貿易取引を行っている企業の中には「関税法の電子帳簿保存制度への対応をどのように進めれば良いのかわからない」と悩んでいる企業も多いのではないでしょうか。
貿易帳票は関税法の電子帳簿保存制度の対象書類のため、電子保存をするのであれば法令の定める各要件に従って保管しなければなりません。電子帳簿保存制度に則った貿易帳票の保管は、コンプライアンス向上やペーパーレス化によるコスト削減など、企業にとってもメリットがあります。業務の効率化にもつながり、貿易帳票に関する業務上の課題改善も期待できるでしょう。
そこで本記事では貿易帳票や電子帳簿保存制度とは何か、電子保存するメリット、貿易帳票関連のシステムソリューションを導入するメリットを解説します。貿易帳票に関するよくある質問も解説するため、電子帳簿保存制度への対応に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
目次
貿易帳票も電子帳簿保存制度への対応が必要です
貿易帳票は関税法の電子帳簿保存制度の対象書類であり、知らずに法律違反とならないよう対応が必要です。
- 貿易帳票とは
- 貿易帳票は電子帳簿保存制度の対象書類です
貿易帳票とは
貿易帳票とは、貿易業務に関わる帳簿や書類のことです。帳簿には以下のような取引内容の詳細を記載する必要があります。
- 輸出および輸入許可を受けた貨物の品名
- 貨物の数量
- 貨物の価格
- 輸出入者の氏名
貿易帳票の具体例は以下の通りです。
- インボイス
- パッキングリスト
- 梱包明細書
- 船積み依頼書
詳しくは後述しますが、これらの貿易帳票は法律で一定期間の保存が義務づけられています。保存方法の要件も定められているため、知らずに法律違反とならないよう適切に保管しましょう。
また、貿易帳票は貿易取引が正しく行われたかを確認する事後調査にも使用されます。事後調査とは以下のように規定されている、税関が行う調査のことです。
事後調査は、関税法第105条(税関職員の権限)の規定に基づいて行うものです。
帳簿書類等の提示又は提出の要求に対し、正当な理由がなくこれに応じず、又は偽りの記載・記録をした帳簿書類等を提示・提出した場合には、罰則が科されることがあります。
なお、関税法の規定に違反して帳簿の記載をせず、若しくは偽り、又は帳簿を隠した場合についても、罰則が科されることがあります。引用元:税関|帳簿書類の保存義務と電子データによる保存の概要|12ページ目(2023年10月3日時点)
万が一事後調査で不適切な取引や申告を行っていたことが判明した場合は、事業者に指導や罰則が行われます。調査の際には、契約書や仕入れ書など、税関から求められた書類を提出しなければなりません。貿易帳票を紛失してしまわないよう、取引先や時系列ごとに整理して保管しておくことが大切です。
貿易帳票は電子帳簿保存制度の対象書類です
貿易帳票は関税法の電子帳簿保存制度の対象書類であり、法律に則った管理が必要です。貿易帳票における具体的な対象書類と保存期間は以下の通りです。
対象者 | 輸出 | 輸入 |
帳簿 | (記載事項) 品名、数量、価格、仕向人の氏名(名称)、輸出許可年月日、許可書の番号を記載(必要事項が網羅されている既存帳簿、仕入書等に必要項目を追記したものでも可) (保存期間) 5年間(輸出許可の日の翌日から起算) |
(記載事項) 品名、数量、価格、仕出人の氏名(名称)、輸入許可年月日、許可書の番号を記載(必要事項が網羅されている既存帳簿、仕入書等に必要項目を追記したものでも可) (保存期間) 7年間(輸入許可の日の翌日から起算) |
書類 | (書類の内容) 輸出許可貨物の契約書、仕入書、包装明細書、価格表、製造者又は売渡人の作成した仕出人との間の取引についての書類、その他税関長に対して輸出の許可に関する申告の内容を明らかにすることができる書類 (保存期間) 5年間(輸出許可の日の翌日から起算) |
(書類の内容) 輸入許可貨物の契約書、仕入書、運賃明細書、保険料明細書、包装明細書、価格表、製造者又は売渡人の作成した仕出人との間の取引についての書類、その他税関長に対して輸入の許可に関する申告の内容を明らかにすることができる書類 (保存期間) 5年間(輸入許可の日の翌日から起算) |
電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存 | (電磁的記録の内容) 電子取引(いわゆるEDI取引、インターネット等による取引、電子メール等により取引情報を授受する取引)を行った場合における当該電子取引の取引情報(貨物の取引に関して授受する契約書、仕入書等に通常記載される事項) (保存期間) 5年間(輸出許可の日の翌日から起算) |
