「電子帳簿保存法が改正されたけど、契約書の保存要件に何かしらの影響があるのかな」
「契約書を電子保存する際、電子帳簿保存法に則った具体的な保管方法を知りたい」
電子帳簿保存法はたびたび改正されていますが、担当者の方の中にはこのような疑問を抱いている方がいるかもしれません。
詳しくは本文で解説しますが、電子帳簿保存法の改正は契約書の電子保存方法に大きな影響があります。契約書も電子帳簿保存法の対象書類だからです。
しかしそうは言いましても、各改正内容は主に規制緩和。契約書の電子保存における要件や方法はそれほど難しくない内容に改正されています。この改正をきっかけに契約書の電子保存を本格的に始めるのがおすすめです。
そうなれば「具体的な保管方法や、電子保存のメリットを知りたい!」と気になるかもしれません。そこでこの記事では契約書絡みの電子帳簿保存法の概要だけでなく、電子保存のメリット・具体的な対応方法も解説します。
この記事を読めば、電子帳簿保存法の改正に対応した契約書の保存方法を正確に把握できます。「契約書は電子保存に切り替えたいけど、そのためには電子帳簿保存法の改正内容もしっかり把握しておかないとな」と考えている方は、ぜひ読んでみてください。
目次
電子帳簿保存法で契約書の電子保存が可能に!
まずは契約書視点で電子帳簿保存法の基本情報を解説します。
- そもそも電子帳簿保存法ってなに?
- 契約書も電子帳簿保存法の対象
- 保存する際は真実性と可視性の確保がマスト
そもそも電子帳簿保存法ってなに?
電子帳簿保存法とは簡単にいいますと、契約書などの書類を電子保存する際の方法や要件などを定めた法律のことです。国税庁の公式サイトによりますと、電子帳簿保存法は以下のように明記されています。
会計ソフトを使って作成した帳簿をそのままデータ保存しておく方法や、紙で受け取った 請求書をスマホで読み取って保存しておく⽅法などを定めた法律(通称「電⼦帳簿保存法」、略して 「電帳法(でんちょうほう)」)に基づく制度です。 取引先とデータで請求書・領収書などをやりとりした場合の保存⽅法も対象です。
引用元:国税庁|【国税庁の取組紹介】電子帳簿保存(2023年6月6日時点)
電子保存法が定められるまでは、契約書などは紙で保存しなければなりませんでした。しかし1990年代からインターネットが普及し始め、現代では電子データ(PDF化した契約書など)でやり取りをすることが一般的になりました。
その証拠に経済産業省の資料によりますと、物販系分野BtoC-EC市場規模およびEC化率※は以下のように年々増加しています。
年度 | 市場規模(億円) | EC化率 | EC市場規模(億円) |
2013年 | 59,931 | 3.85% | 約2,307 |
2014年 | 68,043 | 4.37% | 約2,973 |
2015年 | 72,398 | 4.75% | 約3,438 |
2016年 | 80,043 | 5.43% | 約4,346 |
2017年 | 86,008 | 5.79% | 約5,014 |
2018年 | 92,992 | 6.22% | 約5,784 |
2019年 | 100,515 | 6.76% | 約6,794 |
2020年 | 122,333 | 8.08% | 約9,884 |
2021年 | 132,865 | 8.78% | 約11,665 |
引用元:経済産業省|令和3年度電子商取引に関する市場調査報告書|5ページ目(2023年6月6日時点)
2013年と2021年の各数値を比較すると、市場規模・EC化率ともに約2.3倍になっていますよね。
ここでのポイントは2013年と2021年の電子商取引の市場規模を比較すると、それぞれ約2,307・約11,665となり、約5倍にも拡大している点にあります(EC市場規模は、市場規模とEC化率の数値をもとに弊社が独自に算出)。この9年間に、電子商取引が如何に普及したのかがよくわかりますよね。
電子帳簿保存法が制定される1998年以前であれば、EC市場の規模は2013年よりもさらに低かったことでしょう。1998年から2023年現在に至るまでに、電子取引がどれだけ拡大してきたのか想像に難くありません。
そして何より電子取引が一般的になれば、契約書・領収書・納品書・見積書・請求書などの書類を電子データでやり取りすることが確実に多くなります。それにもかかわらず各書類を電子保存する際のルールが厳しいままだと、少々やりづらいですよね。
