デジタルインボイスとは?Peppl(ぺポル)やメリットを解説

「デジタルインボイスって何?」
「デジタルインボイスのメリットは何だろう?」

デジタルインボイスという言葉を聞いたときに、このような疑問を抱くことがあるかもしれません。

デジタルインボイスとは、標準化および構造化された電子データを指します。デジタルインボイスは各業務の自動処理を前提に構造されているため、導入することで自動化や効率化を期待できます。

昨今、日本は労働人口の減少や、インボイス制度のスタートに伴う業務の煩雑化などが課題として挙げられています。そのため多くの企業では、業務の効率化が急務。そんなときに役立つのが、このデジタルインボイスです。

この記事では、そんなデジタルインボイスを丁寧に解説。基本的なことだけでなく、メリットやよくある質問も解説します。デジタルインボイスのことを知りたい方は、ぜひ読んでみてください。

デジタルインボイスとは?Peppolも解説

まずはデジタルインボイスに関する以下の3つについてご説明していきます。

  • デジタルインボイスとは?
  • Peppolとは?
  • そもそもインボイス制度とは?

デジタルインボイスとは?

デジタルインボイスとは標準化・構造化された電子データのことです。デジタルインボイスは構造が標準化(規格が統一)されているため、仮に売り手と買い手が異なるシステムを採用していたとしても、両者ともに後工程の業務を自動化できます。

どういうことかと言いますと、そもそも従来の電子インボイスだと、請求書の規格は企業によって千差万別です。そのため、例えばX社では問題なく自動処理できている請求書が、Y社では「ウチのシステムだと、この請求書は自動仕訳できないな」などの問題が発生するおそれがあるということ。

そこで登場したのがデジタルインボイス。先述しましたように、デジタルインボイスは標準化された構造をしているデータを指します。

つまり規格が統一された電子請求書を導入することで、企業間のシステム差異を気にする必要がなくなるということ。デジタルインボイスそのものが標準化されているため、各企業が使用するシステムが異なっていたとしても、問題なくなったというわけですね。

そのためデジタルインボイスを導入することで、買い手・売り手ともに、仕訳などといった業務を効率化・自動化することが可能になりました。これがデジタルインボイスの特徴と言えます。

Peppolとは?

Peppolとは企業が発行した電子インボイスを、ネットワーク上でやり取りするための世界標準規格のことです。Peppolを管理しているのは以下の団体です。

「Peppol」とは、電子文書をネットワーク上でやり取りするための「文書仕様」「ネットワーク」「運用ルール」に関するグローバルな標準仕様です。国際的な非営利組織である「OpenPeppol」という団体により管理されています。

引用元:デジタル庁|JP PINT|概要(2023年10月13日時点)

日本では2020年に、EIPA(デジタルインボイス推進協議会)がPeppolとインボイス制度を紐づけることを発表しました。

Peppolは企業取引の中継地点となるサーバーのような役割を担います。売り手と買い手のちょうど中間地点に位置するイメージですね。企業間の取引がスムーズになるのはもちろん、世界30か国以上で使用されているPeppolは海外取引のベースにもなります。

共通の仕組みを利用することで、企業のコスト削減にも貢献する点もPeppol利用のメリットです。またPeppolを介した電子インボイスのやり取りでは、データの整合性が同時に精査されます。電子インボイスが主流となることが予想される将来、世界標準規格のPeppolは注目され続けることでしょう。

そもそもインボイス制度とは?

インボイス制度とは正確な適用税率を提示するため、そして消費税の控除(仕入税額控除)を受けるため、適格請求書の発行と保存が必須になる制度です。国税庁はインボイス制度の目的について下記のように記載しています。

売手が買手に対して、正確な適用税率や消費税総額等を伝えるものです。

引用元:国税庁|インボイス制度の概要(2023年10月13日現在)

インボイス制度の導入後は、税額控除をするために適格請求書(インボイス)が必要です。適格請求書を発行するには、税務署へ適格請求書発行事業者になるための申請が必須。国税庁は適格請求書事業者の申請手続きの説明で、以下のように述べています。

適格請求書(インボイス)を交付するためには、納税地を所轄する税務署長に登録申請を行う必要があります。

引用元:国税庁|申請手続き(2023年10月13日現在)

