関税法における電子帳簿保存|関税関係帳簿書類の保管期間などを解説

「関税法の電子帳簿保存制度って、何?」
「関税関係帳簿書類を電子保存する際、注意すべきことはあるのか」

貿易関連企業の中には、上記のような疑問を持っている方もいるのではないでしょうか。まず関税法の電子帳簿保存制度は、関税関係帳簿を電子保存する際のルールのことです。法令で定められた要件に従って保存しなければなりません。

そのためには、最新の法令内容を把握する必要があります。法令内容が正しく把握できていない場合、意図せず違反してしまう可能性もあります。違反すればペナルティが付与されるため、対応すべき義務や要件を確認しましょう。

本記事では関税法の電子帳簿保存制度や電子保存する際の注意点などを解説します。関税関係帳簿書類の電子保存対応に悩んでいる方は、ぜひご参考ください。

関税関係帳簿書類は電子帳簿保存制度の対象です

関税関係帳簿書類は、関税法の電子帳簿保存制度の対象であり、法令に則った管理が必要です。

  • 関税関係帳簿書類は電子帳簿保存制度の対象!
  • 関税法とは?
  • 電子帳簿保存法とは?

関税関係帳簿書類に関係する法令を把握し、適切に対処しましょう。

関税関係帳簿書類は電子帳簿保存制度の対象!

関税に関係する帳簿や書類は、関税法の電子帳簿保存制度の対象です。詳しくは以下の通り。

申告納税方式が適用される貨物を業として輸入する者は、関税関係帳簿書類等の保存が義務づけられています(関税法第94条第1項及び第94条の5)。具体的には、次のような帳簿、書類及び電子取引の取引情報を保存する必要があります。

引用元:税関|帳簿書類の保存義務と電子データによる保存の要件| 1ページ目(2023年10月3日時点)

上記のように税関は、税務に関する帳簿書類の作成や保管などの管理全般を定めています。これは電子取引も例外ではなく、ケースによっては貿易書類の電子保存が義務付けられているのです。そのため貿易業務を行う企業も対応が必要です。

電子保存をすることによりペーパーレス化やコスト削減が期待できますが、定められた要件を満たさなければ違反になります。帳簿書類を法令の要件を満たした方法で適切に管理するための準備が必要です。

また、関税関係帳簿書類には貿易取引の詳細に関するものだけではなく、輸出・輸入許可書や原産品申告書などの税関に提出する書類も含まれます。詳細は後述します。

なお関税関係帳簿書類を電子保存するのであれば、DenHoをお使いください。DenHoには書類に対して、自分でタグをつけられる『カスタムタグ』機能が付いています。この機能を利用することで保存作業だけでなく、整理や確認などといった業務も効率化できます。ぜひご検討ください。

関税法とは?

関税法とは、輸出入にかかる手続きを適正に処理し、関税や消費税などの税金を適切に徴収するための法律です。関税や消費税などの税金の申告・納付手続きや通関に関する規定などを定めており、税関での手続きは関税法に則って行われます。

貿易取引を行う場合、貨物の量や価格などさまざまな要素をもとに税金額を計算し納付を行います。しかし、税金を適切に徴収するには、貿易取引自体が適切に行われていなければなりません。貿易の秩序を守り、適正な通関を維持するため、関税法では取引できる貨物の規制や輸出入の申告に関する手続きなども定めています。取引内容を証明するため関税関係帳簿書類の管理も、関税法に則った対応が必要です。

また、貨物や船舶・飛行機に関する規定なども関税法で定められています。旅行やビジネスでの出張など個人が国外へ渡航する場合も対象です。個人が外国で旅行し、現地で買ったお土産に対しても関税法が適用されます。

貨物の積卸しや出港手続きなども規定しており、貨物だけでなく旅客も含めた国境を越えたヒト・モノ・カネの移動や取引における、すべての場面で関税法に則った対応が必要です。

電子帳簿保存法とは?

