「正しい領収書の書き方って決まっているのかな?」
「間違えてしまった際は再発行できるの? 間違えてしまった領収書は捨てていい?」
領収書を書く機会のある方のなかには、正しい領収書の書き方や扱い方について疑問を持ったことのある方もいるのではないでしょうか。
領収書を正しく発行するためには、以下の情報を発行者が紙上に記載する必要があります。
- 領収書を発行した者の氏名や屋号・商号
- 取引を行った具体的な日時
- 取引の内容(軽減税率にあたる品目がある場合は、その旨も記載)
- 税率ごとの合計金額
- 領収書を受け取る者の氏名や屋号・商号
記載すべき情報は大きく分けて5つ。領収書の発行には場面に応じて細かな注意点が存在するのもポイントです。
そこでこの記事では、領収書の正しい書き方や注意点について解説いたします。書き間違えてしまった際の基本的な対処方法についても言及。また、レシートとの違いや領収書をインボイスとして扱う条件など、気になる方の多い領収書関連の質問にも触れています。
領収書を発行する機会のある方で、領収書のルールを理解していない方はぜひ参考にしてみてください。
目次
内訳や但し書きなど!領収書の書き方を解説
内訳や但し書きといった領収書の書き方について、ひとつずつ解説いたします。
- タイトル
- 発行日
- 宛名
- 領収金額
- 内訳
- 但し書き
- 発行者情報
- 収入印紙
タイトル
領収書として扱うものには、中央上部または上部左側に明瞭な文字で『領収書』の記載を行いましょう。この記載があることで、領収書であることを示せます。処理する際に誰が見ても領収書だと瞬時に判断できるよう、わかりやすく記載することが重要です。
発行日
代金を受領した日付を日付欄に記入します。税務処理を行う際には正確な日付が必要となるため、間違いのないようにしましょう。
西暦・和暦のいずれを用いても構いませんが、省略することなく記入することがポイント。また、日付を間違えて記入した場合は、発行者に限り日付に二重線を引いて訂正印を押し、正しい日付を記入できます。
宛名
原則として宛名には、代金を支払った企業や人の名前を記入します。領収書の依頼主から『上様』での記載をお願いされるケースがありますが、税務調査で注意されるリスクがあるため、可能な限り避けるべきです。
また、以下の業種で少額の取引である場合に限り受取人の記載は必須ではありません。
⑤書類の交付を受ける事業者の氏名または名称
(注1)小売業、飲食店業、タクシー等を営む事業者が交付する書類については、⑤の記載を省略することができます。引用元:国税庁|No.6625 請求書等の記載事項や発行のしかた(2023年9月4日時点)
受取人が不正に利用することを防いだり税務調査で領収書が無効と判断されたりしないためにも、宛名を空欄にすることのないようにしましょう。
領収金額
領収金額には、文字通り取引で発生した代金を記入します。記載には以下の記載ルールを守ることが一般的なので、記入の際には注意が必要です。
- 金額の頭には『¥』ないしは『金』と記載する
- 金額の末尾に『-』『也』『※』のいずれかを記載する
- 金額の3桁ごとに『,』を打つ
これらの記載ルールは、いずれも記入後に金額の改竄を行わせないために存在します。領収金額部分を空欄で渡したり、間違えた金額を記載してしまったりしないよう、注意をしてくださいね。
内訳
内訳の欄には、以下のように消費税率ごとの税込み合計額を記載します。
小麦粉※ | 5,400円 |
キッチンペーパー | 2,200円 |
牛肉※ | 10,800円 |
10%対象 | 88,000円 |
8%対象 | 43,200円 |
引用元:国税庁|消費税の軽減税率制度に関するQ&A(制度概要編)|14ページ目(2023年9月4日時点)
※は軽減税率対象商品
税率が10%と、軽減税率が適用されている8%の合計金額がそれぞれ存在するのがポイント。領収書の対象となっている商品・サービスに異なる税率のものがある場合は、税率ごとの合計税込み金額を記す必要があります。また、軽減税率対象品目の横には『※』を記載し、別途『※』が軽減税率であることを示す記載を行うのもポイントです。