(電磁的記録の内容) 電子取引(いわゆるEDI取引、インターネット等による取引、電子メール等により取引情報を授受する取引)を行った場合における当該電子取引の取引情報(貨物の取引に関して授受する契約書、仕入書等に通常記載される事項) (保存期間) 5年間(輸入許可の日の翌日から起算) |
引用元:税関|帳簿書類の保存義務と電子帳簿等保存制度(2023年10月3日時点)
電子取引を行った場合は、貿易帳票の電子保存・管理を行う必要があります。従来、国際輸送に関する取引の書類は紙媒体のものが多く、特に税関への輸出入申告は現在でも紙面でのやり取りが一般的です。そのためメールなどで受け取った書類をプリントアウト・ファイリングしていた企業も多いことでしょう。
しかし電子取引を行った場合は、上記のように電子保存が義務付けられていますので要注意です。
なお電子帳簿保存制度により、これらの書類をスキャンしてデータ保存することが認められています。スキャナ保存制度の概要は以下の通りです。
スキャナ保存制度は、取引の相手先から受け取った仕入書等及び自己が作成したこれらの写し等の関税関係書類について、一定の要件の下で、書面による保存に代えて、スキャナで読み取った電磁的記録による保存が認められる制度です(関税法第94条の2第3項)。
引用元:税関|帳簿書類の保存義務と電子データによる保存の概要|8ページ目(2023年10月3日時点)
スキャナ制度の導入により、ペーパーレス化や電子管理がしやすくなることでしょう。デジタル化によって書類管理がしやすくなる一方、電子帳簿保存制度の要件を事前に確認する必要があります。
なお貿易帳票を電子保存するのであれば、弊社のDenHoがおすすめです。DenHoはISO-27001、ISO-27017 セキュリティー認証を取得しているため、安心してご利用いただけます。ぜひご検討ください。
要対応!貿易帳票を電子保存するメリット
貿易帳票を電子保存するメリットは以下の3つです。
- コンプライアンスの向上
- コスト削減
- 業務の効率化
貿易帳票の電子保存は企業にとってもメリットが多い制度です。どのようなメリットが期待できるのかをみてみましょう。
コンプライアンスの向上
貿易帳票を電子保存すると、コンプライアンスの向上を期待できます。貿易帳票のデータを電子化することにより、貿易帳票の改ざんや情報漏洩、紛失などのリスクを防げるからです。
例えば紙媒体の場合、書類をまとめたファイルが誰でも見られる状態で保管されていると、情報漏洩や書類紛失のリスクがあります。また、災害や火災で消失してしまう可能性もあるでしょう。
電子帳簿保存制度に対応しているシステムを活用して電子データで保存すれば、書類の閲覧権限を制限したり、データの持ち出しができないように設定したりできます。これにより情報漏洩や改ざんなどの防止が可能です。また、データをバックアップしておけば、消失のリスクも軽減できるでしょう。
コンプライアンスの向上はどの企業にも求められているものです。電子帳簿保存制度への対応を進めることで、コンプライアンス向上につなげましょう。
コスト削減
貿易帳票を電子保存すると、コスト削減にもつながる点もメリットです。電子保存すれば、紙面でやり取りするためにかかっていたさまざまコストが発生しなくなります。
そもそも取引先と契約書や仕入書などを紙面でやり取りをする場合、以下のようなコストがかかります。
- 書類の紙代
- 印刷費
- 郵送費
- プリンターのインク代
- ファイル代
上記以外にも、書類のファイリング作業や保管スペースの確保なども必要です。特に貿易取引の場合は紙面でのやり取りが主流のものもあり、長期間保管しなければならない書類の量が膨大になる傾向があります。これらのコストは、1つ1つは小さなものであっても積み重なると大きな負担になります。
しかし電子データ化すれば、電子データをインターネットやメール上でやり取りを行うため、これらのコスト削減が可能です。
また、保管書類を管理する手間もなくなるため、結果的に人的コストの削減にもつながります。こうした電子保存によるコスト削減により、経費の負担が減り、企業の利益増加も期待できるでしょう。
業務の効率化
貿易帳票の電子化により、業務の効率化も期待できます。電子保存をすることで、従来の郵送作業やファイリングなどといった業務が不要になるからです。
紙面でやり取りや保管をしている場合、郵送のために書類の印刷や封入作業が必要です。また、必要な書類を探す際にはファイリングした中から目的の書類を探すために1つずつ確認しなければならず、時間がかかってしまうことも少なくありません。
また紙媒体で保存する場合、先述したようなコストがかかるだけではなく、管理の手間もかかります。こうした紙特有の問題によってほかの業務にあてる時間が削られてしまい、生産性が低くなってしまう点が課題でした。