電子帳簿保存法は、国税関係帳簿書類の電子的な保存や管理の要件を定めた法律です。対象となる書類の具体例は以下の通りです。

  • 仕訳帳
  • 契約書
  • 請求書
  • 損益計算書
  • 賃借対照表

従来、国税関係帳簿書類は紙での保存が原則であり、多くの企業が電子データも紙に印刷して保存していました。しかし、紙での保存は印刷費や保管場所の確保などさまざまなコストが発生するほか、管理に手間がかかり生産性の低下も招いてしまいます。

電子帳簿保存法は、ペーパーレス化を進め、これまで紙で保存するためにかかっていたコストの削減や生産性向上を目的として制定された法律です。国税庁が管轄している電子帳簿保存法では、国税関係帳簿書類の保存について、以下3つの観点で要件を定めています。

  • 電子取引データ保存
  • 電子帳簿等保存
  • スキャナ保存

上記3つのうち、電子帳簿等保存とスキャナ保存は任意ですが、電子取引のデータ保存は義務です。電子取引データ保存は令和6年から対応が必要なため、国税庁では以下のように呼びかけています。

令和5年12月31日までに行う電子取引については、保存すべき電子データをプリントアウトして保存し、税務調査等の際に提示・提出できるようにしていれば差し支えありません(事前申請等は不要)が、令和6年からは保存要件に従って電子データの保存が行えるよう、必要な準備をお願いします。

引用元:国税庁|電子取引関(2023年10月3日時点)

対応できていない場合は違反とみなされる可能性があります。要件を満たして保存できるよう、令和5年中に対応を進めましょう。

なお、関税法における電子帳簿保存制度と電子帳簿保存法は似ており、ほぼ同じ内容です。しかし法律としては別物。法律を管轄している省庁も、関税法は税関、電子帳簿保存法は国税庁と異なります。

そのため関税関係帳簿書類の電子保存で不明な点がある場合は、関税法の確認・税関への問い合わせが対処法となります。その一方で、国税関係帳簿書類の電子保存でわからないことがあるのであれば、電子帳簿保存法のチェック・国税庁へ質問するのが正しい対応方法です。ややこしいところですが、非常に重要な点ですので覚えておきましょう。

関税関係帳簿書類の保存にて義務付けられていること

関税関係帳簿書類の保存は輸出・輸入ごとに義務づけられている点が若干異なります。

  • 輸出する場合
  • 輸入する場合

保存義務に適切に対応するために、両者の違いを把握しましょう。

輸出する場合

輸出する場合、関税から輸出許可を受けた貨物の取引に関する書類や帳簿の保存が義務づけられています。具体的には以下の通りです。

種類 概要 保存期間
帳簿 輸出の許可を受けた貨物の品名・数量・価格、仕向人の氏名又は名称、当該許可の年月日及び許可書の番号を記載したもの 5年間(輸出の許可の日の翌日から起算)
書類 輸出の許可を受けた貨物の契約書、仕入書、包装明細書、価格表、製造者又は売渡人の作成した仕出人との間の取引についての書類その他税関長に対して輸出の許可に関する申告の内容を明らかにする書類
※ 輸出申告に際して税関に提出したものを除く
5年間(輸出の許可の日の翌日から起算)
電子取引の取引情報 電子取引を行った場合における当該電子取引の取引情報 5年間(輸出の許可の日の翌日から起算)

引用元:税関|帳簿書類の保存義務と電子データによる保存の要件|1ページ目(2023年10月3日時点)

帳簿にはインボイスや輸出許可証、書類は貿易取引の契約書やパッキングリストなどが該当します。『当該許可の年月日及び許可書の番号』とは、輸出許可証に記載されている許可の年月日と番号のことです。関税関係帳簿書類に記載している輸出許可証の許可年月日と番号に基づいて、整理・保存する必要があります。電子データにおいても同様のため、記載漏れがないように注意しましょう。

ちなみに『電子取引の取引情報』とは以下のことを指します。

「電子取引」とは、取引情報の授受を電磁的方式により行う取引をいいます。具体的には、いわゆるEDI取引、インターネット等による取引、電子メールやSNSにより取引情報を授受する取引(添付ファイルによる場合を含みます。)、インターネット上にサイトを設け、当該サイトを通じて取引情報を授受する取引等をいいます。
「取引情報」とは、貨物の取引に関して受領し、又は交付する契約書、仕入書、包装明細書、価格表、製造者又は売渡人の作成した仕出人との間の取引についての書類その他これらに準ずる書類に通常記載される事項をいいます。

引用元:税関|帳簿書類の保存義務と電子データによる保存の要件|10ページ目(2023年10月3日時点)