適格請求書発行事業者への登録は任意のため、免税事業者のままでも取引自体はできます。登録するか否かは、自社で協議することをおすすめいたします。

業務効率化など!デジタルインボイスのメリット

デジタルインボイス導入の主なメリットとして以下5つが挙げられます。

  • 業務の効率化
  • ヒューマンエラーの防止
  • データ改ざんの防止
  • 保存管理におけるコストの削減
  • リモートワークに対応できる

業務の効率化

デジタルインボイスのメリットとして業務の効率化が挙げられます。デジタルインボイスによって経理業務の自動化が可能になるためです。

従来のような仕訳などといった経理業務は、デジタルインボイスによって不要になります。請求情報をデータ化することで入力作業の効率化が可能となります。ケースにもよりますが、アップロードするだけで金額や日付などのデータを自動入力できます。請求書の内容を確認しながら、人の手によって入力する必要がありません。

業務を効率化することで、人手不足の解消にもつながることでしょう。

ヒューマンエラーの防止

デジタルインボイスのメリットとしてヒューマンエラーの防止も挙げられます。デジタルインボイスは人手を介さず、業務プロセスを自動処理してくれるためです。

例えばデジタルインボイスを利用すれば、以下のような業務を自動化可能です。

  • データの送受信
  • データ照合
  • 支払い業務

上記のような業務は、従来だと人の手によって行っていました。取引先が多くなればなるほど、送信先のミスなどといったヒューマンエラーが発生しやすくなると言えます。場合によっては担当部門が異なっていることも考えられるため、伝達ミスや連絡忘れなどといったトラブルも起こりうるでしょう。これでは取引に多大なる迷惑をかけることになり、好ましくありません。

しかしデジタルインボイスを導入することで、このようなミスは高確率で減ります。自動処理、つまりは人が関与する余地がなくなるからです。人が関与しないということで、必然的にヒューマンエラーの減少も期待できるというわけですね。

ただし事前設定にてミスが発生すれば、デジタルインボイスでも何かしらのトラブルが発生します。デジタルインボイスであれば絶対にエラーが発生しないというわけではありませんので、ご注意ください。

データ改ざんの防止

デジタルインボイスは、紙による適格請求書の発行よりも、データ改ざんの防止に有効と考えられています。これはデジタルインボイスに限った話ではありませんが、電子請求書にはタイムスタンプ※の付与や電子署名による証明など、データ改ざんの痕跡を確認できる仕組みが作られているためです。

※タイムスタンプとは、スタンプが刻印された時点で書類が確かに存在していたことを証明、かつ改ざんされていないことを確認できる技術のこと。

タイムスタンプが付与されることにより、書類データを作成した時間がわかります。つまり、対象書類が確かに存在していたことの証明になるということ。それだけでなくタイムスタンプには、書類の内容によって生成されるコード(これをハッシュ値と言います)が変換されるという特徴があります。前後のコードを比較することで、改ざんされていないことの証明にもなるということですね。

デジタルインボイスにはタイムスタンプのような機能が備わっているため、データ改ざん防止効果を期待できるというわけです。

また導入するシステムによっては、ファイルへのアクセス記録を残すことも可能です。他の請求書と入れ替えられるリスクも少なくなることでしょう。

保存管理におけるコストの削減

デジタルインボイスの導入により、保存管理に必要なコストの削減も可能です。デジタルインボイスはインターネット上に書類を保存できるので、紙の請求書のように実際のスペースを必要としません。

紙の請求書を用いていた場合、保管するために事務所のスペースが必要になります。保存のためだけに、事務所の一角を利用しなくてはいけないので、その分活用できるスペースが減少することになるのです。

しかしデジタルインボイスであれば、インターネット上・クラウド上での保存が可能なので無駄なスペースが必要ありません。広くなったスペースに、新しくITツールの機材を置いたり、場合によっては福利厚生になるカフェスペースを設置したりすることもできるでしょう。

また紙の適格請求書の場合、適切に保管するにはファイリングや仕訳なども必要です。しかしデジタルインボイスであれば、企業ごとに分けて保存する際の手間も最小限に抑えられます。専用システムを用いれば、企業ごと・種類ごとに振り分けたうえに保存まで自動で行えるのです。