電子保存の場合、システムの検索機能を活用すれば目当ての書類をすぐに見つけることが可能です。システム上で時系列や取引先ごとでの電子データの振り分けができ、書類の整理や管理がしやすくなります。これによりバックオフィス業務を効率的に行えるようになり、他の業務へ対応する余裕が生まれるでしょう。
さらに、税務調査や事後調査などで過去の貿易帳票の提出が必要な場合にも、必要書類をすぐに探し出してスムーズに対応できるようになります。こうした業務の効率化によって本来の商取引にかけるべき時間を確保しやすくなるため、生産性の向上にもつながります。
貿易帳票関連のシステムソリューションの導入メリット
電子保存のメリットを聞いて「よし。電子保存に切り替えよう」と決めた方がいるかもしれません。しかし貿易帳票を電子保存する際、様々な方法が選択肢として出てくることでしょう。
そこでここでは、選択肢の1つになりうる『貿易帳票関連の管理システムソリューション』の説明と、導入するメリットを解説します。
- 貿易帳票の作成プロセスを見える化できる
- 貿易帳票を一元管理できる
- 業務の属人化を防止できる
貿易帳票の作成プロセスを見える化できる
貿易帳票関連の管理システムソリューションとは、書類作成・仕入れ管理・送金などといった業務を効率化させるシステムのことです。貿易帳票の管理システムを導入することで、電子保存できるようになるだけでなく、書類などの作成プロセスも見える化できます。
まず貿易帳票関連のシステムを導入すると、貿易取引における各種手続きや関係書類の作成プロセスをデータとして残せます。システム内に以下のデータを蓄積できるため、業務内容や進捗の可視化が可能です。
- 各取引における運賃や関税などの貿易諸掛
- 手続き処理にかかった時間
- 取引先ごとのメール本文・添付データ
また導入するシステムにもよりますが、書類トラッキング機能を使用すると、通関申告に必要な書類が揃っているかのチェックが可能です。貿易取引における各種手続きや関係書類の作成は、税関や取引先などへの提出期限が決まっているものも少なくありません。書類トラッキング機能ではこれらの期限管理もできるため、書類作成の進捗管理をしやすくなります。これにより申告漏れを防げるでしょう。
貿易帳票を一元管理できる
貿易帳票を一元管理できる点も、貿易帳票関連のシステムを導入するメリットとして挙げられます。ケースにもよりますが、貿易帳票関連のシステムを導入することで、1つの取引に関連する帳票の紐付けやNACCS(日本輸出入・港湾関連情報処理システム)とのデータ連携が可能です。
そもそも貿易取引でやり取りされる書類は種類が多く、取引先や貨物が増えるほど必要なものが増えてしまいます。それらの書類を紙媒体で保管すると、相応の保管スペースの確保が必要です。また、過去の取引の資料を探す際にも時間がかかってしまいます。
しかし貿易帳票関連の管理システムソリューションを導入すれば、そのようなことはありません。システムによっては貿易帳票保管機能があり、貿易帳票の一元管理できるからです。
場合によっては書類同士を関連づける『帳票紐付け管理機能』もあり、1つの取引に関する書類をすべて関連づけて管理できます。送信先ごとのメール本文と添付データの自動保存も可能です。これにより書類整理の手間を省略し、取引内容の社内での共有もしやすくなるでしょう。
これも導入するシステムによりますが、貿易帳票保管機能では、書類の変更履歴の保存も可能です。履歴をさかのぼることで変更前の情報も確認できるため、いつ、どのような変更が行われたのかが確認できます。
業務の属人化を防止できる
貿易帳票関連のシステムを導入すると、業務の属人化を防止できる点もメリットです。作成プロセスの見える化と一括管理により、貿易帳票管理にかかる業務を社内で共有しやすくなるからです。
元来、貿易取引関連の書類は専門性が高く、書類作成や提出期限の管理などを特定の担当者が自分1人だけで行っているケースがあります。一見しますとこの状態は頼もしく見えますが、組織全体として見てみると好ましくありません。その担当者が不在の際には、他の人では対応できない状況に陥るおそれがあるからです。そうなってしまいますと、取引に必要な手続きの遅れが発生してしまうことでしょう。その結果、ビジネスに悪影響があるかもしれません。
このように、業務の属人化は業務効率の低下や取引への悪影響を及ぼす可能性があるのです。
そんなときこそ、貿易帳票システムソリューションが役に立ちます。貿易帳票システムソリューションを導入すると、どのような流れで、どの書類を作成・提出するのかが社内で共有しやすくなります。その結果、各業務の仕組み化・均一化を図りやすくなり、属人化防止につながるでしょう。
貿易帳票にてよくある質問を解説
最後に、貿易帳票にてよくある5つの質問を解説します。
- 貿易実務の流れを教えてください
- 安全保障貿易管理における取引審査などを知りたいのですが?