なお2023年10月以降はインボイス制度が始まるため、以下にあるように適格請求書の記載要件に従って税率ごとに合計消費税額を示さなくてはならない点も要チェックです。
適格請求書には、区分記載請求書等(注)に必要とされる記載事項に加え、次の事項の記載が必要となります。
・登録番号
・適用税率
・税率ごとに区分した消費税額等引用元:国税庁|No.6498 適格請求書等保存方式(インボイス制度)(2023年9月4日時点)
適格請求書における内訳の記載例は下記を参考にしてください。
8%対象 | 40,000円 | 消費税 | 3,200円 |
10%対象 | 80,000円 | 消費税 | 8,000円 |
引用元:国税庁|適格請求書等保存方式の概要|5ページ目(2023年9月4日時点)
また、適格簡易請求書のケースでは以下のような業種に限り、適用税率と消費税額いずれかの記載で許されます。
不特定多数の者に対して販売を行う小売業、飲食店業、タクシー業等に係る取引については、適格請求書に代えて、適格簡易請求書を交付することができます。
引用元:国税庁|適格請求書等保存方式の概要 インボイス制度の理解のために|5ページ目(2023年9月4日時点)
これは小売業や飲食店業のように取引の回数が大きく、取引先が限定されていない傾向にある業種を対象としていると考えられます。そうすることにより、コンビニやスーパーマーケットのような事業を行う者が、毎回顧客に対して名前を記載した領収書を発行する手間を軽減できます。
但し書き
但し書きとは、該当の領収書がどのような商品・サービスに対して発行されたのかを示す欄です。発行された領収書を経費計上する際に各品目に仕訳をする必要があるため、商品・サービスの内容を可能な限り具体的に書くようにしてください。
商品自体の名前を記載するのが確実ですが、飲食店での支払いは『飲食代』、インターネット料金は『通信費』などとジャンルで記載することも可能です。
また、支払人がクレジットカードを使用した場合で領収書の発行をお願いされた場合は、但し書きにクレジットカード決済である旨を記載します。
第17号の1文書(売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書)は、金銭又は有価証券の受領事実を証明する目的で作成されるものです。ご質問のように、クレジット販売の場合には、信用取引により商品を引き渡すものであり、その際の領収書であっても金銭又は有価証券の受領事実がありませんから、表題が「領収書」となっていても、第17号の1文書には該当しません。
したがって、この領収書には印紙を貼付する必要はありません。
なお、クレジットカード利用の場合であっても、その旨を「領収書」に記載しないと、第17号の1文書に該当することになります。引用元:国税庁|クレジット販売の場合の領収書(2023年9月4日時点)
この処理を行っていない場合は、消費税法上の領収書として扱われてしまい、金額によっては印紙の貼付義務が生じてしまうので注意しましょう。
発行者情報
領収書の発行者の氏名または名称を記載する欄です。国税庁では領収書の記載事項について以下のように示しています。
①書類作成者の氏名または名称
②取引年月日
③取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
④税率ごとに区分して合計した税込対価の額
⑤書類の交付を受ける事業者の氏名または名称引用元:国税庁|No.6625 請求書等の記載事項や発行のしかた(2023年9月4日時点)
ここからわかるように、発行者は住所を必ずしも記載する必要はありません。また、発行者情報の記載は手書きのほか、スタンプや印刷でも可能なので、領収書を発行する機会の多い事業者は事前に用意しておくとスムーズに発行可能です。
収入印紙
領収書は、以下にあるとおり印紙税法上で課税対象となる書類なので、領収書に記載される金額に応じた収入印紙を貼り付ける義務があります。