保存した適格請求書を取り出す際にも、デジタルインボイスであれば検索するだけで取り出せます。スペースやファイリングに必要なコストの削減だけではなく、労力や時間におけるコストパフォーマンスも向上させられるでしょう。

リモートワークに対応できる

デジタルインボイスはリモートワークに対応できる点も、大きなメリットだと言えます。インターネット上で書類の保存・管理ができるので、わざわざ会社へ出社する必要がないのです。

以前は請求書など、重要書類には慣例的に印鑑が必要とされたこともあり、リモートワークであっても押印のために出社する必要がありました。しかしデジタルインボイスであれば、電子印鑑の利用も可能です。自宅などのオフィス外でも、押印作業をこなせるということですね。そのため会社に出社する必要性が減少しました。

デジタルインボイスを導入することにより、リモートワークに対応するための基盤を整えられるとも言えます。

デジタルインボイスにてよくある質問

デジタルインボイスにおいて、よくある質問4つとそれぞれの回答をご紹介いたします。

  • 電子取引に該当する取引の種類を教えてください
  • デジタイゼーションとデジタライゼーションの違いは何ですか?
  • Peppolサービスプロバイダーとは何ですか?
  • 適格請求書など日本におけるデジタルインボイスの標準仕様資料はどこで見れますか?

電子取引に該当する取引の種類を教えてください

まず電子取引に該当する取引とは、取引情報の受け渡しを電磁的方式によって行う取引を指します。国税庁の電子帳簿保存法一問一答による回答では、以下の取引も電子取引に該当すると回答されていました。

⑴ 電子メールにより請求書や領収書等のデータ(PDFファイル等)を受領
⑵ インターネットのホームページからダウンロードした請求書や領収書等のデータ
(PDFファイル等)又はホームページ上に表示される請求書や領収書等のスクリー
ンショットを利用
⑶ 電子請求書や電子領収書の授受に係るクラウドサービスを利用
⑷ クレジットカードの利用明細データ、交通系ICカードによる支払データ、スマー
トフォンアプリによる決済データ等を活用したクラウドサービスを利用
⑸ 特定の取引に係るEDIシステムを利用
⑹ ペーパーレス化されたFAX機能を持つ複合機を利用
⑺ 請求書や領収書等のデータをDVD等の記録媒体を介して受領

引用元:国税庁|電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】令和5年6月|3ページ目(2023年10月13日時点)

誰でも思いつきやすい、電子メールやホームページからのダウンロード・スクリーンショットをしたものだけではないとわかります。特に複合機の利用やDVDなど、現物があったとしても電子取引に該当することがありますので、注意が必要です。

デジタイゼーションとデジタライゼーションの違いは何ですか?

デジタイゼーションとデジタライゼーションの違いは、それぞれの目指す目的が異なる点と言えるでしょう。

デジタイゼーションを一言で言えば、業務におけるアナログ・物理データのデジタル化を指します。例えば、今まで紙ベースだった請求書などの書類をデータ化することなどです。またはタイムカードで行っていた勤怠管理を、スマホアプリなどで電子化するケースが挙げられるでしょう。

その一方でデジタライゼーションは、デジタイゼーションより規模が大きく、個別の業務や製造プロセスを丸ごとデジタル化することを指します。具体例としては、チャットボットの導入により、お客様からの質問や問い合わせをシステムに一任することなどが挙げられるでしょう。

またデジタライゼーションは自社内だけにとどまらず、製品やサービスをデジタル化することで、新しい顧客体験を生み出すことも含まれます。

紙媒体の書類をデータ化するだけではなく、業務を取りまとめ請求書の発行まで自動で行えるツールの導入などがデジタライゼーションです。またビジネスモデル自体を変革する面においては、レンタルDVDの貸し出しから動画ストリーミングのサブスクリプションへの移行などが考えられます。

Peppolサービスプロバイダーとは何ですか?