取引情報を紙面にせず、一貫して電子データでのみ授受が行われたものが該当します。関税関係帳簿書類の保存義務は、特定輸出者であっても同様に対応が必要です。

輸出にかかる手間や時間が短縮できるメリットがありますが、関税関係帳簿書類の保存義務は一般の輸出者と変わりません。

いずれの種類であっても保存期間は輸出許可日の翌日から起算して5年間です。起算日を間違えて書類を廃棄してしまうことのないように注意しましょう。

輸入する場合

輸入する場合、税関から輸入許可を受けた貨物の取引に関する書類や帳簿の保存が義務づけられています。具体的には以下の通りです。

種類 概要 保存期間
帳簿 輸入の許可を受けた貨物の品名・数量・価格、仕出人の氏名又は名称、当該許可の年月日及び許可書の番号を記載したもの 7年間(輸入の許可の日の翌日から起算)
書類 輸入の許可を受けた貨物の契約書、仕入書、運賃明細書、保険料明細書、包装明細書、価格表、製造者又は売渡人の作成した仕出人との間の取引についての書類その他税関長に対して輸入の許可に関する申告の内容を明らかにする書類
※ 輸入申告に際して税関に提出したものを除く
5年間(輸入の許可の日の翌日から起算)
電子取引の取引情報 電子取引を行った場合における当該電子取引の取引情報 5年間(輸入の許可の日の翌日から起算)

引用元:税関|帳簿書類の保存義務と電子データによる保存の要件|2ページ目(2023年10月3日時点)

申告納税方式が適用される貨物を輸入する場合には、上記の関税関係帳簿書類の保存が必要です。輸出の場合はいずれの保存期間も5年間ですが、輸入の場合は帳簿の保存期間が7年間であることに注意しましょう。

また、特例輸入者の場合も特定輸出者と同じく関税関係帳簿書類の保存義務に従わなければなりません。ただし保存期間の起算日が異なり、以下のように規定されています。

特例輸入者に係る特例申告貨物についても同様に関税関係帳簿書類及び電子取引の取引情報を保存する必要があります(関税法第7条の9)。その場合における保存期間は、輸入の許可の日の属する月の翌月末日の翌日から起算します。

引用元:税関|帳簿書類の保存義務と電子データによる保存の要件|1ページ目(2023年10月3日時点)

起算日や保存期間が異なるため、輸出時との違いに注意して保存しましょう。

また、輸出者が経済連携協定に基づいて締約国原産品申告書をした場合は、輸入者は輸入する貨物の原産性を確認する書類を保存する必要があります。輸入者側が締約国原産品申告書を提出する場合にも必要です。締約国の原産性が確認できない場合は税率が変わる可能性があります。

関税関係帳簿書類を電子保存する際の注意点

関税関係帳簿書類を電子保存する際の注意点は以下の3つです。

  • 違反すると罰則がある
  • メール設定により授受した電子ファイルが自動削除されることがある
  • 電子帳簿保存法は頻繁に改正されている

意図せず違反したり対応できなかったりしないよう注意しましょう。

違反すると罰則がある

関税法の電子帳簿保存制度に違反すると罰則があります。罰則内容は以下の通りです。

令和3年度関税改正において、保存要件に従ってスキャナ保存が行われている関税関係書類に係る電磁的記録若しくは保存要件に従ってスキャナ保存が行われていない関税関係書類に係る電磁的記録又は電子取引の取引情報に係る電磁的記録に記録された事項に関し、修正申告又は更正があった場合に、隠蔽・仮装された事実に基づき生じた申告漏れ等について課される重加算税の額については、通常課される重加算税の金額に、その重加算税の基礎となるべき税額の10%に相当する金額を加算した金額とすることとされました(関税法第12条の4第3項)。

引用元:税関|帳簿書類の保存義務と電子データによる保存の要件|8ページ目(2023年10月3日時点)

スキャナ保存や電子取引データを保存した際に不備や不正があり、それにより納税額を過少申告していた場合、重加算税の対象です。例えば、スキャナ保存の要件に対応できていない状態で関税関係帳簿書類を保存すると、電子帳簿保存制度に違反しているとみなされます。

故意に納税額を過少申告した場合に限らず、保存要件を守れていなかった場合も対象となる可能性があるため注意が必要です。

税関では輸出入に関する手続きや納税申告が適切に行われているか、事後調査や事後確認などで定期的に調査しています。納税申告時には不備や不正が発覚しなかったとしても、調査時には明らかになる可能性が高いでしょう。