そのことを政府が察したのか、電子帳簿保存法はたびたび改正されています。改正内容は後述します。
契約書も電子帳簿保存法の対象
契約書も電子帳簿保存法の対象です。そもそも電子帳簿保存法は『国税関係帳簿・国税関係書類(電子取引関係書類を含む)』を対象としており、契約書は『国税関係書類』に分類されます。詳しくは以下のとおり。
国税関係帳簿 | 国税関係書類 (決算関係書類) |
国税関係書類 (取引関係書類および電子取引関係書類) |
仕訳帳 現金出納帳 固定資産台帳 買掛帳元帳 売掛金元帳 など |
貸借対照表 損益計算書 棚卸表 財産目録 事業報告書 など |
契約書または控え 請求書または控え 領収書または控え 納品書または控え 見積書または控え など |
2023年6月10日時点
そのため契約書を電子保存する場合、電子帳簿保存法によって定められている保存要件を遵守しなければなりません。詳細は次で解説します。
保存する際は真実性と可視性の確保がマスト
契約書を電子保存する際は、電子帳簿保存法に明記されている保存要件を守ることが必須です。具体的に言いますと、以下のように真実性と可視性を確保しなければなりません。
以下の措置のいずれかを行うこと。
① タイムスタンプが付された後、取引情報の授受を行う
② 取引情報の授受後、速やかに(又はその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに)タイムスタンプを付す
③ 記録事項の訂正・削除を行った場合に、これらの事実及び内容を確認できるシステム又は記録事項の訂正・削除を行うことができないシステムで取引情報の授受および保存を行う
④正当な理由がない訂正・削除の防止に関する事務処理規定を定め、その規定に沿った運用を行う
可視性の確保
保存場所に、電子計算機(パソコン等)、プログラム、ディスプレイ、プリンタ及びこれらの操作マニュアルを備え付け、画面・書面に整然とした形式及び明瞭な状態で速やかに出力できるようにしておくこと
電子計算機処理システムの概要書を備え付けること
検索機能※を確保すること
参考:国税庁|電子帳簿保存法が改正されました|4ページ目>(2023年6月14日時点)
参考:国税庁|電子帳簿保存法の内容が改正されました〜令和5年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しの概要〜(2023年6月14日時点)
※:電子帳簿等保存の検索要件1~3に相当する要件のこと。ただしダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には、『2.日付又は金額の範囲指定により検索できる』および『3.2つ以上の任意の記録項目を組み合わせた条件により検索できる』は不要。
なお、この場合において『前々年度の売上高が5,000 万円以下』もしくは『取引年月日その他の日付及び取引先ごとに整理された状態で紙に出力・提示・提出できる』場合には、検索機能のすべてが不要
上記は電子取引時の保存要件※です。
要は、電子取引にて授受した契約書は上記に記載されている内容を遵守しなければならないということです。
真実性の確保に関しては1~4の内どれか1つだけ実施すればOK。タイムスタンプを付与できるシステムを導入すれば事足ります。
可視性の確保に関しましては、すべてをクリアする必要があります。特に重要なのが検索要件。上述しましたように、保存した書類が『取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先』で検索されるようにしなければなりません。
これに対応するには以下の方法があります。
- システムを導入する
- ファイル名を『取引年月・取引金額・取引先』にする
授受したファイルに対して、逐一『取引年月・取引金額・取引先』を記入するのは骨が折れますよね。予算に余裕があるのであれば、システムを導入して対応すべきでしょう。保存業務を効率化、業務時間圧縮による人件費削減を期待できます。最終的にはシステム導入費用以上のコスト削減をできるかもしれません。
その際は弊社のDenHoをぜひご利用ください。DenHoであれば取引先・取引日付・取引金額を自動でデータ化できます。保存業務を一気に効率化可能です。ご検討ください。
電子帳簿保存法はたびたび改正されています
ここでは電子帳簿保存法の直近の改正内容を解説します。
- 2022年の改正電子帳簿保存法の内容
- 令和5年度(2023年)税制改正に伴う電子帳簿保存法の改正内容
