認が完了したことを意味します。「これでOKです!」と、書面にて断言するということですね。

他方で請求書とは『商品やサービスの料金支払いを指定期日までに請求する書類』を指します。請求書を発行することで、受注者は発注者に対して請求内容の正当性を伝えることが可能です。請求書には数量や単価なども記載されているからです。

事前に発行していた見積書との間に相違点がなければ、発注者は請求書の内容に納得します。その結果、滞りなく支払ってもらえるでしょう。

また請求書の発行タイミングは社内規則にもよりますが、基本的には納品後になります。ただし業務手順を複雑化させないようにするため、商品を渡すと同時に請求書も送ってしまうケースも考えられます。

もちろん納品物に問題があれば、請求書を送ったとしても料金を支払ってもらえません。「検収したけど、納品物が注文内容と違うから支払えません」と発注者から言われてしまうイメージですね。この場合は注文内容を再確認し、再納品することになります。そして発注者からOKをもらい次第、請求書を再発行する流れになります。

このように検収書と請求書は、発行者・役割・発行タイミングが異なります。覚えておきましょう。

検収書と受領書の違い

ややこしいところですが検収書と受領書の違いは、各書類の役割とタイミングにあります。

詳しくは以下のとおり。

異なる点 検収書 受領書
役割 チェックしたことを伝える 受け取ったことを伝える
発行タイミング 検収後 受領後(納品後)

何度も言いますが、検収書は受け取った商品の確認が済み、問題がなかったことを伝える書類です。

その一方で受領書とは『商品を確かに受け取りました』ことを示す書類です。要は「まだ詳しくチェックしていませんが、○○を、○○日に受け取りました」というイメージですね。受領書を発行すれば、とりあえず商品が無事に届いたことだけを、発注者に伝えることができます。

もちろんこの時点だとチェックはまだ完了していませんよね。そのため検収段階で「確かに商品は届いたけど、傷だらけじゃないか……」という事態もあり得ます。そうなれば検収に不合格ということで、返品および再納品を依頼されることになるでしょう。

このように検収書と受領書は発注者が同じなのですが、各役割とタイミングがまったく異なります。社内規定にもよりますが検収書を発行するのであれば、受領が完了したことは電話もしくはメールで簡単に伝えた方が良いかもしれません。

業務効率化!検収書を電子保存するメリット

検収書を電子保存するメリットは以下のとおりです。

  • 業務を効率化できる
  • 探し出しやすくなる
  • コストを削減できる

業務を効率化できる

検収書を電子保存することは業務効率化につながります。紙ベースの検収書は作成・整理・保管に時間と労力がかかりますが、PCの中で検収書を作成してメールで送信すると業務効率を上げることできます。

例えば印刷版の検収書の発行には以下のような段階があり、たくさんの手間がかかります。

  • PCで検収書を作成
  • 印刷
  • 担当者押印
  • 社印押印
  • 郵送

紙ベースの検収書を受領した業者も以下のような業務が必要です。

  • 受け取った封筒を開封
  • 紙ベースの検収書をPCで入力する

検収書を郵送すると物理的な距離によって運送時間がかかりますし、ときには配達の状況が天候、交通状況にも左右されてしまいますよね。しかし電子化およびメールで送信すると、郵送と比べてタイムラグもなくなります。この迅速性は、ビジネスにおいて大きな利点です。

さらに電子化をすることにより、封筒や用紙、輸送にかかわる二酸化炭素の排出量の削減にも一役買えます。環境に配慮した企業として地球環境にも貢献することが可能です。

それだけでなく、今まで検収書発行・発送・受領にかかっていた業務を効率化できるので必要なところに人材・資金の投入を可能にします。今ある人的リソースを最大限活用したいのであれば、利益に対する生産性がほぼない単純業務を効率化できる電子保存が、やはりおすすめです。

なお検収書を電子保存するのであればDenHoがおすすめです。DenHoであれば、アップロードするだけで帳票内にある画像の文字をテキストデータへ変換することが可能です。この際手動入力の必要がなくなりますので、さらなる業務効率化を図れます。ぜひご相談ください。