関税法における電子帳簿保存制度の要件を確認し、知らずに違反することがないように日頃から対策する必要があります。

メール設定により授受した電子ファイルが自動削除されることがある

電子データの授受をメールで行う場合、メール設定によって授受した電子ファイルが自動削除される可能性があるため注意が必要です。電子メールのサービスによっては、一定の条件で電子ファイルを削除する機能がついています。

電子ファイルが自動削除されるのは以下のようなケースです。

  • 送信する添付ファイルのデータサイズが大きい
  • 設定されているメールの保管期間が経過した

メールサービスによって、送信できる添付ファイルのデータサイズが決まっています。サイズの大きいファイルだと、ケースによっては送信時にファイルが自動的に削除され、送信先にはメールのみが届くかもしれません。送信時に添付ファイルが削除されるため、取引先へメール添付以外の方法での送信が必要です。

また、サーバーの容量を空けるために一定の保管期間が経過したらメールを削除する機能がついているケースもあります。メールデータはサーバーに蓄積され、容量オーバーになれば送受信ができません。そのため、保管期間が経過したメールを削除してサーバーの容量を空けるために自動削除機能がついています。

自動削除機能では、残しておくべきものかどうかにかかわらず保管期間が経過したメールを一括で削除します。これにより、意図せずして電子データが削除されるおそれがあるというわけです。

メールの設定を変更して自動削除しないように設定したり、メールをPDF保存したりして対策しましょう。

電子帳簿保存法は頻繁に改正されている

電子帳簿保存法は頻繁に改正されているため、最新版を常に確認する必要があります。関税法の電子帳簿保存制度は電子帳簿保存法に似たルールであり、電子帳簿保存法の改正に合わせて関税法の電子帳簿保存制度も、一部変更される可能性があるからです。

電子帳簿保存法は、以下のように時代の変化にあわせて都度改正されています。

改正内容
1998年 電子帳簿保存法制定
2005年 限定的(『3万円未満の国税関係書類』かつ『電子署名』が必要)なスキャナ保存制度開始
2015年 スキャナ保存制度の要件から『3万円未満の国税関係書類』『電子署名』の要件を撤廃
2016年 デジタルカメラやスマートフォンでの撮影データも電子データとして認められる
2019年 スキャナ保存の期間制限の緩和、過去の重要書類のスキャナ保存が可能に
2021年 電子データ保存、スキャナ保存の要件緩和
2022年 事前承認制度の廃止、タイムスタンプと検索要件緩和、電子取引の電子データ保存の義務化
2023年 『優良な電子帳簿に係る過少申告加算税の軽減措置』の対象範囲の改正、スキャナ保存の要件緩和、検索機能不要措置の対象者変更

2015〜2019年の法改正の背景には、IT技術の進化により紙の書類をスキャンできる機器が新たに登場したことが関係しています。また、2021年以降の背景にあるのは、新型コロナウイルスウイルス感染症の影響によるテレワークの普及が推測されます。

このように、電子帳簿保存法は時代の変化にあわせて頻繁に改正されている法律です。電子帳簿保存法が改正された際には、念のために税関が公表する関税法関連の資料も併せて確認することをおすすめいたします。

ちなみ関税関係の法律が改正された場合は、税関の『帳簿書類の保存義務と電子帳簿等保存制度』で確認できます。常に最新の法令内容を確認し、適切に対応しましょう。

関税法や電子帳簿保存にてよくある質問

関税法や電子帳簿保存にてよくある5つの質問を解説します。

  • e-文書法とは何ですか?
  • 事後確認とは何ですか?
  • 犯則調査とは何ですか?
  • 関税関係帳簿書類における許可書番号とは何ですか?
  • 関税関係帳簿書類における仕入書番号とは何ですか?

e-文書法とは何ですか?

e-文書法とは、法律で保管が義務づけられている文書の電子保存に関する法律です。e-文書法は以下2つの法律を指した通称であり、正式な法律名ではありません。

  • 民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律
  • 民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律

会社法や法人税法など複数の法律で保管義務のある書類が対象であり、電子保存できる書類とできない対象外の書類を規定しています。

また、e-文書法は特定の管轄省庁の管轄ではありません。電子保存する際には、関係省庁が定めている要件や対象書類を確認したうえでの対応が必要です。例えば、厚生労働省が定めているe-文書法の電子保存できる書類は以下の通り。