金銭または有価証券の受取書や領収書は、印紙税額一覧表の第17号文書「金銭または有価証券の受取書」に該当し、印紙税が課税されます。受取書とはその受領事実を証明するために作成し、その支払者に交付する証拠証書をいいます。
引用元:国税庁|No.7105 金銭又は有価証券の受取書、領収書(2023年9月4日時点)
金額についての詳細は後述します。
収入印紙を貼り付けた領収書は、領収書の作成者やその他の従業員などが印章または署名によって印紙を消してください。
印紙税の課税対象となる文書に印紙を貼り付けた場合には、その文書と印紙の彩紋とにかけて判明に印紙を消さなければならないことになっています(法第8条第2項)。そして、印紙を消す方法は、文書の作成者又は代理人、使用人その他の従業者の印章又は署名によることになっています(令第5条)。このように、消印する人は文書の作成者に限られておらず、また、消印は印章でなくても署名でもよいとされているところから、文書の消印は、その文書に押した印でなくても、作成者、代理人、使用人、従業者の印章又は署名であれば、どのようなものでも差し支えありません。
ところで、消印は印紙の再使用を防止するためのものですから、それに使用する印章は通常印判といわれているもののほか、氏名、名称などを表示した日付印、役職名、名称などを表示したゴム印のようなものでも差し支えありません(基通第65条)。
また、印紙は判明に消さなければならないこととされていますから、一見して誰が消印したかが明らかとなる程度に印章を押し又は署名することが必要であり、かつ、通常の方法では消印を取り去ることができないことが必要です。したがって、鉛筆で署名したもののように簡単に消し去ることができるものは、消印をしたことにはなりません。引用元:国税庁|印紙の消印の方法(2023年9月4日時点)
これは印紙が使用済みであることを示し、再利用を防ぐための処置です。そのため、あとから消せるような消印は意味を成しません。また、消印をするのは領収書の作成者である必要はありませんが、誰の消印であるかは明確にしておきましょう。
なお作成した領収書を電子保存するのであれば、ぜひDenHoをお使いください。DenHoは領収書などの帳票を自動で振り分けることが可能です。保存業務の効率化を目指している方は、ぜひご検討ください。
金額は税込み!領収書を書く際の注意点
ここでは領収書に記載する金額について焦点を当てて詳しく解説いたします。金額を書く際の注意点や収入印紙にまつわる決まりを理解し、正しく領収書を発行するようにしましょう。
- 領収書の金額は税込みにする
- 数字はハッキリと記入する
- 収入印紙税額は受取金額で変化する
領収書の金額は税込みにする
領収書の金額は、税込み金額や消費税額がわかるような形で記載しましょう。なお、消費税額を別途記載している場合の、領収書への記載金額は税抜き価格となります。記載する際のポイントは、国税庁が用意している以下2点のコメントを参考にしてみてください。
平成元年3月10日付間消3-2「消費税法の改正等に伴う印紙税の取扱いについて」(法令解釈通達)の1「契約書等の記載金額」において、消費税額等が区分記載されている場合又は税込価格及び税抜価格が記載されていることにより、その取引に当たって課されるべき消費税額等が明らかである場合には、消費税額等は記載金額に含めないものとするとされています。
得意先に交付する予定の領収書には、適用税率ごとの消費税額等は記載されていませんが、取引(日用品及び飲食料品の売上げ950,000円)に当たって課されるべき消費税額等が91,000円であると区分記載されていることから、領収書の記載金額は950,000円となります。引用元:国税庁|消費税及び地方消費税の金額が区分表示されている受取書(3)(2023年9月4日時点)
この回答からわかるように、要点となるのは税込みや税抜きの取引金額に対して、消費税額が具体的にいくらであったのかという点です。該当の取引における正しい消費税額を記載したうえで税抜きの金額を記載するか、税込み金額に対して税抜き金額を記載するように意識してみてください。
数字はハッキリと記入する