2022年の改正電子帳簿保存法の内容
2022年に施行された電子帳簿保存法の改正内容をまとめますと以下のとおり。
電子帳簿保存法保存区分 | 2022年改正の内容 |
電子帳簿等保存 | 1.税務署長の事前承認制度が廃止 2.優良な電子帳簿に係る過少申告加算税の軽減措置を整備 3.最低限の要件を満たす電子帳簿についても、電磁的記録による保存が可能 |
スキャナ保存 | 1.税務署長の事前承認制度が廃止 2.適正事務処理要件が廃止 3.タイムスタンプの要件が緩和 4.検索要件が緩和 5.不正があった場合の重加算税の加重措置を整備 |
電子取引データ保存 | 1.タイムスタンプの要件が緩和 2.検索要件が緩和 3.電子データでの保存が義務化 4.申告漏れ等に課される重加算税が10%加重される措置を整備 |
引用元:国税庁|電子帳簿保存法が改正されました(2023年6月14日時点)
重加算税が整備されたこともありますが、基本的には規制が緩和されています。税務署長への事前承認がなくなったことにより、事前準備や申請手続きなどの業務がなくなります。それだけでなく適正事務処理要件※が廃止されたことで、現場の負担がグッと減りました。
このように2022年に実施された改正により、電子帳簿保存法は基本的に緩和されています。企業はこれを機に、契約書は電子保存するのがおすすめです。
令和5年度(2023年)税制改正に伴う電子帳簿保存法の改正内容
実は令和5年度税制改正に伴い、電子帳簿保存法はさらに改正されました。改正内容は以下のとおり。
電子帳簿保存法保存区分 | 令和5年度税制改正大綱の内容 電子帳簿等保存 1.「優良な電子帳簿に係る過少申告加算税の軽減措置」となる書類の見直し。※1 |
スキャナ保存 | 1.解像度・階調・大きさに関する情報の保存が不要。※2 2.入力者等情報の確認要件が不要。 3.帳簿との相互関連性の確保が必要な書類が重要書類※3に限定。 |
電子取引データ保存 | 1.検索機能が不要とされる対象者の範囲が、準期間(2課税年度前)の売上高が「1,000 万円以下」の保存義務者から「5,000 万円以下」の保存義務者に拡大。 2.入力者等情報の確認要件が不要。 3.対象者に「電子取引データをプリントアウトした書面を、取引年月日その他の日付及び取引先ごとに整理された状態で提示・提出することができるようにしている保存義務者」が追加。 4.令和4年度税制改正で措置された「宥恕措置」は、適用期限(令和5年 12 月 31 日)をもって廃止。 5.改ざん防⽌や検索機能など保存時に満たすべき要件に沿った対応は不要となり、電子取引データを単に保存しておくことができる。※4 |
引用元:国税庁|電子帳簿保存法の内容が改正されました〜令和5年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しの概要〜(2023年6月14日時点)
※1:具体例として、仕訳帳・総勘定元帳・売上帳・仕入帳・売掛帳・買掛帳・貸付帳・固定資産台帳などが軽減措置の対象に挙げられます。
※2:スキャナで読み取る際に守らなければならない解像度(200dpi 以上)や階調(原則としてカラー画像)などの要件自体に変更はありません。
※3:契約書・納品書・請求書・領収書など、資金やモノの流れに直結・連動する書類のこと。対する見積書や注文書などは、一般書類に分類されます。
※4:宥恕措置の内容が電子帳簿保存法の本則(82ページ|(3)の②)に盛り込まれ、条件を満たせば2024年1月1日以降も、電磁的記録を紙に出力して保存することが認められました。
改正された点が多々ありますが、特筆すべきは『改ざん防⽌や検索機能など保存時に満たすべき要件に沿った対応は不要となり、電子取引データを単に保存しておくことができる』です。実は令和5年度税制改正によって、電子取引データの保存は紙に出力しても良いことになりました。
そもそも上述しましたように2022年の改正時点では、以下のように『電子取引データは電子保存が義務』でした。
令和5年12月31日までに行う電子取引については、保存すべき電子データをプリントアウトして保存し、政務調査等の際に提示・提出していれば差し支えありません(事前申請等は不要)
令和6年1月からは保存要件に従った電子データの保存が必要ですので、そのために必要な準備をお願いします。引用元:国税庁|電子取引データの保存方法をご確認ください(2023年6月6日時点)
たった1年で、内容がここまで変わるのは驚きですよね。この改正は、紙保存が主流となっている企業にとって朗報なのかもしれません。