(1)電磁的記録による保存について【e-文書法第3条関係】
(1)対象
 厚生労働省の所管している法令により保存を義務づけている書類等
※高度の見読性を確保することが必要不可欠な書類(毒物及び劇物取締法施行令第40条の5第2項第4号の運搬する毒劇物の名称及び事故時の応急の措置の内容を記載した書面)については、対象外とする。

引用元:厚生労働省|「厚生労働省の所管する法令の規定に基づく民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する省令」の概要(2023年10月3日時点)

具体的な書類例は以下の通りです。

書類の種類 具体例
財務・税務関係 帳簿、請求書、契約書など
会社関連 定款、株主総会の議事録など
決算関係 損益計算書、貸借対照表など

関税法の電子帳簿保存制度・電子帳簿保存法・e-文書法は詳細や対象書類が異なるため、混同しないように注意しましょう。

事後確認とは何ですか?

事後確認とは、特恵税率を適用して輸入申告された貨物が相手国の原産品か否かを確認する調査のことです。事後確認の目的を、税関では以下のように定義しています。

輸入申告された貨物が原産品であることを事後的に確認することによって、特恵税率の便益の適正な確保を目的としています。

引用元:税関|事後確認(2023年10月3日時点)

特恵税率とは、国連貿易開発会議(UNCTAD)により枠組みが設けられた制度です。開発途上国の経済的発展推進をはかるため、該当国からの輸入に対しては通常の関税率よりも低い特恵税率を適用します。特恵税率の対象は『特恵受益国および地域』といい、2023年4月1日時点では126ヶ国と4つの地域が対象です。

特恵税率が適用される場合は税負担が軽減されます。この制度の不正利用を防ぎ、正しく運用するために行われているのが原産地証明と事後確認です。

事後確認は輸入者から提出された資料をもとに行われ、輸入者は輸入された貨物が特恵受益国および地域の原産品であることを証明しなければなりません。特恵受益国および地域の原産品であると確認ができない場合は、特恵税率が適用されなくなります。場合によっては過少申告とみなされ、加算税の対象になる可能性もあるでしょう。ご注意ください。

犯則調査とは何ですか?

犯則調査は、不正により正しい納税を行わなかった事業者に対し、正しい税の課税や刑事責任の追求をするための調査です。関税では犯則調査を以下のように説明しています。

「犯則調査」は、関税法の規定に基づき、任意で犯則嫌疑者又は参考人に対して、出頭を求め、質問したり、所持する物件などを検査するほか、必要があれば、裁判官があらかじめ発する許可状により、臨検、捜索、差押といった強制調査を行い、事実の解明を行います。
なお、調査の結果、不正な手段により故意に関税を免れたもの等(犯則)の心証を得たときは、税関長による通告処分又は検察官への告発が行われることになります。

引用元:税関|事後調査等(2023年10月3日時点)

犯則調査は輸入品に対して関税や国内消費税の脱税が行われていないかを調査します。国内消費税とは以下のような間接税のことです。

  • 消費税
  • たばこ税
  • 酒税

調査は関税によって行われ、犯罪調査と同じ方法で不正の実態解明を行います。不正を疑われている事業者や参考人は、任意での出頭や検査への協力が求められます。協力しなかった場合や必要に応じて強制調査に入るため、調査から逃れることは難しいでしょう。

不正が発覚した場合、まず行われるのは税関長から罰金の納付を通告する行政処分です。通告に従い罰金を納付すれば、事態を終結できます。しかし、通告に応じなかった場合は検察官への告発が行われ、刑事事件として扱われます。通告処分および検察官への告発への基準は以下の通りです。

通告処分は、その情状が罰金刑に相当するようなものであるときに、税関長がその罰金に相当する金額の納付を求める行政処分で、犯則者がこれに応じないときは検察官に告発することになります。なお、平成17年10月からは、申告納税方式が適用される貨物に係る犯則事件については、通告処分を行うことなく、直ちに検察官に告発することになりました。

引用元:税関|事後調査等(2023年10月3日時点)

上記の通り、申告納税方式が適用される貨物における不正の場合は通告処分の対象外です。直ちに告発され、検察官による処分が行われます。行政処分の場合は前科になりませんが、検察官への告発が行われた場合は前科がつくかもしれません。