探し出しやすくなる

検収書を電子保存すると探し出しやすくなります。スキャナ保存したファイルの名称を取引先名などにしておけば、検索にヒットするからです。

そもそも検収書を探すとなりますと、膨大な文書の中から探すことになります。これでは時間がかかってしまいますよね。

しかし検索機能を用いることで、わずか数秒で探し出すことが可能です。検索機能の入力欄に取引先名などを入力、クリックすれば対象の検収書が表示されます。

保存されている検収書の数が多ければ多いほど、時間短縮効果は大きくなることでしょう。業務の大幅な効率化を図れます。

なお検収書を電子保存するのであればDenHoがおすすめです。DenHoであれば全文検索機能もありますので、対象の検収書をよりスムーズに探し出せます。ご検討ください。

コストを削減できる

検収書を電子保存するとコストを削減できます。検収書を電子的に保存することにより郵送費用や封筒・紙代・印刷代などのコストを削減が可能です。

例えば郵送費についていえば、1件であれば気にならないものも何十、何百件となるとコストがかさみますよね。封筒や用紙は1つの取引先に送るために、1つの封筒と一式の書類を用意することになります。

しかし電子化により、このような手間はなくなります。それだけでなく封筒の中に書類を入れていくなどの作業にかかる人件費も削減可能です。また、検収書を電子化することにより印刷機のメンテナンスの頻度を下げ、インク仕入れのコストも抑えることができます。

したがって検収書を電子化することにより大幅なコスト削減が可能です。

2023年にまた改正!電子帳簿保存法を守ろう

ここで一度、電子帳簿保存法の解説をします。

  • そもそも電子帳簿保存法とは?
  • 電子帳簿保存法は2022年に改正されました
  • 令和5年税制改正に伴い一部内容が変化

そもそも電子帳簿保存法とは?

電子帳簿保存法とは、以下のように国税関係帳簿書類の電子保存を可能とする法律のことです。

電子帳簿保存法は、税務関係帳簿書類のデータ保存を可能とする法律

引用元:国税庁|電子帳簿等保存制度特設サイト(2023年7月15日時点)

電子帳簿保存法が制定されるまでは、紙による保存がマストでした。そのため電子的に作成・授受した国税関係帳簿書類は、そのたびに紙に出力・ファイリング・保存・廃棄する必要がありました。コレはどう考えても非効率ですよね。

そんなこともあり、政府のもとには関係各界から電子保存認可の要望が来ていたとのこと。

高度情報化・ペーパーレス化が進展する中で、会計処理の分野でもコンピュータを使用した帳簿書類の作成が普及してきており、経済界をはじめとする関係各界から、帳簿書類の電磁的記録(いわゆる電子データ)及びマイクロフィルムによる保存の容認について、かねてから強い要望が寄せられていました。
政府においては、こうした要望を受けとめ、規制緩和推進計画等の閣議決定、緊急経済対策、市場開放問題苦情処理対策本部決定等において、平成9年度末までに、帳簿書類の電磁的記録等による保存を容認するための措置を講ずることを決定していました。
このような関係各界からの要望や政府全体としての取組を踏まえ、平成10年度税制改正の一環として、適正公平な課税を確保しつつ納税者等の帳簿保存に係る負担軽減を図る等の観点から、国税関係帳簿書類の電磁的記録等による保存制度等の創設等が行われました。

引用元:国税庁|制度創設等の背景(2023年7月15日時点)

平成9年は1997年ですので、26年も前のことですね。ちょうどパソコン・インターネットが日本で普及し始めた頃と推測できます。上記資料に記載されている『強い要望』という言葉から察するに、このタイミングで電子情報を取り扱う必要性と重要性が、多くの業界で認識されだしたのでしょう。

その結果、1998年(平成10年)に電子帳簿保存法が制定されたわけです。今では当たり前のように検収書を電子保存していますが、ココに至るまでにこのような背景があったのですね。