領収書を手書きで発行する際は、数字が明確になるように記載することが大切です。とくに金額については、誰が見ても迷わず識別できるような字で記しましょう。1と7や0と9などは、気を付けないと混同されるような字になってしまいます。
金額や日付の数字が正しく読み取れない場合、領収書を受け取った事業者は経費として正しい仕訳ができません。その結果として取引先に税務調査が入った際に指摘されたり、取引先の経理から指摘が入って領収書の発行者の信用が落ちたりするリスクがあります。そうなることがないよう、手書きの領収書の数字は丁寧に書き記すようにしましょう。
収入印紙税額は受取金額で変化する
下記の表に記載のとおり、印紙税額は取引された税抜きの金額によって異なるので注意が必要です。
記載金額 税額 5万円未満のもの 非課税 5万越え100万円以下のもの 200円 100万円超え200万円以下のもの 400円 200万円越え300万円以下のもの 600円 300万円越え500万円以下のもの 1,000円 500万円越え1,000万円以下のもの 2,000円 引用元:国税庁|No.7105 金銭又は有価証券の受取書、領収書(2023年9月4日時点)
50,000円以上の取引における領収書に収入印紙の貼付を行っていないと、ペナルティが生じるおそれがあります。ペナルティについては、国税庁が過怠税について以下のように説明しているので参照してみてください。
印紙による納付の方法によって印紙税を納付することになる課税文書の作成者が、その納付すべき印紙税を課税文書の作成の時までに納付しなかった場合には、その納付しなかった印紙税の額とその2倍に相当する金額との合計額(すなわち印紙税額の3倍)に相当する過怠税を徴収されることになり、また、貼り付けた印紙を所定の方法によって消さなかった場合には、消されていない印紙の額面金額に相当する金額の過怠税を徴収されることになっています。
ただし、課税文書の作成者が所轄税務署長に対し、作成した課税文書について印紙税を納付していない旨の申出をした場合で、その申出が印紙税についての調査があったことによりその課税文書について3倍の過怠税の決定があるべきことを予知してされたものでないときは、その過怠税は、その納付しなかった印紙税の額とその10%に相当する金額との合計額(すなわち印紙税額の1.1倍)になります。引用元:国税庁|印紙を貼り付けなかった場合の過怠税(2023年9月4日時点)
具体的には、本来必要な印紙税額にプラスして、過怠税として当該の印紙税額の2倍を徴収される可能性が生じます。収入印紙の貼り忘れや金額の不足が起きないよう、領収書を発行する可能性のある従業員には収入印紙に関する知識を深める指導を行いましょう。
なお、領収書の発行者が印紙の貼付を怠ったことを自ら申告した場合は、印紙税額の1.1倍の金額を納付するだけで済みます。
領収書を書き間違えたときの基本的な対処手順
ここでは領収書を書き間違えた場合の、正しい対処法を解説します。
- 再発行した領収書に『再発行』と記載する
- 書き間違えた領収書に印をつける
- 間違えた方・再発行した領収書を保管する
再発行した領収書に『再発行』と記載する
領収書を書き間違えた際は、『再発行』と明記したうえで新たに領収書を発行します。訂正も不可能ではありませんが、訂正した領収書を受け付けない事業者もあるため、再発行が無難な方法です。
なお国税庁が下記で回答しているように、領収書を再発行する際に該当の領収書に収入印紙を貼り付ける義務があった場合は注意が必要。
金銭又は有価証券の受取書とは、金銭又は有価証券の引渡しを受けた者がその受領事実を証明するために作成し、その引渡者に交付する単なる証拠証書をいいます。そのため、金銭の受領が1回であっても、その受領事実を証明する目的で作成したものであれば、第17号文書(金銭又は有価証券の受取書)に該当することになります。したがって、ご質問の再発行した受取書についても第17号文書に該当することになります。
なお、納税義務者は、再発行を要請した得意先ではなく、受取書の作成者となります。引用元:国税庁|再発行した受取書(2023年9月4日時点)