ただし紙に出力して保存をするのが認められるのは、以下2点いずれも該当するときのみです。
イ:保存時に満たすべき要件に従って電子取引データを保存することができなかったことについて、所轄税務署⻑が相当の理由があると認める場合(事前申請等は不要)
ロ:税務調査等の際に、電子取引データの「ダウンロードの求め」及びその電子取引データをプリントアウトした書面の提示・提出の求めにそれぞれ応じることができるようにしている場合引用元:国税庁|電子帳簿保存法の内容が改正されました〜令和5年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しの概要〜(2023年6月14日時点)
「誰でも無条件で紙保存してOK!」というわけではないということ。特にイの条件に関しては、内容が抽象的です。自社が『相当の理由がある』に該当するのか、判断をするのは難しいところ。
そのため基本的には、電子取引データも電子保存するのが無難と言えます。もちろんその際は、保存要件を満たさなければなりません。保存要件に関しては後述しますね。
要件が少し違う!電子帳簿保存法には3つの区分アリ
改正が繰り返されている電子帳簿保存法には、3つの保存区分があります。
- 電子帳簿等保存法
- スキャナ保存
- 電子取引データ保存
電子帳簿等保存
電子帳簿等保存とは、電子的に作成した帳簿や契約書などを電子データとして保存することを指します。
具体例を挙げますと、例えば会計システムなどで電子的に仕訳帳などを作成することが、今では多くなりましたよね。このような書類をクラウドもしくはパソコン上に、電子データ(PDFなど)として保存する行為を電子帳簿等保存と言います。
そして、このとき帳簿関連の書類を電子保存する場合は、以下の要件を守らなければなりません。
電子帳簿の保存要件の概要 | 優良 | その他 |
記録事項の訂正・削除を行った場合には、これらの事実及び内容を確認できる電子計算機処理システムを使用すること | 〇 | ― |
通常の業務処理時間を経過した音に入力を行った場合には、その事実を確認できる電子計算機処理システムを使用すること | 〇 | ― |
電子化した帳簿の記載事項とその帳簿に関連する他の帳簿の記録事項との間において、相互にその関連性を確認できること | 〇 | ― |
システム関係書類等(システム概要書、システム仕様書、操作説明書、事務処理マニュアル等)を備え付けること | 〇 | 〇 |
保存場所に、電子計算機(パソコン等)、プログラム、ディスプレイ、プリンタ及びこれらの操作マニュアルを備え付け、画面・書面に整然とした形式及び明瞭な状態で速やかに出力できるようにしておくこと | 〇 | 〇 |
1.記録項目は取引年月日、取引金額、取引先の3つのみ | 〇 | ― |
2.日付又は金額の範囲指定により検索出来ること | 〇※1 | ― |
3.二つ以上の任意の記録項目を組み合わせた条件により検索できること | 〇※1 | ― |
税務職員による質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードの求めに応じることができるようにしていること | ―※1 | 〇※2 |
引用元:国税庁|電子帳簿保存法が改正されました|2ページ目(2023年6月7日時点)
※1 保存義務者が、税務職員による質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には、検索要件のうち2・3の要件が不要となります(後述のスキャナ保存及び電子取引についても同様です。)。
※2 “優良”の要件を全て満たしているときは不要となります。
(参考) 優良な電子帳簿の要件を満たして対象帳簿の備付け及び保存を⾏い、前頁2の届出書の提出がある場合には、所得税の⻘⾊申告特別控除(65 万円)が適用できます。
基本的には、先ほど提示した電子取引データの保存要件とほぼ同じです。必要に応じて検索・出力できる環境を構築することが保存要件になっています。
また青色申告特別控除額のような優遇措置を受けたい場合は、『優良帳簿』として認められる必要があります。その際は上表のように、訂正や削除の履歴が残るようにできるシステムの導入などが必要です。覚えておきましょう。
スキャナ保存
スキャナ保存とは契約書をスマホなどで撮影し、画像データとして保存する行為を指します。そんなスキャナ保存には、以下の保存要件があります。