- E/D・I/Dとは何ですか?
- 貿易帳票とビジネス帳票の違いは何ですか?
- 貿易におけるインボイスとは何ですか?
電子帳簿保存制度へ適切に対応するためにも、法令だけではなく貿易帳票そのものについても正確に把握しましょう。
貿易実務の流れを教えてください
貿易実務は以下の流れで行います。
- 輸出入の当事者同士で契約締結
- 輸出者が海運・通関業者へ船積依頼書を提出
- 輸出者が輸出貨物の保税地域へ運送
- 海運・通関業者が船積依頼書に基づいて税関へ輸出申告を申請
- 税関が審査を行い、輸出許可を出す
- 船会社が貨物の船積を実施
- 船会社が海運・通関業者へ船荷証券を渡す
- 海運・通関業者が輸出者へ船積書類を届ける
- 輸出者が荷為替手形をもとに銀行で決済
まずは輸出入を行う当事者同士が契約し、輸出者は海運・通関業者へ輸出する貨物や輸出先などの詳細を記載した船積依頼書を提出します。この書類に基づき、海運・通関業者が税関へ輸出申告を行います。
万が一、記載内容に不備があれば取引が滞ってしまう可能性があるため、提出前のチェックが欠かせません。
税関では輸出申告を受けて書類内容を確認し、必要に応じて貨物の現物検査を行います。現物検査は拒否できないため、検査の連絡が入った場合には素直に応じましょう。また、輸出申告や輸出許可書の受領は紙面で行われるのが一般的です。
税関から輸出許可がでたら海運・通関業者が船業者へ貨物の積み込みを依頼し、船会社は船荷証券を発行します。船荷証券は荷主と運送人との間での運送契約締結の証明書類です。通常は船積み後に発行されますが、場合によっては船積み前に受取船荷証券が発行されるケースもあります。
海運・通関業者は船荷証券を受け取った後、輸出許可書も含めた船積書類を輸出者に提出します。その後、輸出者が為替手形に船積書類を添えた荷為替手形を銀行に提示して決済処理を行い、輸出手続きはすべて完了です。
なお、海運・通関を自社で行う自社通関の場合は、税関への手続きも輸出者自らが行います。
安全保障貿易管理における取引審査などを知りたいのですが?
安全保障貿易管理における取引審査などに関しては、経済産業省が公開している『経済産業省|安全保障貿易管理ガイダンス[入門編]第2.2版 | 令和 5 年 7 月』を参照しましょう。このガイダンスでは安全保障貿易管理の概要や取引審査などの具体的な手続きの事例、実務マニュアルを掲載しています。
このガイダンスの公表目的を、経済産業省は以下のように解説しています。
企業等における輸出管理体制構築に向けた取り組みを促進することを目的として公表しています。
本ガイダンスでは、安全保障貿易管理の概要のほか、該非判定や取引審査等の手続を解説するとともに、個別ケースにおける具体的な手続きの事例や実務マニュアル、各種帳票の例等も示しています。
これから輸出管理に取り組む中小企業や既に取り組んでいる中小企業、更には中小企業以外の企業等においても、本ガイダンスを参考に輸出管理を着実に実施してください。引用元:経済産業省|安全保障貿易管理ガイダンス[入門編](2023年10月3日時点)
国際的な平和・安全を維持するための枠組みであり、輸出入を行うすべての企業が確実に対応しなければなりません。
なおガイダンス内では輸出管理の実務として、輸出時には以下の3つの手続きを適切に行うことが記載されています。
該非判定|輸出や提供しようとする貨物や技術が、リスト規制に該当するか否かを判定すること
取引審査|貨物や技術の用途と需要者等について確認するなどし、取引を行うか否かを判断すること
出荷管理|貨物の出荷や技術の提供前に、同一性の確認及び許可証の有無の確認を行うこと引用元:経済産業省|安全保障貿易管理ガイダンス[入門編]|29ページ目(2023年10月3日時点)
これらは国際社会の平和・安全を脅かす貨物や技術を輸出入していないか、申請した通りに出荷されているかをチェック・管理する手続きです。ガイダンスの別添資料内では形成に該当する品目リストや具体的な該非判定の事例を掲載しています。ガイダンス別添資料として、該非判定書や用途チェックリストなどの帳票のテンプレートも取得可能です。
また、経済産業省では安全保障貿易管理に関する説明会や中小企業を対象とした輸出管理体制構築のための支援を行っています。ガイダンスの確認や経済産業省への相談などを行い、安全保障貿易管理へ対応しましょう。
E/D・I/Dとは何ですか?