間違った領収書に収入印紙をすでに貼っていたとしても、再発行した領収書にも収入印紙を貼り付ける必要が生じます。この場合に収入印紙分の税金を負担するのはあくまで発行者となる点も理解しておきましょう。
書き間違えた領収書に印をつける
書き間違えた領収書は印を付けておきましょう。取引先に再発行した領収書と一緒に渡してしまったり破いて捨ててしまったりすると、税務調査の必要が生じた際に問題が生じる可能性があります。
領収書を書き間違えた場合は、間違えた領収書にあくまで書き間違えによって再発行したものであることを、わかりやすく明示しておくことが大切です。そうすることで、万が一税務調査が入った際にも、調査員に書き損じた領収書が生じたことを明確に示せるでしょう。
また書き間違えた領収書に印を付けていないと、ほかの従業員が領収書の渡し忘れだと判断して取引先に誤った領収書を渡すなど、トラブルが生じるケースも考えられます。書き損じた領収書は印を付けて保存するのが妥当です。
間違えた方・再発行した領収書を保管する
間違えた方の領収書や、再発行した領収書の複写は保管するようにしてください。これは、税務調査で不正を疑われないようにするための処置です。
領収書は一般的に、自社の控えと取引先に渡す紙との2枚セットになっていますよね。正しく領収書を発行していれば問題はありませんが、領収書を再発行すると自社控え分に同じ内容の領収書が2枚存在してしまいます。この際に間違えた方・再発行した領収書の控えや、間違えた領収書自体を再発行したとわかる形で保存しておくことで、税務調査の際に問題が生じるリスクが低くなるのがポイントです。
万が一、領収書を書き間違えてしまって再発行した場合も、間違えた方の領収書は必ず保管しておくようにしましょう。
レシートとの違いは?領収書関連でよくある質問
ここでは領収書に関するよくある質問についてお答えします。
- そもそも領収書とは何ですか?
- レシートとの違いは何ですか?
- 領収書には発行義務があるのですか?
- 領収書に保管期間はありますか?
- 領収書をインボイスにするにはどうすればいいですか
- 領収書に押印は必要ですか?
そもそも領収書とは何ですか?
領収書とは金銭等の支払いを証明するための書類です。領収書の役割は、商品・サービスに対して領収書を受け取る者が代金を払ったことを証明することにあります。
代金の支払いが証明されることで、領収書を受け取った事業者は代金を経費として扱えます。その他にも、取引において二重請求や代金の払い過ぎを防止する役割もあると言えるでしょう。
領収書を発行する際は、取引先に不備を指摘されたり税務調査で問題になったりしないよう、必要事項を正しく記載することが大切です。領収書を発行する可能性のある人は、領収書の書き方への理解を深めるようにしましょう。
レシートとの違いは何ですか?
領収書とレシートの違いは、宛名の有無にあります。そもそもレシートとはレジから自動発行される明細のことで、印紙税法上においては領収書と同等の受領書として定義されています。
金銭または有価証券の受取書や領収書は、印紙税額一覧表の第17号文書「金銭または有価証券の受取書」に該当し、印紙税が課税されます。受取書とはその受領事実を証明するために作成し、その支払者に交付する証拠証書をいいます。したがって、「受取書」、「領収証」、「レシート」、「預り書」はもちろんのこと、受取事実を証明するために請求書や納品書などに「代済」、「相済」とか「了」などと記入したものや、お買上票などでその作成の目的が金銭または有価証券の受取事実を証明するものであるときは、金銭または有価証券の受取書に該当します。
引用元:国税庁|No.7105 金銭又は有価証券の受取書、領収書(2023年9月4日時点)
レシートは、支払い先・取引の日付・取引の内容・税率ごとの合計金額が記されていれば、領収書と同等に扱えるのが特徴です。
ただし先述したようにレシートには、基本的に領収書の要件となる『書類の交付を受ける事業者の氏名または名称』の記載がありません。そのため社内規則によっては、レシートよりも領収書の方が重要視されることがあるかもしれません。気になった方は、社内の担当者の方に確認しておくと良いでしょう。
領収書には発行義務があるのですか?