- 入力期間の制限
- 解像度200dpi以上で読み取る
- カラー画像(赤・緑・青それぞれ256階調【約1677万色】以上)※1
- タイムスタンプの付与※2
- ヴァージョン管理
- スキャン文書と帳簿との相互関連性の保持※3
- 見読可能装置(14インチ以上のカラーディスプレイなど)の備付け
- 電子計算機処理システムの開発関係書類などの備付け
- 検索機能の確保
参考:国税庁|はじめませんか、書類のスキャナ保存!(2023年6月14日時点)
参考:国税庁|電子帳簿保存法の内容が改正されました〜令和5年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しの概要〜(2023年6月14日時点)
※1:一般書類(見積書・注文書などのように、資金や物の流れに直結・連動しない書類)は、グレースケール(白黒)で保存可能。
※2:入力期間内にその国税関係書類に係る記録事項を入力したことを確認できる場合は、このタイムスタンプの付与要件に代えることが可能。ただし、認定タイムサーバーから時刻を取得する第三者の運営するクラウドサービスのみ、タイムスタンプがなくてもOK
※3:一般書類をスキャナ保存する場合については、相互関連性の確保が不要
スキャナ保存におけるポイントは、画像に関する要件が定められている点です。
当たり前の話なのですが、仮に真実性や検索要件を確保して保存していたとしても、その画像内に記載されている文章が読めなければ意味がないですよね。そのようなことにならないようにするため、画像の解像度・階調が厳密に定められています。
電子取引データ保存
電子取引データ保存とは電子的に授受した取引情報を、データ保存する行為を指します。PDF化した書類をメールなどに添付し、送受信および保存した場合が電子取引データ保存に該当します。
もちろん、単にクラウドやパソコンに電子保存をすれば良いわけではありません。電子帳簿等保存やスキャナ保存と同様に、真実性と可視性の確保が必須です。保存した契約書の信憑性の確保や検索要件を満たす必要があります。電子取引データ保存の要件は先述していますので、ご参考ください。
授受した契約書を電子保存するメリット
授受した契約書を電子保存することによって,以下のメリットが生まれます。
- 契約書を保管する際のスペースが不要になる
- 契約書の管理コストを削減できる
- テレワークの導入を促進できる
- 契約書の紛失や盗難を防げる
- 契約書の改ざんを防ぎやすい
契約書を保管する際のスペースが不要になる
契約書を電子保存することで保管するスペースが不要になります。電子データ化された契約書は、パソコンなどにデータ格納すればいいだけだからです。
根本的な話になりますが、契約書の保存期間は以下のように原則7年です。
法人は、帳簿を備え付けてその取引を記録するとともに、その帳簿と取引等に関して作成または受領した書類(注2)を、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間ほぞんしなければなりません。
(注1)「帳簿」には、例えば総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳、売掛金元帳、買掛金元帳、固定資産台帳、売上帳、仕入帳などがあります。
(注2)「書類」には、例えば棚卸表、貸借対照表、損益計算書、注文書、契約書、領収書などがあります。
(注3)青色申告書を提出した事業年度で欠損金額(青色繰越欠損金)が生じた事業年度または青色申告書を提出しなかった事業年度で災害損失金額が生じた事業年度においては、10年間(平成30年4月1日前に開始した事業年度は9年間)となります。引用元:国税庁|No.5930 帳簿書類などの保存期間(2023年6月10日時点)
契約書などの書類を7年(場合によっては9~10年)保管するということは、最終的には膨大な量になります。取引数や企業規模によっては、大規模な保管スペースが必要になるということ。
しかし電子保存をすることで、そのスペースは不要になります。空いたスペースをリラックスルームにするなど、契約書の保管室以外の使い道が出てきます。その結果、社員のモチベーションアップを図れるかもしれません。
それだけでなく賃料が安いオフィスに移転し、賃貸料をカットすることも可能です。保管方法を電子保存にするだけで、これらを享受できるのはメリットと言えます。
契約書の管理コストを削減できる