Peppolサービスプロバイダーとは、世界規格である『Peppol』のアクセスポイントを提供できるプロバイダーのことです。先述しましたようにPeppolとは、ネットワーク上で電子文書をやり取りする際の世界規格を指します。

日本国内における認定プロバイダーは、2023年10月時点で33社が挙げられます。

事業者名 Peppol Authority
AdValvas by Axway ベルギー Beleid en Ondersteuning – Stratégie et Appui (BOSA)
Avalara (INPOSIA Solutions GmbH) ドイツ Koordinierungsstelle für IT Standards (KoSIT)
Basware フィンランド OpenPeppol
Billit ベルギー Beleid en Ondersteuning – Stratégie et Appui (BOSA)
B2Brouter Global, S.L. スペイン OpenPeppol
cbs Corporate Business Solutions ドイツ Koordinierungsstelle für IT Standards (KoSIT)
Crediflow AB スウェーデン Agency for Digital Government (DIGG)
Comarch SA ポーランド Ministry of Economic Development and Technology (MRiT)
Digital Technologies-Archivium S.r.l イタリア Agenzia per l’Italia Digitale (AGID)
EDICOM CAPITAL S.L. スペイン OpenPeppol
ファーストアカウンティング株式会社 日本 デジタル庁
富士通Japan株式会社 日本 デジタル庁
IBM 米国 OpenPeppol
KMD (NECグループ) デンマーク Danish Business Authority (ERST)
株式会社ミライコミュニケーションネットワーク 日本 デジタル庁
株式会社マネーフォワード 日本 デジタル庁
株式会社エヌ・ティ・ティ・データ・ビジネスブレインズ 日本 デジタル庁
株式会社オージス総研 日本 デジタル庁
OpenText 米国 OpenPeppol
Pagero AB スウェーデン Agency for Digital Government (DIGG)
SAP SE ドイツ Koordinierungsstelle für IT Standards (KoSIT)
Saphety Level – Trusted Services SA ポルトガル OpenPeppol
SEEBURGER AG ドイツ Koordinierungsstelle für IT Standards (KoSIT)
SNI Teknoloji Hizmetleri A.S. トルコ OpenPeppol
Storecove (Datajust B.V.) オランダ Netherlands Peppol Authority (NPA)
Taxilla Inc. 米国 OpenPeppol
株式会社TKC 日本 デジタル庁
株式会社トラベルデータ 日本 デジタル庁
TrueCommerce Denmark ApS デンマーク Danish Business Authority (ERST)
Valta Technology Group Pty Ltd オーストラリア Australian Tax Office (ATO)
VAT IT Reclaim (VATit Processing (Pty) Ltd) 南アフリカ OpenPeppol
ウイングアーク1st株式会社 日本 デジタル庁
弥生株式会社 日本 デジタル庁

引用元:デジタル庁|日本における認定Peppol Service Provider一覧(2023年10月6日時点)

Peppolを利用するのであれば、上記のPeppolサービスプロバイダーから接続事業者を選んでくださいね。

適格請求書など日本におけるデジタルインボイスの標準仕様資料はどこで見れますか?

国内におけるデジタルインボイスの標準仕様資料は、デジタル庁の『JP PINT』で確認できます。JP PINTとは、国際規格である『Peppol』をベースに、日本におけるデジタルインボイスの管理などを担っているサイトのことです。

JP PINTは、デジタルインボイスを利用する一般企業だけではなく、Peppolサービスプロバイダーへの認定手続きにも関わっています。認定を受けるために必要なOpenPeppolのメンバーシップの取得方法なども確認できます。興味のある方は、確認してみてくださいね。

まとめ|デジタルインボイスで業務を効率化!

ここまでデジタルインボイスの解説をしてきました。デジタルインボイスを導入することで、業務の自動化を図れます。業務の自動化を推進することにより業務時間の圧縮、つまりは人件費の削減効果を期待できます。

それだけでなくヒューマンエラーやデータ改ざんの防止にも一役買ってくれることでしょう。保管書類のセキュリティ面を強化したいときにも、デジタルインボイスが一役買ってくれるハズです。

そして、もしもこの記事を読んでデジタルインボイスに興味を持ったのであれば、日本企業のPeppolサービスプロバイダーに問い合わせてみてください。

電子帳簿保存システムDenHo

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