そんな電子帳簿保存法ですが、時代の流れや情勢によってたびたび改正されています。次からは直近の改正内容2つを解説しますね。

電子帳簿保存法は2022年に改正されました

電子帳簿保存法は2022年に改正されています。詳しくは以下のとおり。

電子帳簿保存法保存区分 2022年改正の内容
電子帳簿等保存 1.税務署長の事前承認制度が廃止
2.優良な電子帳簿に係る過少申告加算税の軽減措置を整備
3.最低限の要件を満たす電子帳簿についても、電磁的記録による保存が可能
スキャナ保存 1.税務署長の事前承認制度が廃止
2.適正事務処理要件が廃止
3.タイムスタンプの要件が緩和
4.検索要件が緩和
5.不正があった場合の重加算税の加重措置を整備
電子取引データ保存 1.タイムスタンプの要件が緩和
2.検索要件が緩和
3.電子データでの保存が義務化
4.申告漏れ等に課される重加算税が10%加重される措置を整備

引用元:国税庁|電子帳簿保存法が改正されました(2023年7月15日時点)

保存区分によって改正内容が若干異なります。この中でも検収書に特に関係があるのは、スキャナ保存と電子取引データ保存の2つ。

スキャナ保存においては、『税務署長の事前承認制度が廃止』とされています。事前承認のための準備や手続きが省略されたということ。その分『スキャナ機器探し』などといった、本当にすべきことに時間や人員をかけられるようになりました。

電子取引データ保存に関しましては、なんといっても『電子データでの保存が義務化』されたことが最大のポイントです。例えばPDF化された検収書を、取引先から電子メールの添付ファイルとして受け取ったとしますよね。すると、その検収書は紙に出力して保存することが認められません。必ず電子データのまま保存をしなければならないのです。

もちろん、このとき単に電子保存をするだけではダメ。スキャナ保存と同様に、電子取引データ保存にも要件が定められているからです。肝心の保存要件は後述します。

令和5年税制改正に伴い一部内容が変化

2022年に改正された電子帳簿保存法なのですが、実はその1年後、令和5年税制改正に伴いもう一度改正されました。詳細は以下のとおりです。

電子帳簿保存法保存区分 令和5年度税制改正大綱の内容
電子帳簿等保存 1.「優良な電子帳簿に係る過少申告加算税の軽減措置」となる書類の見直し。※1
スキャナ保存 1.解像度・階調・大きさに関する情報の保存が不要。※2
2.入力者等情報の確認要件が不要。
3.帳簿との相互関連性の確保が必要な書類が重要書類※3に限定。
電子取引データ保存 1.検索機能が不要とされる対象者の範囲が、基準期間(2課税年度前)の売上高が「1,000 万円以下」の保存義務者から「5,000 万円以下」の保存義務者に拡大。
2.対象者に「電子取引データをプリントアウトした書面を、取引年月日その他の日付及び取引先ごとに整理された状態で提示・提出することができるようにしている保存義務者」が追加。
3.入力者等情報の確認要件が不要。
4.令和4年度税制改正で措置された「宥恕措置」は、適用期限(令和5年 12 月 31 日)をもって廃止。
5.改ざん防⽌や検索機能など保存時に満たすべき要件に沿った対応は不要となり、電子取引データを単に保存しておくことができる。※4

引用元:国税庁|電子帳簿保存法の内容が改正されました〜令和5年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しの概要〜(2023年7月15日時点)
※1:具体例として、仕訳帳・総勘定元帳・売上帳・仕入帳・売掛帳・買掛帳・貸付帳・固定資産台帳などが軽減措置の対象に挙げられます。
※2:スキャナで読み取る際に守らなければならない解像度(200dpi 以上)や階調(原則としてカラー画像)などの要件自体に変更はありません。
※3:契約書・納品書・請求書・領収書など、資金やモノの流れに直結・連動する書類のこと。対する見積書や注文書などは、一般書類に分類されます。
※4:宥恕措置の内容が電子帳簿保存法の本則(82ページ|(3)の②)に盛り込まれ、条件を満たせば2024年1月1日以降も、電磁的記録を紙に出力して保存することが認められました。