契約書の電子保存は、管理コスト削減につながります。紙資料の管理と比較すると手間や労力を削減でき、ランニングコストを抑えられるからです。
具体的な例としてファイリング作業が挙げられます。ファイリング作業の流れは以下のとおりです。
- 該当の契約書を探して印刷出力
- 印刷された契約書を取りに行く
- 綴じるファイルを保管庫へ取りに行く、もしくは作成する
- 契約書をファイルに綴じる
- ファイルを保管庫へ戻しに行く
以上が基本的な流れです。新規でファイルを作るには、さらに時間や労力がかかります。背表紙を作ったり、インデックスを作成したりとやることが様々です。
また紙資料のランニングコストは、以下の物品に対してコストがかかります。
- 紙代
- インク代 トナー代
- ファイル代
- 保管するキャビネット
紙資料の保管は、経年劣化の心配もあります。使用頻度が高いファイルは、手荒い扱いをしてしまうと破損してしまいます。経年により印字も薄くなり不鮮明になることが考えられます。
契約書の電子保存は、上記のような手間やコスト、リスクがありません。電子保存をすることで大幅なコスト削減ができるのです。
テレワークの導入を促進できる
電子保存は、テレワークの導入を促進できます。なぜなら、時間と場所を選ばず書類のやり取りができるからです。
まず総務省は、テレワークについて次のように説明しています。
例えば、紙に依存しオフィスの自席が中心の仕事スタイルでは、自席にいなければ仕事ができず、移動時間や隙間時間を有効に活用できなかったが、ペーパーレス化とテレワークを組み合わせれば、隙間時間を活用するなどしてより短い時間で業務を終わらせることも可能になる。
引用元:総務省|令和元年度版 情報通信白書|テレワークの導入やその効果に関する調査結果(2023年6月10日時点)
上記のとおり、紙資料の場合は出社する必要があります。決裁者に契約書への押印もしくはサインをもらう必要があります。
しかし電子保存であれば、このようなことはありません。クラウド上に書類データ保存していれば、場所を選ばすいつでもアクセスできるからです。パソコンのみならずタブレット、スマートフォンでもOK。取引先や出先で書類確認が必要なとき、重宝されます。
契約書の紛失や盗難を防げる
契約書の電子保存は、紛失や盗難の防止を期待できます。電子保存された契約書は、物理的に存在していない(保管庫に保存しない)ためです。
例えば紙で保存をしたとしますと、意図せずして紛失する可能性があります。数十枚の契約書をまとめて保管室に運ぶ際に落としてしまった、別の契約書を廃棄する際に誤って一緒に捨ててしまうかもしれません。あくまで可能性の話ではありますが、「なぜか見つからない」といった事態が起きても不思議ではありません。
しかし電子保存であれば、このようなことはありません。データを削除しない限り、紛失することはほぼないでしょう。この時点で紛失確率に一定の差があるといえます。
盗難に関しましてもクラウド上に電子保存すれば、セキュリティは堅牢と言えます。第三者がおいそれと契約書を盗み出すのは、難しいでしょう。
もちろん、サイバー攻撃は後を絶たない状況です。インターネット上での不法アクセスにも備える必要があります。
そんなときは弊社のDenHoをお使いください。DenHoはISO-27001およびISO-27017セキュリティ認証を取得しています。国際規格に則ったセキュリティを実現しておりますので、安心してご利用いただけます。ご検討ください。
契約書の改ざんを防ぎやすい
契約書の電子保存は、改ざんを防ぎやすいです。電子帳簿保存法に則って電子保存をすると、契約書の正当性を確保しやすいからです。
例えば契約書を電子保存する際にタイムスタンプを付与したとします。すると以下の効果を期待できます。
- 実際に取引が行われたことを証明できる
- 取引が行われた日時が記載される
- それ以降契約書が変更されていないと証明できる
- そもそもタイムスタンプは第三者機関が付与するので改ざんがほぼ不可能
特に大きいのが『それ以降契約書が変更されていないと証明できる』にあります。タイムスタンプを付与する度、ハッシュ値※と共にその時点での日付や時刻情報も与えられるからです。
このようなことを言ってしまっては何ですが、紙保存ですと契約書を変更していないことを証明するのが困難なケースがあります。保管体制によっては、後日に契約書をすり替えることも可能だからです。
しかしファイルデータに基づきハッシュ値や時刻などが付与されるタイムスタンプ機能を使うことで、すり替えはほぼ不可能。この時点で、改ざんを防止しやすくなるのは明らかです。