犯則調査により処分を受けた事例は、以下の品目の密輸が代表的です。

  • 金地金
  • たばこ
  • 腕時計
  • バッグ類
  • アクセサリー類

上記のうち金地金が事例・脱税額ともに多く、令和3年7月から令和4年6月までの調査結果として以下が公表されています。

関税等の脱税事件に対して全国の税関が行った犯則調査の結果、令和3事務年度に処分(検察官への告発又は税関長による通告処分)した件数は39件(前事務年度比108%)、脱税額は、総額で約8千万円(前事務年度比18%)となりました。

処分した事件のうち、金地金の密輸事件が13件(前事務年度比65%)、その脱税額は総額で約2千万円(前事務年度比23%)となりました。

金地金の主な処分事例としては、航空機旅客による金地金約18kgの消費税等脱税事件がありました。(脱税額約649万円)

引用元:財務省|令和3事務年度の関税等脱税事件に係る犯則調査の結果(2023年10月3日時点)

犯則調査は密輸や脱税などの不正を調査し、公平・公正な貿易や課税を実現するためのものです。不正を疑われることのないよう法令を遵守し、適切な貿易を行いましょう。

関税関係帳簿書類における許可書番号とは何ですか?

関税関係帳簿書類における許可書番号とは、輸入または輸出許可書に記載されている番号のことです。輸出入を行う際、必要事項を記入して税関に輸出入の申告書を提出します。税関が申告書の内容を確認し、許可書番号を付与した状態で申告者へ交付する書類が輸出入許可書です。

税関は、許可書番号をもとに申告された取引内容と契約書やインボイスなどの関係書類の内容に齟齬がないかを確認します。輸出入や納税の申告が適切に行われているかの調査が、事後調査です。

事後調査時に申告内容と実際の関税関係帳簿書類の内容に齟齬があった場合は不備や不正の疑いがかけられます。申告通り適切に対応していることを示すために、許可書番号を国税関係帳簿書類へ記載し、関係性を明らかにしなければなりません。同じ許可書番号を記載した輸出入許可書と関税関係帳簿書類の内容に齟齬がなければ、適正な貿易取引や納税を行っていることを証明できます。

また、先述した通り関税関係帳簿書類には許可書番号のほかに許可を受けた年月日の記載も必要です。紙面の書類だけではなく電子データにも輸出入許可証の許可書番号と許可年月日を記載し、整理・保存を徹底しましょう。

関税関係帳簿書類における仕入書番号とは何ですか?

関税関係帳簿書類における仕入書番号とは、インボイスに記載する番号のことです。インボイスは『仕入書』とも呼ばれているため、インボイスナンバーを仕入書番号と表記するケースがあります。番号の振り方は特に決まっておらず、作成者が任意で番号を付与できます。

そんな仕入書番号の役割は大きく分けて以下の2つです。

  • 取引や貨物を管理しやすくする
  • 国税関係帳簿の記載事項と関係書類との関係を明らかにする

取引ごとにインボイスを作成するため、仕入書番号を関係書類にも付与していれば効率的に管理できます。インボイスとほかの関税関係書類に同じ仕入書番号を記載していれば、両者の関係を明らかにできます。これにより、帳簿の記載事項が明らかになるように整理されていると判断することが可能です。

仕入書番号以外にも、許可年月日や契約書番号の記載などの番号を付与すると、より関係性を証明できるでしょう。

まとめ|関税法の電子帳簿保存制度を守ろう

貿易書類を電子保存するのであれば、関税法の電子帳簿保存制度に対応し、遵守しましょう。関税法の電子帳簿保存制度は、国税庁が管轄する電子帳簿保存法と似た内容ですが、税関が管轄する別の法律として対象書類や保存の要件を定めています。そのため、税関の発表する公式資料をもとにした対応が必要です。公式資料は、税関の公式ホームページで確認できます。

関税法の電子帳簿保存制度が守れていなかった場合、故意かどうかにかかわらず重加算税の罰則対象になる可能性があります。制度内容を知らずに違反してしまうことのないよう、情報収集や準備が欠かせません。日頃から最新の制度内容をチェックし、適切な対応ができる環境や体制を整えましょう。

なお関税関係帳簿書類を電子保存するのであれば、DenHoをお使いください。DenHoであれば取引金額などの項目を自動でデータ化することが可能です。保存業務を効率化させたいときに、ぜひご利用ください。

電子帳簿保存システムDenHo

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