民法486条によれば、商品・サービスに対して代金を支払った者は領収書を請求する権利を有し、請求された者は発行を行う義務があるとされています。
第四百八十六条 弁済をする者は、弁済と引換えに、弁済を受領する者に対して受取証書の交付を請求することができる。
2 弁済をする者は、前項の受取証書の交付に代えて、その内容を記録した電磁的記録の提供を請求することができる。ただし、弁済を受領する者に不相当な負担を課するものであるときは、この限りでない。引用元:e-Gov法令検索|明治二十九年法律第八十九号民法(2023年9月4日時点)
例外として存在するのが、代金の支払いにクレジットカード払いを選択している場合です。このケースでは、商品・サービスを提供した側と代金を支払って提供された側とに直接的な金銭のやり取りがない信用取引に当たります。
しかし、クレジットカードサービスを利用した時には、利用者に対して課税資産の譲渡等を行った他の事業者が、「ご利用明細」等を発行しているのが通常です。
この「ご利用明細」等には、1その書類の作成者の氏名又は名称、2課税資産の譲渡等を行った年月日、3課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(当該課税資産の譲渡等が軽減対象資産の譲渡等に係るものである場合には、資産の内容及び軽減対象資産の譲渡等に係るものである旨)、4税率の異なるごとに区分して合計した課税資産の譲渡等の対価の額、5その書類の交付を受ける者の氏名又は名称が記載されていることが一般的であり、そのような書類であれば消費税法第30条第9項に規定する請求書等に該当することになります。引用元:国税庁|カード会社からの請求明細書(2023年9月4日時点)
クレジットカードを使用した取引では、発行されたクレジットカードの『ご利用明細』が領収書としての要件を満たすことが一般的なので、当該の書類を領収書の代わりに使用可能。したがって、領収書を発行する義務は生じません。
領収書に保管期間はありますか?
確定申告を済ませて処理し終えた領収書にも、保管期間が存在します。保管期間は法人か個人かによっても異なるため、注意が必要です。
法人の領収書の保管期間においては、国税庁が以下のように定義しています。
法人は、帳簿(注1)を備え付けてその取引を記録するとともに、その帳簿と取引等に関して作成または受領した書類(注2)を、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間(注3)保存しなければなりません。
(注1)「帳簿」には、例えば総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳、売掛金元帳、買掛金元帳、固定資産台帳、売上帳、仕入帳などがあります。
(注2)「書類」には、例えば棚卸表、貸借対照表、損益計算書、注文書、契約書、領収書などがあります。
(注3)青色申告書を提出した事業年度で欠損金額(青色繰越欠損金)が生じた事業年度または青色申告書を提出しなかった事業年度で災害損失金額が生じた事業年度においては、10年間(平成30年4月1日前に開始した事業年度は9年間)となります。引用元:国税庁|No.5930 帳簿書類等の保存期間(2023年9月4日時点)
法人の場合は法人税法によって領収書の保管期間が7年と定められています。また収益がマイナスだった場合は、保管期間が異なる点にも注目。平成30年4月1日より前の事業年度においては9年間、平成30年4月1日以降に開始する事業年度においては10年間の領収書の保管が必要です。
個人事業主の場合は、青色申告か白色申告かによって保管が異なります。
申告方法 | 保存期間 |
青色申告の場合 | 7年※ |
白色申告の場合 | 5年 |
引用元:国税庁|記帳や帳簿等保存・青色申告(2023年9月4日時点)
※前々年分の事業所得及び不動産所得の金額が300万円以下の方は、5年
青色申告では申告した前々年の所得が300万円以下の場合は5年、それ以外では7年。白色申告では5年の保管義務があります。ただし、以下に記載のあるように白色申告の場合でも仕入税額控除を受ける場合には、7年間の保存義務が生じる点は覚えておきましょう。
消費税の仕入税額控除を受けるためには、課税仕入れなどに関する帳簿および請求書等を保存しなければなりません。
その保存期間については、その閉鎖または受領した日の属する課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間、事業者の納税地またはその事業に係る事務所等に保存しなければなりません(注)。
ただし、6年目および7年目は、帳簿または請求書等のいずれか一方を保存すればよいこととされています。引用元:国税庁|No.6625 請求書等の記載事項や発行のしかた(2023年9月4日時点)
また、いずれの場合においても保管期間の起算日は領収書を発行した日ではなく、事業年度の確定申告書を提出する期限の翌日となるのもポイント。保管期間を終えるまでは、必要に応じて取り出せるように適切に管理・保存する必要があります。