『入力者等情報の確認要件が不要』など、基本的には緩和されていることがわかります。その中でも注目すべきは、電子取引データ保存の『電子取引データを単に保存しておくことができる』です。わかりにくい表現なのですが、要は紙に出力して『単に保存する』ことが認められたのです。

2022年の改正では『電子取引においては電子データでの保存が義務』だったのに、その1年後には『紙に保存してもOK』と、話が180度変わったということですね。紙に主力してファイリング・保存することがメインの企業にとっては、ありがたい変更点かもしれません。

ただし紙に出力して保存することが認められるのは、以下2点両方に該当するケースのみです。

イ:保存時に満たすべき要件に従って電子取引データを保存することができなかったことについて、所轄税務署⻑が相当の理由があると認める場合(事前申請等は不要)
ロ:税務調査等の際に、電子取引データの「ダウンロードの求め」及びその電子取引データをプリントアウトした書面の提示・提出の求めにそれぞれ応じることができるようにしている場合

引用元:国税庁|電子帳簿保存法の内容が改正されました〜令和5年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しの概要〜(2023年7月15日時点)

どの企業でも好きなように紙に出力して保存できるわけではないということ。特にイの『所轄税務署⻑が相当の理由があると認める場合』の具体例が、今のところまだ明示されていません。

そのため税務調査時に『貴社の場合だと紙保存は認められません』と、急に言われてしまうおそれがあります。このリスクを考えますと、やはり基本的には電子保存した方が良いでしょう。今のうちに検収書の電子保存の準備を進めてくださいね。

要対応!検収書を電子保存する方法と要件

検収書の電子保存方法を解説します。

  • 紙で受け取った検収書はスキャナ保存
  • 電子的に受け取ったら電子取引データ保存

紙で受け取った検収書はスキャナ保存

紙で受け取った検収書をスキャナ保存する場合、以下の要件を守らなければなりません。

 入力期間の制限

  • 解像度200dpi以上で読み取る
  • カラー画像(赤・緑・青それぞれ256階調【約1677万色】以上)※1
  • タイムスタンプの付与※2
  • ヴァージョン管理
  • スキャン文書と帳簿との相互関連性の保持※3
  • 見読可能装置(14インチ以上のカラーディスプレイなど)の備付け
  • 電子計算機処理システムの開発関係書類などの備付け
  • 検索機能の確保

参考:国税庁|はじめませんか、書類のスキャナ保存!(2023年7月8日時点)
参考:国税庁|電子帳簿保存法の内容が改正されました〜令和5年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しの概要〜(2023年7月15日時点)
※1:一般書類(見積書・注文書などのように、資金や物の流れに直結・連動しない書類)は、グレースケール(白黒)で保存可能。
※2:入力期間内にその国税関係書類に係る記録事項を入力したことを確認できる場合は、このタイムスタンプの付与要件に代えることが可能。ただし、認定タイムサーバーから時刻を取得する第三者の運営するクラウドサービスのみ、タイムスタンプがなくてもOK
※3:一般書類をスキャナ保存する場合については、相互関連性の確保が不要

タイムスタンプなどで、スキャナ保存した検収書の信用性を確保しなければなりません。これを『真実性の確保』と言います。例えば電子保存されていたとしても、それが改ざんだらけの検収書では税務調査の役に立ちませんよね。そのような不正を防ぐために、タイムスタンプなどが義務付けられているわけです。

もちろん検収書に必要なのは真実性の確保だけではありません。電子保存されている検収書を、任意のタイミングで表示・プリントアウトして提出できるようにしておかなければなりません。これを『可視性の確保』と呼びます。

なぜこのようなルールがあるのかと言いますと、仮に真実性を確保して保存をしていたとしても、それを税務職員に提示できなければ意味がないからです。下手をすると「そのような検収書は存在しない」と判断され、虚偽申告とみなされてしまうかもしれません。