契約書の正当性をここまで主張できるのは、電子保存ならではです。重要な契約書ほど、電子保存するのが好ましいと言えます。
契約書を改正後の電子帳簿保存法に対応させる方法
ここでは改正後の電子帳簿保存法に契約書を対応させる方法を、紙・電子の両視点から解説します。
- 【契約書が紙の場合】AI-OCRを使用する
- 【契約書が電子データの場合】電子契約サービスを導入する
- 契約書の保管時におけるルールを制定する
【契約書が紙の場合】AI-OCRを使用する
もしも紙の契約書でやり取りをすることが多いのであれば、AI-OCR※を導入するのがおすすめです。
AI-OCRであれば、文字の読み取り率が高い傾向にあるからです。従来のOCR機器を使うよりも、保存業務を効率的に進められます。
なお弊社のDenHoはAI-OCRであるスマートOCRを搭載しています。手書き文字も高速で読み取ることが可能。それだけでなくスマホやタブレットで撮影・アップロードすることもできます。
またDenHoはタイムスタンプ機能も標準搭載。スキャナ保存した画像に対して、タイムスタンプを付与できます。追加料金は一切なしで、真実性の確保を実現可能です。
もちろん真実性の確保だけでなく、可視性における検索要件への対応も万全。取引先名・日付・取引金額の自動データ化および検索が可能です。パソコンで保存したときのような『手動入力でファイル名を逐一取引先名などに変更する』といった面倒な作業が一切ありません。その結果、業務の効率化を実現できます。
AI-OCRを導入する際は、ぜひ弊社のDenHoをお使いください。
【契約書が電子データの場合】電子契約サービスを導入する
契約書を電子的にやり取りすることが多いのであれば、電子契約サービス※を導入するのも1つの手です。
利用するシステムやプランにもよりますが、契約書に対してタイムスタンプを自動付与できるからです。従来のように『PDF化した契約書をメールで送信する』という方法では、タイムスタンプを付与できませんよね。電視契約サービスであれば自動付与ということで手間がかかりませんし、この差は大きいです。
それだけでなく契約書をアップロードしたクラウド先にて、取引先名などで契約書を検索することも可能。検索要件も満たせるというわけです。
契約書における真実性の確保と可視性における検索要件への対応をこれだけ簡単に実現できる電子契約サービスは、ぜひ導入したいところ。契約書を電子的にやり取りすることが多い企業は、ご検討ください。
契約書の保管時におけるルールを制定する
紙・電子問わず契約書を取り扱うのであれば、保管時におけるルールを制定しましょう。ルールを決めなければ、人によって保管方法がバラバラになるおそれがあるからです。
例えば『電子データ化した契約書はパソコン上に保管する』という基本方針をとったとします。このときに『取引先名ごとに、パソコン上に専用フォルダを作成し保管する』という基本ルールがなければ、以下のように保管方法がバラバラになるかもしれません。
- 文書の種類ごとにフォルダを作成し保存
- 金額ごとにフォルダを作成し保存
- 日付ごとにフォルダを作成し保存
そうなりますと、特定の契約書を探す際に手間が掛かるかもしれません。契約書に記された『取引先名・金額・日付』によって、検索をかけるべきフォルダが異なるからです。デスクトップフォルダから検索をかけることも一応可能ですが、書類の数が多いと検出されるまでに時間がかかることでしょう。これでは不便です。
このような事態を回避するためにも、契約書を保管する際のルールは制定しておくべきです。必要に応じて、すぐに探し出せる環境を構築しておきましょう。
まとめ 契約書は電子保存するのがおすすめ
契約書と電子帳簿保存法の解説をしてきました。契約書も電子帳簿保存法の対象文書でしたね。そのため作成した契約書を電子保存もしくは電子的にやり取りするのであれば、電子帳簿保存法の要件を守らなければなりません。
その際にポイントになるのは、真実性と可視性の確保。改ざんを防止できる仕組み、必要に応じて迅速に検索・出力できる環境を構築しなければなりません。このような状態を自力で作るのはなかなか困難なもの。
そんなときは、弊社のDenHoをご利用ください。タイムスタンプに至っては標準搭載のため、ローコストでご導入いただけます。ぜひご検討ください。
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