領収書をインボイスにするにはどうすればいいですか
領収書をインボイスとして使用するためには、以下のように定められた要件を満たす必要があります。
手書きの領収書であっても、適格請求書として必要な次の事項が記載されていれば、適格請求書に該当します(新消法57の4①、インボイス通達3-1)。
① 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
② 課税資産の譲渡等を行った年月日
③ 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(課税資産の譲渡等が軽減対象資産の譲
渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象資産の譲渡等である旨)
④ 課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額及び適
用税率
⑤ 税率ごとに区分した消費税額等
⑥ 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称引用元:国税庁|消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A|27ページ目(2023年9月4日時点)
国税庁が上記で回答しているように、必要な記載事項さえ追記していれば従来の領収書をインボイスとして使用できます。インボイス以前の領収書との大きな違いは、以下3点を領収書に記載する必要が生じる点です。
- インボイスを発行する事業者の登録番号
- 適用される消費税率
- 税率ごとに区分した消費税額
したがって、領収書をインボイスとして発行できるのは登録番号を有する適格請求書発行事業者のみとなります。
また、適格請求書に代えて適格簡易請求書を発行する場合は、適用される消費税率と消費税額のいずれかを記載するだけで済みます。
適格簡易請求書の記載事項は、適格請求書の記載事項よりも簡易なものとされており、適格請求書の記載事項と比べると、「書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称」の記載が不要である点、「税率ごとに区分した消費税額等」又は「適用税率」のいずれか一方の記載で足りる点が異なります。
引用元:国税庁|消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A|61ページ目(2023年9月4日時点)
書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称も必須とはされていません。これは、適格簡易請求書の発行が許されている飲食業や小売業が、基本的に不特定多数を取引相手とする業種のためでしょう。多くの取引に対応するこれらの業種では、すべての領収書において適格請求書のフォーマットを義務化するのが作業量的に現実的ではないため、これらの処置がとられていると考えられます。
領収書に押印は必要ですか?
領収書に押印は必ずしも必要ではありません。例えば内閣府規制改革推進室が発表している資料にも、下記のような指針が示されています。
見積書、請求書、領収書等については、押印不要とするとともに、e メール等での書類提出を認める。直ちに提出が困難なものについては、後日送付を認める
引用元:内閣府規制改革推進室|「行政手続における書面主義、押印原則、対面主義の見直しについて(再検討依頼)」の結果概要|1ページ目(2023年9月4日時点)
これは法令に根拠がなく慣習的に行われていた押印を不要とし、作業の効率化を求める意図があったと考えられます。取引先や社内規則に左右されるところではありますが、ケースによっては押印が不要となる可能性があることも覚えておきましょう。
まとめ|領収書の書き方には気を付けよう
金銭などの支払いを証明するための書類である領収書は、受取人が税務においてスムーズに処理できるように正しく記載するように意識することが大切です。間違った書き方をしてしまうと、受取人はもちろん発行者も税務調査で不利になってしまうリスクが生じます。
領収書本来の役割を機能させるためには、『発行者の名前・取引を行った具体的な日時・取引の内容・税率ごとの合計金額・受け取る者の名前』の記載が必要。さらに、インボイスとして使用する場合は『インボイスを発行する事業者の登録番号・適用される消費税率・税率ごとに区分した消費税額』の記載も必要です。
領収書の書き方の要点を理解し、領収書の発行を請求された際はスムーズに書けるようにしておきましょう。
なお作成した領収書を電子保存するのであれば、DenHoをご利用ください。DenHoであれば電子帳簿保存法に対応した保存が可能となります。ぜひご相談ください。
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