このよう事態を回避するためにも検収書をスキャナ保存した際は、該当書類が検索にヒットするかを確認してくださいね。そして、正常にプリントアウトできるかまで確認してください。事前に一通り確認しておけば、税務調査時に慌てることがなくなります。

電子的に受け取ったら電子取引データ保存

先ほど触れましたように電子的に受け取った検収書は、電子取引データ保存の要件に沿って電子保存をしなければなりません。詳しくは以下のとおり。

真実性の確保
以下の措置のいずれかを行うこと。
1.タイムスタンプが付された後、取引情報の授受を行う
2.取引情報の授受後、速やかに(又はその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに)タイムスタンプを付す
3.記録事項の訂正・削除を行った場合に、これらの事実及び内容を確認できるシステム又は記録事項の訂正・削除を行うことができないシステムで取引情報の授受および保存を行う
4.正当な理由がない訂正・削除の防止に関する事務処理規定を定め、その規定に沿った運用を行う

可視性の確保
1.保存場所に、電子計算機(パソコン等)、プログラム、ディスプレイ、プリンタ及びこれらの操作マニュアルを備え付け、画面・書面に整然とした形式及び明瞭な状態で速やかに出力できるようにしておくこと
2.電子計算機処理システムの概要書を備え付けること
3.検索機能を確保すること

参考:国税庁|電子帳簿保存法が改正されました|4ページ目(2023年7月15日時点)
参考:国税庁|電子帳簿保存法の内容が改正されました〜令和5年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しの概要〜(2023年7月15日時点)

基本的にはスキャナ保存と同様に、真実性および可視性の確保がマスト。真実性の確保に関しては、どれか1つでも条件を満たせば問題ありません。タイムスタンプを付与できる、もしくは訂正や削除の履歴を残せる電子保存システムを導入すれば、条件をクリアできます。

検索機能に関しましては、以下の条件を満たす必要があります。

①改正後、記録項目は取引年月、取引金額、取引先に限定
②日付又は金額の範囲指定により検索出来ること
③二つ以上の任意の記録項目を組み合わせた条件により検索出来ること

保存義務者が、税務職員による質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には、検索要件のうち②③の要件が不要となります(後述のスキャナ保存及び電子取引についても同様です。)。

引用元:国税庁|電子帳簿保存法が改正されました|4ページ目(2023年7月15日時点)

検索機能に関しましては、3つすべてを満たす必要があります。そのため電子取引にて授受した検収書は、ファイル名を以下のように記入する必要があります。

【検索条件を満たしたファイル名の例】
2024年1月1日に株式会社××から受領した『50,000円の検収書』

2024.0101.株式会社××.50,000円.検収書

上記のように記載すれば、どの条件でも検索にヒットします。少々面倒ではありますが、逐一入力をしてくださいね。

ただし上述しましたように、令和5年の税制改正に伴い検索機能が不要となる対象者が拡大されました。基準期間(2課税年度前)の売上高が5,000万円以下の事業者などです。詳細は令和5年税制改正の章で解説していますので、ご参考ください。

まとめ 検収書は電子保存しよう

検収書を電子帳簿保存と一緒に解説してきました。検収書は電子帳簿保存法の対象のため、電子保存をするのであれば要件を守らなければなりません。紙から電子保存するのであれば、スキャナ保存。電子データとして受け取ったのであれば電子取引データ保存が要件となります。

そしてこれら2つには、真実性の確保などといったルールが厳密に設けられていましたよね。不正や見つからないなどといった事態を回避するためです。今後は、このことを意識して保存管理しなければなりません。

もしも検収書を電子保存するのであれば、DenHoをお使いください。DenHoであればタイムスタンプが搭載されていますので、真実性の確保を簡単に実現できます。しかも標準搭載ですので、追加料金は一切なしです。ぜひご検討ください。
電子帳簿保存システムDenHo

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