E/Dは輸出申告書・輸出許可書、I/Dは輸入申告書・輸入許可書のことです。
貨物を輸出する際に、輸出者名や品目、数量、価格などの貨物や取引内容に関する詳細を記載して税関に提出します。税関で書類を確認後、税関の許可印を押印して交付されたものが輸出許可書です。これを英語でExport Declarationといい、貿易取引の実務内ではE/Dと省略して表記されます。
I/Dは英語のImport Declarationの略です。輸入時に輸入者名や品目、数量などの取引の詳細のほか、関税や消費税などの税金額も記載して税関に提出します。税関で書類を確認し、輸入許可印が押印されたものが輸入許可書です。なお、輸入許可書は関税や消費税が納税されたあとに発行されます。
E/D・I/Dはどちらも貿易取引を行うためには税関への提出が必須の書類であり、この書類の内容をもとに貿易取引を行います。そのため、作成時にはミスがないように注意しましょう。
貿易帳票とビジネス帳票の違いは何ですか?
貿易帳票とビジネス帳票の違いは、対象となる税金が異なる点です。
そもそも貿易帳票は、貿易取引に関する契約書や税関へ提出する書類が該当します。一方ビジネス帳票は、仕訳帳や注文書など国税に関係する書類のことです。各帳票の詳細は以下の通り。
項目 | 貿易帳票 | ビジネス帳票 |
帳簿の具体例 | E/D I/D インボイス |
仕訳帳 経費帳 売上帳 現金出納帳 |
書類の具体例 | 契約書 パッキングリスト 原産地証明書 該非判定書 |
損益計算書 注文書 賃貸対照表 領収書 |
そのため貿易帳票は関税、ビジネス帳票は国税に関連する帳簿書類と言えます。
ただし書類によっては国税・関税の両方に該当するものもあります。国税・関税どちらの関係書類であっても適切に管理できるよう、両者の違いを把握しておきましょう。
貿易におけるインボイスとは何ですか?
貿易におけるインボイスとは、輸出入通関時に税関への提出が義務づけられている書類のことです。輸出する貨物の商品名や数量、単価、合計金額、輸出者・輸入者の社名など、取引や貨物の詳細を記載します。
貿易取引におけるインボイスは、以下の3つの役割を担っています。
- 明細書
- 請求書
- 納品書
インボイスは取引明細や輸出入申告時の申告額の根拠にもなるため、取引の有償・無償にかかわらず提出しなければなりません。特に商品価格や商品数量は関税にも関係するため、記載ミスのないように注意しましょう。
なおインボイスのフォーマットは決まった形式はなく、企業によってさまざまです。基本的には一度作成したら、その後の取引でも同じフォーマットを使用します。取引先から情報不足の指摘や追加の依頼があれば、それにあわせて必要項目の追加を行うのが一般的です。
ただし売買契約の内容に変更があった場合は、インボイスのみを修正するのではなく、改めて契約を結び直してから再度インボイスを作成するのが良いでしょう。契約書の内容と齟齬がない、正確な取引内容が記載されたインボイスを発行することにより、適切な取引を行ったことを証明できます。
まとめ|貿易帳票は電子保存しよう
貿易帳票は電子帳簿保存制度の対象のため、法令に則って電子保存しましょう。電子帳簿保存制度では紙媒体で取引された書類のスキャナ保存や、電子取引における電子情報の保存の要件を定めています。
コンプライアンス向上や業務の効率化のためにも、電子帳簿保存制度の要件に則った貿易帳票の管理が必要です。また導入したシステムによっては、書類作成・管理業務の効率化や業務の属人化の防止にもつながります。法令への対応とあわせて、自社の業務状況の見直しや改善も目指して貿易帳票の電子保存を進めましょう。
なお貿易帳票を電子保存するのであれば、弊社のDenHoをお使いください。DenHoには全文検索機能があるため、対象書類をよりスピーディーに探すことが可能です。ぜひご検討ください。
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